プロ麻雀リーグ「Mリーグ」で初めてレギュラーシーズン、セミファイナルシリーズ、ファイナルシリーズと1位を維持し続ける「完全優勝」を果たしたU-NEXT Pirates。ポイントも接戦ではなく、2位以下を大きく引き離し、チームが掲げた「圧倒的に勝つ」を成し遂げた上で2度目の優勝を飾った。ファンからは連覇を期待する声も高まる中、麻雀同様に冷静に事態を把握しているのがリーダー小林剛(麻将連合)だ。大差をつけての優勝に「どう見ても偶然。そんなに勝てるものでもない」と淡々。麻雀という競技を知るからこそ、実力では出せないスコアだと繰り返す。それでも掲げた目標は「圧倒的でなくても連覇」だ。
【映像】小林剛だからの選択 役満・四暗刻テンパイを自ら崩す一打
―チームはレギュラーシーズンからファイナルシリーズまで全て1位の完全優勝だった。
小林剛(以下、小林) 昨シーズンは3人のおかげで優勝できました。僕のトータルポイントは▲70ポイントくらいだったんですよね。だから、僕としては70ポイント負けたけど、みんなが300、400ポイントずつ勝ってくれて優勝できたと思っています。ファイナルでは僕が一番勝てたので、そこで足を引っ張らなくて良かったですね。
―小林選手から見て、なぜ3人はあれだけ調子が良かったのか。
小林 たまたまですかね。あれほどいい偶然はなかなかないです。チーム全体で1年間で130試合くらいやって、1300ポイントくらい勝っているんですよ。これは、どう見てもいい偶然としか言いようがない。このルールは、そんなに勝てるものではないので。いい偶然がチーム全体に来たな、と思いますね。
―伊達朱里紗選手が「上振れをちゃんと捉える」という表現をしていた。いい偶然を物にすることも大事。そのあたりはどうか。
小林 正解が分からない中、いい偶然が起こりやすいようにそれぞれが工夫してやっています。結果が出るかどうかは分かりませんが。いい偶然を起こすための努力を普段からしていて、その結果が一昨年はうまくいかなかったが、去年はうまくいったと思いますね。
―これだけ牌に恵まれると、戸惑うことはあるのか。
小林 失敗できないのはいつもなので、そんなに気にしないです。
―むしろ、いい偶然に恵まれても浮つくことなく、淡々とできた。
小林 そうだと思います。絶対、平均的にこんなに勝てるものではないので。みんな、いい偶然と捉えて、謙虚にやっていると思います。
―結果としては「圧倒的に勝つ」というスローガンを体現できた。次の目標を設定するのは難しく感じられるか。
小林 変わらず、ですね。今までと変わらず。たぶん、こんなに勝てることはほぼないと思う。全員が少しプラスにできればいいな、という気持ちで僕はいますが。「MVPを取りたい」と言う人もいますが、それは取れるに越したことはありませんが、結果はたまたま付いてくるものなので。できることをしっかりやる、ということですね。
―どうしても、ファンの方が期待度が大きくなる。
小林 去年以上の結果はないと思っていただいて(笑)。今年は去年よりは苦戦すると思います。去年はずっと出来過ぎでした。「こんなことは2度と起こらないよ」と言っています。チーム内では、あえて言っていませんが、みんな分かっているんじゃないですかね。あれが当たり前だと思わない方がいいですね。ファンも選手も両方。もっと苦戦するものだと思った方がいいですね。
―Mリーグにおける戦い方のトレンドが変わったなど、変化についてどう思うか。
小林 少し押す人が増えて、アガリ率が上がって流局率が下がって、というのはありますが、戦い方を大きく変えるほどではないと思いますね。「周りが変わったから、自分も変えていかなきゃ」という人は多いですが、そんなに大きく変えるほど麻雀というゲームは変わらないと思います。合わせるのは大事ですが、合わせているつもりにならないことですね。
―「合わせているつもり」とは。
小林 麻雀プロは条件や相手に合わせて打ち方を変えるのが好きなんですが、変え過ぎて損をしている人をよく見ます。うまく対応しているつもりで素直に打てていない現象をよく見るので、そうならないようにしたいですね。
―各選手から出た言葉で言うと、押す選手が増えた。その中で、取り入れる・取り入れないを悩んでいる選手もいた。どこまで受け入れるか、反応した方がいいものなのか。
