将棋の西山朋佳女流三冠(白玲、女王、女流王将、29)が挑む棋士編入試験第1局が9月10日に行われ、試験官の高橋佑二郎四段(25)に132手で勝利し五番勝負を白星発進した。史上初となる「女性の棋士」までは、あと2勝が必要となる。注目の第2局は10月2日、試験官は山川泰熙四段(26)が務める。
史上初の「女性棋士」誕生へ、歴史的挑戦に臨む西山女流三段が幸先の良いスタートを切った。運命の第1局は振り駒の結果、試験官の高橋四段の先手番に決定。後手番となった西山女流三冠は三間飛車を採用。対抗形の競り合いの将棋へと展開した。
試験官は新進気鋭の新人棋士が務めるとあり、本局は公式戦ではないものの簡単に負けるわけにはいかない。第1局を担当した高橋四段は、端攻めから後手陣へと猛攻を仕掛け、大熱戦が繰り広げられた。攻めの印象が強い西山女流三冠だが、金を打ち込む頑強な受けの一手を見せると、ABEMAの中継で解説を務めた戸辺誠七段(38)は「6二金打ちはなかなか指せない。逃げ道を塞ぐような手なので、良く指したなと思った。評価値には表せない、振り飛車党らしい実戦的な一手」と印象を語っていた。
主導権を握ることに成功した西山女流三冠は、“剛腕”の異名のままに角のタダ捨てから敵陣へ踏み込みを見せると、溜め込んだ力を一気に放出するように西山女流三冠が猛攻を仕掛け、リードを拡大させた。緊張感あふれるギリギリの攻防戦となったが、西山女流三冠は冷静さを失わずに高橋四段の粘りを振り切り、待望の勝利をもぎ取った。
大きな一勝を手にした西山女流三冠は、「一手一手難しかった。少し模様が張れているような局面もあったと思うが、形勢は持て余してはいないかなと思っていて、大きく崩れないように指すことを意識して指していた。ずっと気が抜けない難しい将棋だった。少しずつ苦しさは意識しながらも、幸運な面も大きかった」と一局を振り返った。
これまでの将棋界では「女性の棋士」は一人もおらず、先駆者として2022年にこの編入試験を受験した福間香奈女流五冠は、0勝3敗でその道を切り開くことは出来なかった。2年の時を経て、今度は西山女流三冠がこの舞台へ。歴史的な一歩を進めるため、仲間、ファンなど多くの思いを背負ってこの試験に臨んでいる。編入試験は五番勝負で行われ、3勝で「合格」に。初戦を制し好発進を遂げた西山女流三冠は、あと2勝で快挙達成となる。
次戦へ向けて、「5人の(試験官の)方は全然違った武器で四段になられた方々。ここから一局一局準備して、当日全力を尽くせるように過ごすしかない。(山川四段は)正統派の居飛車党で、実力者の方という印象。目の前の一局一局を頑張りたい」と語った。
現在、西山女流三冠は「白玲」のタイトル防衛戦期間中のほか、数々の公式戦もこなす超多忙な期間に身を置く。棋界トップクラスのハードスケジュールをこなす中で、この試験をどのように乗り越えていくのかにも大きな注目が集まる。第2局は10月2日、東京・渋谷区の将棋会館で予定されている。
(ABEMA/将棋チャンネルより)