人口およそ3万人の福岡県大川市で9月末、2人の候補者が市長選に臨んだ。1人は、三選を狙う47歳の現職・倉重良一氏。そしてもう1人が、政治経験ゼロの77歳新人・江藤義行氏。最大の争点は、市の新たな観光拠点「大川の駅」事業計画の是非。市が誇るインテリア産業や、ものづくりを活かした地域振興策として現職の倉重氏が進めており、その総事業費は100億円を超えるとも伝えられていた。
しかし、そこに「待った」をかけたのが江藤氏。大規模な予算に「採算が取れない」「負の遺産を残す」と、計画中止を訴え市長選に立候補したのだ。その結果、計画中止に賛同する支持者の後押しもあり、見事当選。当初の訴えどおり、大川の駅構想は白紙となった。
政治家の若返りを望む声が度々上がる中で、今後どう市政の舵を取るのか。『ABEMA Prime』で本人に話を聞いた。
■「万が一誰も出なければ大変なことになる、自分自身が後悔すると思った」
大川市長選は、江藤氏が8380票、倉重氏が7801票で、約580票差だった。選挙戦について江藤氏は「私は政治経験もなく、組織が全くない。一方の相手陣営は、後援会と、衆議院の鳩山二郎先生の巨大な後援会、県会議員の組織という3つが動いた。それはすごい選挙運動だった。僕らは街頭に立ったりして、皆さんに訴えを聞いてもらえるよう様々な工夫をした」と説明。
「大川の駅」構想については、「私は鳩山先生の応援団だし、現倉重市長の応援団でもあったが、なぜ説明もなくこんな巨大な事業が進んでいくのかが不思議でたまらなかった。人口3万人の大川市が仕事をするなら10億円以内までだろう。規模が大きすぎるし、誰が考えても異常だ」と指摘する。
自身は「絶対に出ない」と決めていたそうだが、若手の擁立が困難だったことも要因だ。「40代後半、50歳前後などいろいろな人にアタックした。1人は6回ぐらいお会いして『これはいける』と思ったが、大川の異常な議会があることによって『無理です』となる。万が一誰も出なければ大変なことになる、市長も親分の言いなりになっているということで、自分自身が後悔すると思った」と明かした。
データマックス政治担当記者で人権団体代表の近藤将勝氏は「大川市は、ある市議会議員と行政の執行部が繋がっていて、それを恐れて若い人たちも出にくい環境がある。近隣の自治体では若手の市長が次々誕生している中で、大川市も改革をしなくてはいけない。それをどうするかというところで、江藤さんが最終的に手を挙げられたのではないか」との見方を示す。
大川の駅は前市長時代から9年議論され、2023年12月の議決結果は賛成「10」、反対「4」だった。しかし江藤氏は、4年の任期の中で「議会改革はできる」と語る。「早ければ1年以内、2年後ぐらいに市議会議員選挙がある。今は10対4で、あと3人ぐらいこちらに引き抜けばなんとかなる。そんなに心配はしていない」。
■同じ「77歳」は政界引退…政治家に年齢は関係ナシ?
元総理大臣で立憲民主党の菅直人氏(77)は8日、政界を引退する理由として年齢をあげ、「これまでそう大きな病気をしないで元気に活動してきたが、そうは言ってももう77歳」と述べている。
江藤氏は「今のところ血圧も何の薬も飲んでいなく、40度近くなるようなところで選挙運動もしたが、全くの健康だ。後継者のことも考えている」とした上で、「あと4年間やれるかということを、みなさんがどう思うか。私はやってもいい気はしている」と述べた。
さらに、「若さはある意味年齢ではない。意志が強く、きちんとした向き合い方があれば保てるもの。逆に、若くても意志がなければ年寄りと一緒だ。私自身はきちんとした目標があるから、それはやり遂げる。夢を抱いたり、良くしよう・改善しよう、悪いものとは戦うという姿勢は絶えず必要だ」との考えを示す。
これにリディラバ代表の安部敏樹氏は「現職の方が47歳で比較的若いが、77歳の江藤さんのほうがある意味フレッシュ。新しい目線で問題提起ができ、むしろそれが今までされてこなかったわけだ。年齢以上に、経験が少なくても問題意識がある人が政治家になることが大事だと思う。さらに、周りが支持しているのであればかなり可能性があるのではないか」とした。
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