その時間まで、捜索隊はオイカワさんに話をうかがっていくことに。ここで手がけているのは競走馬の繁殖業、しかも、鉄ソリをひきながら力と速さを競う『ばんえい競馬』の競走馬だ。今は、1年間レースにも出ていた牝馬の「サクラセンショウ(10)」の1頭を育てるのみ。現在妊娠中で、2025年3月に出産予定だという。一時期は5頭を飼育していたが、自身の年齢などを考えて減らしたそうだ。
厩舎から出てきたサクラセンショウの姿に、捜索隊は「中でも大きく感じたけど、外出るとすごい」と驚き。体重は約900kgで、現役時代は1tを超えていたという。
ばんえい競馬は明治後期、北海道を開拓した農民たちの娯楽として誕生したと言われる。農耕用や運搬用の馬を「輓き馬・輓(ばん)馬」と呼んでいたことから、当初は「お祭りばん馬」という呼び名で親しまれていた。始めの頃は、2頭の間に丸太をつなぎ、綱引きのように力を競っていたという。それが、車輪を固定した荷車に人を何人乗せて引けるかを競うようになり、その後、今のように重りを載せたソリを引いて障害コースを競争するようになったそうだ。そして昭和21年、馬券を発行する公営競技となった。
ばんえい競馬の競走馬になるためには、能力検査で適正と判定される必要があり、「昔は本当に難しかったけど、今は頭数が減って合格率が上がっている」。サクラセンショウはこの牧場で誕生、2歳から1年間レースに出場し、生涯戦績は1着3回、2着2回、3着1回(24レース)。男性は「やっぱり自分の所で生まれた子馬がレースに出られるのは楽しみ」と語った。
その後も、出産時はなぜ夜が多く多忙となることや、オイカワさんが郵便局員をしながら家業を続けた話を聞いたり、餌となる300kgにもなる牧草ロールを作る様子を見せてもらった捜索隊。さらに、自宅で採れた野菜を使った料理まで振る舞ってもらった後で、もともと目指していたポツンと一軒家へと向かうのだった。