保育士のX投稿などをきっかけにSNSで議論が巻き起こっている「長時間保育問題」。
「子どもに寂しい思いをさせている」など否定的な意見がある一方、「子育て費用を捻出するために働かなくてはいけない」など、共働き家庭からは切実な実情が投稿された。
この議論に対し、「保育園を考える親の会」アドバイザー 普光院亜紀さんは「日本は諸外国と比べても労働時間が非常に長い。そのことで子どもが寂しい思いをするのは一面真実だ」と話す。
普光院さんがアドバイザーを務める「保育園を考える親の会」の調査では、延長保育の実施率や平均分数は年々増加しており平均は80分超え。
標準的な閉園時間から1時間延長し、夜7時頃までの園が多く、夜8時や10時まで延長しているケースも増えている。
「子どもが長時間保育園で過ごすことになると、心の中に疲れが溜まる可能性がある。親と触れ合う時間が少なくなることで、親子の関係性にも影響がある」(普光院さん)
実際に長時間保育は子どもに影響を与えているのだろうか?
26年間にわたって追跡調査を行っている筑波大学医学医療系 安梅勅江教授は「長期間フォローアップしても、どの年齢でも保育時間の長さや時間帯はまったく関係要因として出てこない。背景には『日本の認可保育園の質の高さ』がある。それよりも親がサポートのない状態でストレスフルに子育てをしている場合の方がずっと子どもの成長にネガティブな影響を及ぼす」と説明した。
意外にも、長時間保育自体は子どもの発達に大きな影響はないという結果に。より強く関連するのは「相談者の有無」で、子育て中に孤立しないことが重要だと安梅教授は語る。
「保育園を利用する=親が全く手をかけない、ではない。保育園にいるときのほうがさまざまな体験ができ、社会性の生育にポジティブな影響がある。家に帰った時に親がしっかり関われていれば全然ネガティブなことはない」
ただし、質の高い保育園が子どもの順調な発達の前提になっているという。
そして、その質を維持するためには保育士の負担を軽減する必要があると「保育園を考える親の会」の普光院さんは指摘する。
「例えば、11時間開所に2時間延長が加わると、13時間の保育時間を保育士がローテーションしながら対応しなくてはならない。これにより労働環境は過酷になり、保育士自身が結婚や出産で続けられなくなることもある」
給与面だけでなく、希望する労働環境との不一致も保育士不足の要因になっている。
「保護者のニーズばかりが優先されると、保育士が激務になり、保育士不足につながる。保護者と保育者の対立は避けるべきで、子どもにとって悲しいことだ。これは個人同士の問題ではなく、社会全体の問題として考える必要がある」(普光院さん)
長時間保育に関連して、今、共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上になっているというデータもある。
この問題について、「塾の経営者」としての顔をもつお笑いコンビ「笑い飯」の哲夫は「親の罪悪感も問題だ」と指摘した。
「僕も延長保育を利用したことがあるが、他の園児が帰宅する中、自分の子どもが夜の街にポツンと明かりが灯る保育園の中に残っている姿に『ごめんね』となる気持ちはわかる。とはいえ、安梅教授が話されたように『延長保育自体による悪影響はない』とのこと。(保育士など)素敵な大人に触れ合うことは子どもにとって大事なこと。出会いが子どもの将来の選択肢を広げてくれる面もあるだろう」
(『ABEMAヒルズ』より)
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