深夜、多くの車が停まる中、駐車場に張られたテント。これは先月、とある道の駅で撮影された写真だ。
「仮眠を取ろうと思って駐車場に入った。(テントのせいで)停められない人もいるだろうと思い、少し憤りを感じて投稿した」(写真を撮影したこじんこさん)
コロナ禍を機にブームになった車中泊。こうした中、問題となっているのが道の駅でのマナー違反だ。
「かなりマナーの悪い方がいる」
怒りを露わにするのは、関西のとある道の駅のスタッフ。一部の車中泊ユーザーのありえない行動に頭を抱えている。
「延長コードを使って建物から電気を引き込む人、通路や屋根のある所でテーブルを広げて飲食する人もいる。地域の観光情報やリーフレットが置いてあるスペースで、カセットコンロで調理する人も」
また、中国地方のとある道の駅ではこんな被害も。
「トイレットペーパーを補充しても朝にはなくなっていることが多く、8ロール分なくなっていたことも。節約の意味もあって盗っていくのではないか。他の方に迷惑がかからないような使い方をしてほしい」
こうした現状について、車中泊の普及を行う日本RV協会副会長の髙橋宣行さんは 「分母が増えると、どうしてもマナー違反が目立ってくる。一部のユーザーだが、そういったマナー違反をする人がいることは悲しい」と憤る。
24時間無料で利用できる駐車場とトイレが設置されている道の駅。2024年8月7日時点で国内に1221カ所存在する。
そもそも道の駅で車中泊をしてもいいのか? 国土交通省のホームページにはこう記されている。
「道の駅は休憩施設であるため、駐車場など公共空間で宿泊目的の利用はご遠慮いただいています。もちろん、道の駅は、ドライバーなど皆さんが交通事故防止のため24時間無料で利用できる休憩施設なので、施設で仮眠していただくことはかまいません」
つまり、「仮眠はOKで車中泊はNG」という見解だが、道の駅のスタッフからは、この曖昧な線引きのために対応に苦慮しているとの声も聞かれる。
『ABEMAヒルズ』が改めて線引きについて尋ねると、国土交通省から以下の回答があった。
「仮眠と宿泊に明確な定義は設けておりませんが、例えば宿泊目的の利用者で満車となり休憩目的の利用に支障が出てしまうなど、道の駅の休憩機能に支障が生じることの無いよう利用の仕方を示しているものです」
こうした中、日本RV協会はホームページで車中泊を行う際のマナー10ヶ条を掲載。また、有料の車中泊スペース「RVパーク」の設置を進めている。
「記名式にするとマナーが良くなる。有料化はそのための提案だ」(日本RV協会 髙橋さん)
地域活性化の新たな手段としても注目を集める車中泊。日本RV協会髙橋さんは、マナーを守ることはもちろん、その場所が車中泊をしても良い場所か事前に調べてから行くことが大切だと訴える。
「基本的に公園や一般の場所は車中泊NG。地域住民としても誰が泊まっているかわからないという防犯上の問題もある。お互いが気遣える社会構造になっていくと、車中泊も含めて自動車旅行の文化が普及していくだろう。人に迷惑をかけない心遣いが最も重要だ」
道の駅での車中泊について、経済アナリストの森永康平氏は「やってはいけないと知らずに“悪意がなく”車中泊している人もいるだろうが、ダメだと知りながら意図的にマナー違反を犯している人もいるだろう。解決策としては『これはダメ』と周知徹底することがまず挙げられる。あるいは有料・無料でスペースを分け、それぞれでできること・できないことを明示するのも一案だ」と述べた。
一方で森永氏は、道の駅に限らず、快適な空間で過ごす権利が有料化されることで、「今後はスペースの分断が起きるかもしれない」として懸念も示した。
「対照的に無料スペースは迷惑行為に晒されるリスクが上がる。住むエリアについてもセキュリティが高く闇バイトの実行役が入れないような高級エリアに住む人たちと、そこに住めない人たちでスペースが明確に分かれる。もしこうなれば年収・貯金がいくらという格差ではなく、生きる空間自体が分断される新しい格差になる」
(『ABEMAヒルズ』より)
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