「ふざけんな、何が『産むが易し』だ。『難し』だわボケっ!」「ごめんね…出生前診断をしていればこんな事には…」
【映像】「この赤ちゃんは頭蓋骨がありません」医師からの衝撃の宣告(マンガ)
不妊治療や出生前診断など、妊娠や出産に関するさまざまなドラマを描いた漫画「ひよこをまもれ」。
実話かのようなリアルさで描く著者のすぎさき瑛梨さんは、母親たちのブログやSNSから本音を拾い集めてテーマに反映しているという。
「批判もあったが、それも含めて意見を聞きたい」
「主にフィクションだが、体験談や日常生活からのヒントを得て描いている。出生前診断の話は、皆さんがどう思うのかを聞きたかったので描いた。批判もあったが、それも含めて意見を聞きたい」
「様々な意見が飛び交うきっかけにしたい」「多くの人に読んでもらいたい」との思いからすぎさきさんは漫画を無料で公開している。
受精卵の染色体を調べる
最新作のテーマは「着床前診断」。
着床前診断では体外受精でできた受精卵の染色体を調べ、その本数に異常がないか(通常と同じ23対46本あるか)を確認できる。この検査について、杉山産婦人科の杉山力一理事長に話を聞いた。
着床前診断は“命の選別”になる?
杉山理事長によると着床前診断によって「異常胚」と診断された受精卵を使わないことで妊娠率を高めたり、流産を回避できるという。例えば、40歳くらいになると自然妊娠では3割以上の流産率があるが、着床前診断をクリアできれば流産率は15%以下に下げられる。
メリットが多い着床前診断。欧米では広く実施されているがデメリットもある。
「細胞を取るため、細胞へのダメージがあるかもしれない。また、保険適用外で高額な費用がかかる。当院では、体外受精で受精卵を作成する費用は約50万円、着床前診断の検査が(卵)1個約10万円。卵が3個あると総額で約80万円になる」(杉山理事長)
すぎさきさんはなぜこの「着床前診断」をテーマに選んだのか?
「出生前診断の話を描いているときに着床前診断という検査を知り、最初は『夢のような検査』だと思った。異常があるかどうか胚の段階でわかり、しかも年齢によらない。お金の問題は置いておいて『どうしてみんなやらないんだろう』と思い調べたがこのテーマを扱った漫画やエッセーがなかったため『一番初めに描こう』と頑張って急いで描いた」
しかし、すぎさきさんが漫画を描くために調べていく中で明らかになったのは「着床前診断でも分からない病気や障害もある」こと。マンガでも着床前診断で正常と診断された胚を移植した女性が医師から「この赤ちゃんは頭蓋骨がありません」と「無頭蓋症」の一種であるという診断を受ける。
着床前診断の精度はどの程度なのだろうか?
杉山理事長は「精度は約99.4%。つまり、正常(胚)と言われても異常(胚)も0.6%入り、逆に異常(胚)と言われても正常(胚)だったということもある」と説明。
検査で異常と選別された胚は使用されないため“命の選別”になる、という意見もある。
この点について杉山理事長は「例えばダウン症の方を持った母親からすれば『卵の段階で選別するなんてとんでもない』と。これを『(命の)選別』と言われると確かにそうだな、という気もある」と話す。
検査に対する是非が分かれる「着床前診断」。それでも漫画によってこの検査を知ってもらうことで「妊娠への可能性につながる人が一人でも増えてほしい」とすぎさきさんは言う。
「妊婦に(着床前診断を)受けるか受けないかという選択肢を与えたい。胚から染色体異常があるかないかを知る権利はあるのでは。着床前診断の認知度が広まり、判断材料が増えればいい」
福音派「受精卵は命」
実は日本の着床前診断は非常に条件が厳しい。
対象になるのは「胚移植後に不成功を反復する不妊症の夫婦」「流産、死産を反復する不育症の夫婦」「夫婦いずれかに染色体異常がある」という条件を満たしている方であり、希望する場合、日本産婦人科学会に申請することができる。
まだ日本では広まっていない着床前診断だが、アメリカではどうなのか?
アメリカ現代政治外交が専門の前嶋和弘教授は「カップルの『知る権利』ということで普及してきている」と説明する。
さらに、「アメリカでは中絶を禁止する州が広がっており、今は着床前診断よりも出生前診断において問題が生じている」と述べた。
「アメリカでは着床前診断以上に出生前診断が普及している。だが、フロリダ州などでは妊娠6週以降の中絶が一切禁止とされている。とはいえ、6週では妊娠したかどうか分からない段階。そのため、中絶を検討するならば他の州に行く必要がある。今後は出生前診断の事前段階として着床前診断も増えてくるかもしれないが、特に福音派は『受精卵は命』という考えであるなど、生命倫理の観点では難しい」
(『ABEMAヒルズ』より)
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