8月30日からブラジルで起きていたSNS「X」の利用停止。極右と見られる数十のアカウントが、偽情報を拡散したとして最高裁判所が一部アカウントの凍結を求めたものの、イーロン・マスク氏が「表現の自由」「要請は違憲」として、これを拒否。対立の末に、ブラジル国内でのX利用が停止されたという流れだが、今月8日にマスク氏が不正なアカウントの規制や罰金の支払いなどにも応じたため、最高裁はサービス再開を認めた。
約1カ月、ブラジル内の利用者・約2000万人がXのない生活を強いられることになったが、ある調査ではXユーザーの3人に1人が、メンタルが改善したと答えた。見たいもの・見たくないものが混在するXだが、“Xなき日常”は、どんなものだったのか。『ABEMA Prime』はブラジル在住のXユーザーに実体験を聞いた。
■「X」ブラジル国内では人口の約1割が利用
ブラジルの人口・約2.1億人に対して、Xのユーザーは今年4月時点で2148万人(Statista調べ)と、約1割にあたる。ブラジル国内ではInstagramやFacebookがSNSの主流ではあったが、不正なアカウントによる発信を重く見た最高裁がXの利用を停止。一般のユーザーがVPNを利用してXにアクセスした場合には、1日あたり5万レアル(約130万円)という罰金も課せられた。(行政関係者など一部についてはVPNによる利用が許可されていた)
ブラジル生まれのモデル・當間ローズ氏は「ブラジルにはプロバイダが2万以上あり、ブロックできたのは約6割。残り4割は小さいものだが、Xを使おうと思えば使えてしまった。また地域差も出ていたし、そもそも司法や行政に批判的な人も多かった」と説明した。 ローズ氏の言う通り、今回の停止に対して「不当」という人が43%、「賛成」という人が39%と利用者内でも意見が分かれた。また停止が解除されたらXに「戻る」と答えた人は76%、「戻らない」と答えた人は15%だった(Broadminded 国内1405人への調査)。
ブラジル在住で音楽ジャーナリストの沢田太陽氏は、日本国内のユーザーが6928万人いる状況から「僕の場合はやはり日本語で発信するし、日本のユーザーがブラジルよりも圧倒的に多い。僕の投稿を読んでくれる人も日本人だから使えなくなって困った」。ただしXを利用していた際に、どうしても目に飛び込んできた「見たくないもの」から解放された実感もあった。「僕はいわゆる極右系の人のフォローはしていなかったが、それでも何かしたら(投稿が目に)入ってくる。そういうのを見なくなって、助かったなという人はいると思う。2022年の大統領選の際にも、極右インフルエンサーの投稿が目に入ってきた。やはり自分が意図して見たくないものが目に入らないと、すっきりするものはある」と述べた。Xが使えなくなったユーザーは「Threads」「Bluesky」といった他のSNSへの移行も進んだという。
■SNSでメンタルへの影響は?「あなたが見ているものが汚いだけ」の指摘も
今回、ブラジルで行われた壮大な“実験”によって見えてきたものは何か。2チャンネル創設者のひろゆき氏は「SNSは、だいたい見るだけの人が普通。Xみたいなものが出来上がったおかげで、世界で何かが起きた時にニュースはこう言っているけど実際どうなのということを、現場の人たちが上げたものが見られるのはすごく便利」と、情報を得られるツールとしてのメリットを改めて訴えた。
また作家でジャーナリストの佐々木俊尚氏は「Xでメンタルが悪くなる人は、たぶんいつも怒っている人。最近の若者は、意外にXを使っている人も多くて単なるニュースを読む。新聞を読むようにしてXを毎朝読んでいる。すごく便利なツールでいろいろ使い方があるが、メンタルを弱くする人はごく一部にすぎない」とした。さらには「インターネットはゴミ溜めだと言っている人は昔からいっぱいいる。ただそれはきれいな街に行って、公園や広場など気持ちいいところいっぱいあるのに、わざわざ公衆便所の裏に行って『こんなに汚い』と叫んでいるようなもの。Xはよく荒れていると言うが、すごくほのぼのしたやり取りがされていたり、知識が持ち寄られる良い場所でもある。汚いと言っている人は『あなたが見ているものが汚いだけ』だと、ちゃんと認識した方がいい」と述べた。
(『ABEMA Prime』より)
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