小林 難しいですね。「この人はこれくらい切ってくれそうだから」「これくらいは押しそうだから」という読みは結構、自分勝手なもので当たらないもの。そんなに変えなくていいと僕は思っていますね。
―変えると「うまくやれている」気持ちになるのか。
小林 でしょうね。「対応しているつもり」という人が多いと思います。麻雀プロは「細かい差を俺はわかるんだぜ」と主張したがる人が多いんですよ。その差が勝負に影響のある差なのかというのは説明ができないので。そうなり過ぎないようにしたいですね。
―「上手ぶる」という言葉もあるが、微差を突き詰めても大したことがなかった、ということもある。
小林 僕は使いませんが「上手ぶる」という言葉を使う人がいて。上手ぶる、うまいフリということは、下手ということ。そんなことをやる必要がないので、僕は普通にやります。もちろん相手によって多少は変えますが、変なことをやり過ぎないようにしたいですね。
―竹内元太選手と浅井堂岐選手がMリーグに入った。2人の印象、対戦経験は。
小林 少しだけある、という感じですかね。印象で言うと、竹内元太の方が細かいことも何でもやる、僕よりもたくさんドラを切るイメージですね。浅井堂岐の方は打撃系というか、遅い巡目で打点で勝負するタイプですかね。
―毎年のことだが、新しい人が出てきた時の対応は。そこまで反応せず、様子を見ながらか。
小林 お互い探りながら変わっていくと思うので、「この人相手にはこうしよう」とかは、まだ考えていないです。
―昨年の結果を踏まえて、出てきそうな人はいるか。あるいは雰囲気が変わった人はいるか。
小林 BEAST Xの4人が、もう少し自由に打つようになるのでは、と思いますね。1年目でいろいろな緊張や遠慮があったと思います。それがなくなって、みんながもっと好きに打つのではないかと。
―去年のようなことはないと言ったが、改めて今年の目標を掲げるとしたら。
小林 去年ほど圧倒的ではなくても連覇、という感じですね。あと僕はMトーナメントを優勝したんですよ、そういえば(笑)。僕だけ負けていたのが、少しだけ面目を保てたかな、と思っています。今年は足を引っ張らないで、4人でプラスにしていければ、と思いますね。僕はMVPを狙うとかは思わないので、ちょいプラスすれば、と思っています。
―昨シーズンはチーム内に+300ポイントがいて、+400がいて、+500がいた。
小林 通算でも3人が+500台で、僕が+400台なんですよ。で、4人の合計で2000ポイント勝っている。これは1位か2位か忘れましたが、そんな感じ。チーム内での争いも激しくなって、いいんじゃないですかね。
―昨シーズンの閉会式で「石橋さんと朝倉さんに感謝する」と言っていたのが印象に残っている。その後、会話はあったのか。
小林 一応、「おめでとう」みたいなLINEが来た気がします。
―割とあっさりした感じだったから、覚えていないのか。
小林 どうだったかな。LINEグループが生きているので。これを記事にしたらいいかは微妙ですが(笑)。石橋は「おめでとう」で、朝倉はスタンプだけ。そんな感じです。
―小林選手はどうやって返したのか。
小林 スタンプだけです。
―あの場で伝えたということなのか。
小林 4人で戦っていた3年間はすごく貴重だと思うので。お互いにプラスになったとは思っています。
―閉会式のインタビューでは「優勝3度目、2連覇。パイレーツが天下を取る」と熱いイメージを感じたが、クールダウンしたのか。
小林 そんなに変わったイメージはありませんでした。一応、ファンの前では「また勝つよ」と言いますが、実際は、そんなに勝てるものではないと思っています。9チームいたら9分の1以上の確率で勝てるチームでありたいとは思っていますが、僕は「絶対勝つぞ」と言いたくないタイプな。百何十試合もやれば、力の差は結構出ると思うので、勝つために小さくコツコツ積み重ねましょう、といった感じです。
◆Mリーグ 2018年に全7チームで発足し、2019-20シーズンから全8チーム、2023-24シーズンからは全9チームに。各チーム、男女混成の4人で構成されレギュラーシーズン各96試合(全216試合)を戦い、上位6チームがセミファイナルシリーズに進出。各チーム20試合(全30試合)を戦い、さらに上位4チームがファイナルシリーズ(16試合)に進み優勝を争う。優勝賞金は5000万円。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)