強豪がひしめくプロ麻雀リーグ「Mリーグ」において、「軍師」と呼ばれるにふさわしい実力を示し続けているのがEX風林火山・勝又健志(連盟)だ。昨シーズン、レギュラーシーズンでは個人ポイントが+404.2と、個人2位でMVP争いも繰り広げた。爆発力というよりも安定して勝つ、当たり前のようにポイントを持ち帰るあたり、チームからの信頼も抜群。同じプロ雀士から「先生」とも呼ばれるが、この先生は自ら「めちゃめちゃ練習をしている」というほど努力の人で、圧倒的な練習量によってブレないメンタルを手に入れた。
―昨年、個人ではプラス400を超えた。チームとしては最終的に4位だったが自身の評価は。
勝又健志(以下、勝又) レギュラーシーズンとセミファイナルシリーズに関しては良くできたな、と思っています。ただ、一番大事なファイナルシリーズで全くチームに貢献できなかったので、そこが悔しいし、情けないと思っています。
―レギュラーシーズンで、これだけポイントを稼げた要因は。
勝又 やはり手牌に恵まれたというのが一番大きいですが、恵まれた手牌をしっかりとポイントに変えることができたのは良かった。麻雀なので、当然、ミスはたくさんありますが、勝負所でも大きなミスがなく、レギュラーシーズンとセミファイナルに関しては打ち進めることができたかな、と思います。
―他の選手からシーズン途中から副露率が上がるなど「Mリーグ全体の雰囲気が変わった」との話があった。例年、勝又選手は開幕の準備に「開けてみないと分からない」と言うが、昨期はどうしていたか。
勝又 開幕1試合目と、その選手自身の最後の試合で全く同じ打ち方をしている選手はほとんどいないと思うので、その時々で相手を研究して打ち方を変えたり、対戦相手によって打ち方を変えることは全員がやってくるところですが、しっかりと良い準備ができていたから、相手が打ち方を変えても、ある程度の対応はできたのかな、と思います。
―昨シーズン、急に副露率が上がった要因は。
勝又 積極的に打ち方を変える選手と、仕方なく打ち方を変える選手と、多少は変わりますが、ほとんど変えずに自分のスタイルを貫く選手と、いろいろなスタイルの選手がいると思いますが、その中で積極的に打ち方を変える選手のポイント状況で僕は変わっていくと思っています。
積極的に打ち方を変える選手が苦しいポイント状況にあると、その選手はポイント状況に合わせて打ち方を変えるので、その選手が変えると、こちらも変える。ウェーブみたいな流れで変わっていくと思うので、そういうところに展開があると思います。だから結構、自分のスタイルを貫く選手がきついポイント状況の時は、あまり変わらない傾向が多いかなと思います。
―昨シーズンは積極的に動いていた選手が苦戦していたからか。
勝又 積極的に変える選手にハイリスク・ハイリターンの局面が訪れれば、そういう風に変わってくると思います。なので、そのあたりに副露率が上がったとか、そういった部分が隠れているのかな、と僕なりには思っています。
-チーム内では共有していたか。
勝又 あまりしませんね。100%は言いすぎですが、90%変わっていると僕が感じる選手については「自分はこう思うよ」という話はしますが、「きっと変えてくるんじゃないかな」と想像で言ってしまって変わっていないと、逆にチームメイトを惑わせてしまうだけなので。だから、かなり確度が高い時しか、僕は口に出さないようにはしています。でも自分が戦う時には結構、事前のイメトレ的な部分では、「こういう展開になるんじゃないかな」とは考えています。
―アドバイスを言った方が良い、言わない方が良い、の使い分けは。
勝又 言った方が良いかどうかに関しては、逆に言われている人に聞いてみないと、それが正解だったかどうかは自分では分かりませんが、僕があえて言っている時は、僕目線でチームメイトの人が「フォームを崩したな」「ブレちゃったな」みたいな時。それがたまたまなのか、例えば、ちょっと良い結果が出ない時が続いてメンタル的にブレているだけなのか、それともポジティブな意味で、新しい打ち方にチャレンジしていく過程なのか。そのあたりは分かりませんが、「みんな、らしくないな」と感じた時とか、「ちょっと消極的になっちゃったな」と感じた時は、言うイメージです。
―たくさん見ているからこそ、気がつくのか。
勝又 自分が出ていない試合はいろいろな目線で見ますが、チームメイトの試合は自分で打っているような感覚で見ることが多いので。「あれ?」と思う時があるので、そういう時に、といった感じです。その人の気持ちになって見る、という感じですね。
