韓国の尹錫悦大統領は45年ぶりに「非常戒厳令」を布告したものの、6時間で解除する事態となった。
〈「戒厳令」に関する流れ〉
・3日午後10時半ごろ 尹大統領が「内乱を画策する明白な反国家行為」で「韓国はすぐ崩壊してもおかしくない」として「非常戒厳令」発令
・4日 午前4時半ごろ 190人の議員全員が賛成し、「戒厳令解除決議案」を可決
・4日 午前5時ごろ 「非常戒厳令」を解除
韓国で一体何が起き、尹大統領は何をしたかったのか? アメリカ現代政治外交が専門の前嶋和弘教授に聞いた。
前嶋教授は「本音としては『まだよくわからない』。通常、『戒厳令』とはかつての日本の二・二六事件のように『これはもう東京を止めなくては』というような大きな事件がきっかけで発令されるものだが、今回の韓国については今の段階だと何も明らかになっていない。現状では “尹大統領のご乱心”としか考えられない」と述べた。
「戒厳令」が発令されると一切の政治活動が禁止され、すべての報道・出版は統制を受け、違反した場合は令状なしに逮捕・拘留・家宅捜索を行い処罰することができる。韓国で「戒厳令」が出されるのは、抗議する市民が軍に鎮圧され犠牲になった「光州事件」へとつながった80年以来、44年ぶりだ。
前嶋教授は「光州事件は韓国人にとってはトラウマだ」と説明する。
「今年ノーベル文学賞を受賞したハン・ガン氏も光州事件を題材に作品を書いているが、これは韓国の人のトラウマだ。『なぜ独裁政権が民主化運動を、人々を殺すんだ』という思いをした世代がいる。今の韓国は経済発展したOECD加盟国でK-POPが注目を集めているといったイメージだが、80年代まで人々に銃を向けるような独裁政権だったのだ。そしてその独裁政権が崩れたきっかけが光州事件であり、『戒厳令』だったのだ」
さらに前嶋教授は「韓国はOECD加盟国の中でアメリカと並ぶ分断国家だ」と指摘する。
「韓国では『日本はまだ戦争の反省をしていない』などと考えるリベラル側と『経済発展のためにうまくやればいい』とする保守側との分断が激しくなっている。そして今は保守の流れをくむ尹大統領の与党・国民の力よりもリベラル派である野党・共に民主党の方が強くなっている。とはいえ、どちらが政権を取っても“次”でガラリと変わってしまうため脆弱だ。これはトランプ氏が勝利したことで大騒ぎになったアメリカと似ているかもしれない」
「戒厳令」を発令したことにより追い詰められてしまった尹大統領。一体何がしたかったのか? そして韓国と日本の関係はどうなるのか?
前嶋教授は「発令の狙いはわからない。本当に“テロ的な情報”があった可能性も否定できないが、もし尹大統領が自分の地位を保つために行ったとすれば即座に弾劾だ。その場合、野党だけでなく与党もおそらく賛成せざるを得ない部分もあり、60日以内に野党から新しい代表が選出されるだろう。そうなると、現在韓国も同意している佐渡金山の世界遺産登録も過酷な労働などに対する抗議が起こる可能性もある。日米韓の関係性にも変化が生じるかもしれない」と述べた。
(『ABEMAヒルズ』より)
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