大学卒業までに日本では約10人に1人が退学している現実がある。文部科学省の調査によると、大学中退率は2023年度で2.04%(5万3470人)。一方で中退理由には変化もあり、2012年は経済的理由(20%)、転学(15%)、学業不振(15%)の順だったが、2023年には転学・進路変更(22%)、学生生活不適応・就学意欲低下(17%)、就職・起業(14%)となっていた(いずれも小数点以下四捨五入)。
しかしながら、大学を中退しても成功する人もいる。歌舞伎町ホストの亜璃珠帝雅(ありす・たいが)さん(25)は、「現役上智大生ホスト」として人気となり、大学3年生で中退した。モバイルオーダー事業を手がける「ダイニー」創業者の山田真央氏も、大学を中退して起業している。
どんな大学中退ならありなのか。また卒業するメリットとは何か。『ABEMA Prime』では大学中退経験者と考えた。
■大学は卒業しないとダメ?中退した人々の生き様
亜璃珠さんは、18歳で東大を目指すも失敗し、浪人中にホストでバイトを始めた。19歳で上智大学理工学部に入学し、ホストとしては5年連続1億円プレイヤーになる。そして23歳で中退し、25歳の現在はエステサロンや居酒屋なども経営し、ホストと合わせて年収10億円という。
中退した理由は「ホスト経営もしたくなり、時間と学費がもったいないと思った」ためで、「時間を100%仕事に使えて、無駄なことが減った」と語る。家族には相談しなかったため、「当時は気まずかった」と振り返る。
東大受験に失敗し、上智大学に入学したが、「もし第1志望の大学だったら状況は変わっていたかもしれない」。一般的な大学生活は「最初の1年くらい」で、その後はホストに注力した。「友達や仕事関係者も増えた。学費はもったいなかったが、結果的に返せた。『大学中退は悪』と決めつける風潮は悪い。一般常識でとがめられることもあるため反対だ」。
山田氏は東大在学中、飲食店アルバイトを経験し、飲食業界の“真のインフラ”の必要性を痛感した。そして中退して、「“飲食”をもっと楽しくおもしろく。」をミッションとするダイニーを創業した。Tech×Fintechの力で飲食店のインフラを目指していて、グローバル投資家から約75億円を調達した。
在学中に起業したが、「中途採用者が人生を賭けてくれているのに、自分だけ失敗しても『東大卒』で就活できるのは不義理に感じた」として、退路を断った。「大学に入ったおかげで、優秀な友人たちに出会えた。官僚や政治家、ビジネス界の先輩にも会える。授業料の100倍以上の効果があった」。
大学中退した息子を持つ中山さんは、経験談を語る。息子は第一志望の国公立大学へ行き、教員を志望していた。しかし2年生で、大学から「学費不払い」と連絡が来る。口座に振り込んだ学費を遊びに使い込んでいたことが発覚し、中山さんが代わりに立て替えた。その後3年生になって、本人が「退学したい」と言うようになり、家族会議の末に退学した。現在はアルバイトをしながら生活している。
当時について、中山さんは「奨学金や、運転免許を取るための費用を使い込んでしまった。大学から『学費が払われていない』と手紙が来て、本人は『大学に行きたい』と言い、学費を立て替えた」と説明する。
しかしその後、再び大学から未払いの通知が来た。「家族会議で『もう無理だ』となり退学した」。親としては「強制的に大学へ行かせたわけではなく、本人の希望だから卒業して欲しかった。英語の先生になりたいと頑張っていた。『復学したい』と言っているが、それが本当かもわからない。親としては、就職の間口を広げてあげることしかできず、あとは本人がどう決めるかだ」と心中を明かす。
■大学を卒業まで通うメリットは?「馬力が上がる」
歌手でモデルの當間ローズは、母親と「芸能界に入るなら大学へ行く」と約束して、卒業まで通った。「好きなことをやりながらでも卒業できた。母親は『人生の成功はロッククライミングだ』と言う。片手が疲れても、もうひとつの手で歩み続けられる。『次にしがみつくものがないまま、両手を離すと落ちてしまう』という考え方で、仮に芸能界で成功しなくても、違う道に進めると教育された」。
大学を卒業したメリットとして、「知識や話の幅が増えて、芸能人として強みになった」という。「朝は大学へ行って、撮影の合間をぬって授業を受ける。夜はバイトもして、しんどいながらも楽しかった」と述懐する。
米ハーバード大出身のパックンは、「大学を卒業すると、馬力が上がる。未知なき世界を自由自在に走れるのは、大学を卒業したおかげだ」と語る。17歳の息子を持つ親として、「迷っているなら、とりあえず行って、馬力を上げてほしい」とアドバイスする。
ハーバード大では、「中退した先輩にビル・ゲイツ、後輩にマーク・ザッカーバーグがいて、『卒業した方が失敗』のような雰囲気もある」としながらも、「スキルアップも人脈づくりもできて、シンキングタイムとして最高だ。より良い道を見つけるまでは、とりあえず頑張ってほしい」。
大学で教える立場からも、パックンは「大学も責任を持って、しっかり教えるべきだ。『学ばせる』ではなく、学ぶモチベーションを高めなければいけない。日本の大学は、少子化で入りやすくなってきた一方で、勉強しないと首席卒業できない形にシフトしている。不幸なら頑張る必要はないが、そうでなければ頑張ってほしい」と持論を述べる。「大学側が意義を伝えないといけない。役に立たないと思わせた大学の失敗だ」。
(『ABEMA Prime』より)
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