自民党総裁選に出馬の意欲を示していた齋藤健経済産業大臣が、最終的に推薦人が集まらず、告示前日に出馬を断念した。同日には、同じく意欲を見せていた野田聖子元総務大臣も、推薦人20人に届かず断念している。しかし政治ジャーナリストの青山和弘氏は、「齋藤氏は出馬できたはずだ。野田氏が齋藤氏を突然裏切った」と語る。
不思議なことは、告示6日前に起きていた。三原じゅん子参議院議員が「古い政治に決着をつける時が来た。だから私は小泉進次郎」とXで投稿。三原氏は野田氏に心酔していて、2021年の前回総裁選に野田氏が立候補した時も、推薦人として支援し、「私を政治の世界に導いてくださった母」とたたえていた。しかし突然裏切る形で、進次郎氏支援を公言したのだ。
告示4日前には、ABEMA的ニュースショーに出演した齋藤氏が「(総裁選出馬を)やります」と語っていたが、この当時について青山氏は「齋藤陣営と野田陣営が一本化する動きがあった」と解説する。青山氏によれば告示3日前、双方に近い浜田靖一国対委員長が、一本化を仲介した。推薦人が足りなかった2人は、齋藤氏に一本化することで合意していた。
その時点では利害が一致していたが、告示2日前にトップ会談を開こうとした時、野田氏は「進次郎氏につく。選対本部長になってくれと言われている」と言いだす。齋藤陣営も、仲介した浜田氏も寝耳に水だったという。なお青山氏の取材では、野田氏は石破氏にも推薦人を貸すことを持ちかけていたことがわかっている。
では誰が、野田氏を影で動かしたのか。まず考えられるのが、森喜朗元総理が糸を引いた可能性だ。野田氏は出馬をめぐる流れで、森氏と会っていた。森氏は安倍政権を支えた派閥「清和会」のドンで、進次郎氏の父、小泉純一郎元総理も「森派」の一員として総理になった。青山氏は「総裁選での野田氏の身の振り方を話し合ったのは間違いないが、森氏がどこまで進次郎氏支持を促したのかは不明だ」と語る。
次に考えられるのが、菅義偉前総理の動きだ。菅氏は進次郎氏と同じ神奈川県選出で、菅政権では進次郎氏を環境大臣に起用した。今回も進次郎氏への支持を表明している。野田氏は周辺に「菅氏に全部ブロックされる。自民党には新しい派閥ができつつある」と話していた。なお青山氏によれば、三原氏に声をかけ、野田氏から引き離したのは菅氏だというが、「野田氏の動きにどう関与したのかは確認できていない」そうだ。
もうひとつの可能性が「勝ち馬に乗った説」だ。総裁選出馬が難しい状況で、打算的に考えたのではないかとの予想だ。野田氏は進次郎氏と頻繁にやりとりしていたが、「進次郎氏は『選対本部長』の就任要請まではしていないと言い張っている」(青山氏)。
進次郎陣営の重鎮、武田良太元総務大臣は、野田氏について「行動が不可解。齋藤陣営からも石破陣営からも、自分の陣営からも信用を失った」。青山氏は「総裁選は権力への欲望、政治家としての利害、これまでの恩讐が絡む、魑魅魍魎(ちみもうりょう)の世界だ」と語る。
改めて青山氏は、これら3つの説について「(当てはまるのは)全部かもしれない」と語る。人間関係では齋藤陣営と近く、対等合併すれば政策ものんでもらえるが、「勝たないと意味がない」。森氏と面会した際に、これらの話になったのは間違いないとしつつ、三原氏の方針転換に野田氏が苦言を呈していたことを、菅氏が気にしていた証言もあるという。また、こうした野田氏の動きには「党内ではかなり顰蹙(ひんしゅく)を買っている」と説明した。
元東京都知事の舛添要一氏は、元自民党参議院議員の立場から「こういうのは日常茶飯事で、この程度のことしかないと(感じる)。9人にばらけているが、3、4人の時はもっと酷い」。また元自民党衆議院議員の宮崎謙介氏は、野田陣営に近い人物から聞いた話として、「進次郎氏から野田氏に、かなり電話がかかってきたという。齋藤陣営と組むと決めたのに、野田氏自身が進次郎氏に持っていかれて、『僕らは捕虜になってしまった』と言っている」と証言した。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
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