―その人の気持ちになっているはずなのに、いつも違うことをしている。
勝又 その時に「何でだろう」と考えます。でも、例えば「こういう狙いだったんだ」という風な時は当然、何も言わないし、逆に「すごいね。良かったね」みたいになりますが、消極的に「ちょっと負けたくない」という気持ちが出てしまっている時には、言っています。
―実力の100%を出すためというのは難しい。そこへのアプローチで心掛けていることはあるのか。
勝又 僕は元々、中学・高校と剣道をやっていたので、やはり「心技体」が全部揃って、初めて100%の力が発揮できると思っています。今、自分の練習という部分に関しては、技の部分に特化していますが、開幕が近付いたら当然、体調の管理もします。試合の時間が普段、僕らが各団体で打っている試合時間よりもMリーグは遅いので、そこにベストのコンディションに合わせるように体を作らないといけないと思いますし。
精神的には、開幕してしまえば良い精神でみんな戦うと思いますが、少し序盤に悪い結果が続いても崩れない。それはやはり練習なのかな、と。「自分はこれだけやったんだ」という自信があれば、なかなかメンタルは崩れないと思うので、苦しくなってもいいように、自分に自信が持てるような練習を、と思っています。
―時間を合わせるのは、例えば起きる時間が遅くなるなどか。
勝又 朝方に寝て、昼過ぎに起きるように合わせています。僕、あまり寝られなくて。よく寝て7時間くらい、短いと5~6時間なので、2時とかに寝ると朝7時・8時とかに目が覚めてしまう。夜に眠くなってしまったら困るので、朝5時・6時に寝て、12時くらいまでは寝られるように、と思っています。
―それは、どのくらいから始めるのか。
勝又 他の試合もあるので、兼ね合いは難しいですが、自分が出る試合の2日前くらいには。朝からの試合もあるので、シーズン全部、そういうわけにはいかないです。
―今年の目標は。
勝又 当然、目標はチーム優勝ですが、ここまで6年戦ってみて、レギュラーシーズンで敗退もあれば、セミで敗退もあれば、ファイナルで負けもあれば、優勝もある。とにかく何位でもいいので、次のステージに生き残っていくことが一番大切だな、と実感しています。なので、レギュラーシーズンは6位でもいいから必ず生き残る。となると、チーム全体で-100ポイントでも6位に残れる。
4人全員が好調はなかなかないので、4人中2人が好調で2人が不調みたいな風になれれば勝ち残れると思う。不調の選手がチームポイントを見て、プレッシャーを感じてよりはまっていかないように、安定感ある成績をチームにもたらしたいな、と思っています。
―心技体の話が出たが、心を整えるところで気を付けていることはあるのか。
勝又 僕は意外とポジティブな性格なので。普通だったらストレスに感じるようなことが起きても、だいたい5分もあればケロッと忘れる性格なので、これといったことをしなくても勝手に整うんですが、さっきと重なりますが、しっかりと練習をしていれば負けても「たまたまだ」と消化しやすいと思うんですよ。練習不足で負けると、「自分の実力が追い付いていないんじゃないか」と不安になりますが、だからとにかく、オフシーズンはめちゃめちゃ練習をしているので、勝手に良いメンタルでいけるかな、と思っています。
-人とのコミュニケーションが面倒にはならないか。例えば、誰かが励ましの言葉を言ってくれても、自分に届いた時には「何で、こんなことを言われなければいけないんだ」と。
勝又 逆に嬉しいですよ。気にかけてくれているから。今、Mリーグはたくさんのイベントをしてくださるから、たくさんの方々と直接会って声をかけてくれる機会がありますが、チームの調子が悪い時は心配してもらえる。やはり、それはめちゃくちゃ嬉しいです。ただ、僕は一言、「そんなに心配しなくて大丈夫ですよ」と言いますけど。あと、気合も入りますよね。これだけ心配してくれているから、逆に喜んでもらいたいから頑張ろう、と。
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズン各96試合(全216試合)を戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。各チーム20試合(全30試合)を戦い、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(16試合)に進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)