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【映像】離島・青ヶ島、絶景の数々
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 東京都の青ヶ島は、人口166人(2024年8月時点)の日本一人口が少ない村だ。日本一上陸が難しい島でもあり、八丈島からヘリ(定員9名)、船だと13時間(東京都から358キロ)かかる。主な産業は公務員や建設業、民宿で、小学生は6人、中学生は3人が暮らしている。

【映像】離島・青ヶ島、絶景の数々

 青ヶ島のみならず、最近は「離島ブーム」が起きている。1960年代後半に伊豆諸島などに遊びに行く若者が増加した「第1次離島ブーム」と、2000年代に沖縄観光を中心に、レジャーや観光だけでなく移住や定住を考える人も増加した「第2次離島ブーム」につづき、現在はリモートワークなどの働き方の多様化で移住する人もいる「第3次離島ブーム」が起きつつある。そこで『ABEMA Prime』では、青ヶ島にUターンした佐々木加絵さん(40)に、離島生活のリアルを聞いた。

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■少し歩けば絶景スポット、ネットも使える離島生活「慣れれば最高」

 佐々木加絵さんが、村について説明する。「集落はひとつで、そこに役場も学校も商店もある。まとまりのある島で、大体みんな知り合いだ」。高校進学から就職まで、一度は東京本土で暮らしたが、2019年に父の死去をきっかけにUターンした。

 青ヶ島に帰って、ギャップをどう感じたか。「今はネットで買い物も映画鑑賞もできる。Amazonも届けてくれる。歩いてすぐのところに絶景もある。そこまで退屈には感じず、慣れれば最高だ」。

 経済的な住みやすさは、どうか。「役場勤めの給料は安いと聞くが、畑や釣りで食べ物を調達して、お金を使う機会も少ない。家賃も安い。兼業で民宿や建設業、漁業、農業をやっている人も多い」とのことだ。

 観光面でも充実している。「“二重カルデラ”を見るためだけに、世界中から人が訪れる。魚や地熱で作った塩、昔ながらの芋焼酎もおいしい」。島内に住む世代は「意外に高齢者が少ない」という。「医療の問題で住み続けられないこともあり、働き盛りの30代、40代が多い。地元が青ヶ島でない人は、ある程度の年齢になると、親の介護で帰ることもある」。

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■リモートワークが離島への移住を後押しか

 佐々木加絵さんは、島のための「移住体験プログラム」に取り組んでいる。移住を考えている人達などに、実際に下宿してもらい、民宿の仕事を手伝ってもらいながら、島を知ってもらう。今後は住む場所や仕事が足りない悩みを解決するため、住みながら働けるリモートワーカーやマルチワーカー向けシェアハウスを計画中だ。

 ライフスタイルの変化も、追い風になっているようだ。作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は、「都内でリモートワークしている人でも、オンライン会議して、Netflixを見て、Amazonで買い物して、Uber Eatsで食事して、24時間家にから出ない人が結構いる」と指摘する。

 150以上もの離島を訪れ取材してきた「離島経済新聞社」代表の鯨本(いさもと)あつこ氏は、「完全な移住よりも、2拠点・多拠点先として離島を選ぶ人が増えている。東日本大震災やコロナ禍が後押しになった。過去の移住ブームは、主に観光面で、全ての島で起きていたわけではない」と語る。

 移住には、“物理的な環境”と“価値観”、2つの壁があるそうだ。「病院が少なく、例えば定期的に透析を受ける人は、大きな病院がある島でないと住めない。虫やカビが苦手な人には向かない。『人間関係が苦手』な価値観にも左右される」。日本の有人島は417島あるが、「2つとして同じ地域はない」。青ヶ島のある東京に絞っても、「11島あるが、歩くと全く違う。島は個性がわかりやすく違っている」。

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■本気で移住を考える上で大事な人間関係「間に入るハブみたいな人がすごく重要」

 佐々木俊尚氏は、小笠原諸島に一時移住した女性フォトグラファーの話を紹介する。「家を借りようと思ったが、物件も不動産屋もなかった。いろいろ相談して、旅館の仲居として、3カ月住み込みで働いていたら、人間関係ができて『あそこが空いている』と物件を紹介された。濃密な人間関係と、そこに紐付いた経済活動が一体化している」。

 鯨本氏は「つながりが濃いと、災害時の共助も強くなる」と、メリットを挙げる。一方で、「島によって雰囲気は違う。移住者にウェルカムな島もあれば、信頼関係の構築に時間がかかるところもある」。その判断基準としては「若者や移住者が『チャレンジしたい』と言った時に、『ダメだ』とつぶされる場所は住みにくい。応援してくれる雰囲気がある島には、定着している人が多い印象だ」と語った。

 佐々木俊尚氏は、かつて各地の移住コミュニティーをめぐり、移住先選びのポイントを探った経験がある。「地元の人に聞くと『食べ物がうまいから』と言うが、実際は『移住者がいるから移住する』。最初の1人が魅力的だと、移住者が増えていき、地元住民も無視できなくなる」。

 住民と移住者が折り合いをつけるためには、「間に入るハブみたいな人がすごく重要になる」と指摘する。「いまやWi-Fiも使えるし、コワーキングスペースもある。最後は人だ。離島や過疎地では、仕事や住まい探しの役割を行政が担えない。人間関係までワンセットで教えてくれる人がいるか。その情報はメディアに流れず、最終的には口コミでつかむしかない」。
(『ABEMA Prime』より)

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