午後2時、プジョルジョDを乗せた車は、タイとカレン国の国境地点に到着した。タイとカレン国をつなぐのは、全長50メートルの橋。目的地であるカレン兵士の療養施設は、この橋を渡って約30キロ先にある。しかし、ここで緊急事態が発生した。タイ国境警察の男性は「この橋の先でミャンマー軍がカレン族の村を襲撃している。すごい大惨事だよ」と説明。さらに「ミャンマー軍に拘束されたらタダでは済まない」と忠告し、カレン国へ入国しないよう取材班に求めた。ミャンマーは軍が国の実権を握る軍事国家。軍隊に拘束されると武力を行使される可能性があり、非常に危険だということで、カレン兵士の療養施設の取材は中止となった。
しかしここで、プジョルジョDは驚きの光景を目にする。激しい戦いの最中でも、地元の人々は当たり前のように橋を行き来し、近くの川では子どもたちが無邪気に遊んでいた。タイ側へ橋を渡って来た、ミャンマー人の10代の少女に話を聞くと、欲しかったものがタイに届いたため、取りに行くところなのだそう。
プジョルジョDが「紛争中のカレン国を通って、危なくないんですか?」と尋ねると、その少女は「生まれた時からこの状況です。この紛争が続く日々が当たり前なので、現状について何も思わないし、何も感じません。慣れちゃった」と平然と語った。しかしその一方、カレン族の独立戦争への考えを問うと「政府の考え方はわからないけど、ミャンマーの人もカレンの人も同じ民族で同じ家族です。争う必要はないと思います」と吐露。この現状に諦めを覚えながらも、平和を願っているようだ。
その後、タイの国境警察と粘り強く交渉を続けた結果、橋を渡った先まで行くことが許可された。こうしてついに、カレン国へ足を踏み入れたプジョルジョD。橋の近くでは、カレン族の男性が何かの作業をしており、声をかけると「土砂崩れがあったから、補修する砂を集めているんだ」とのことだった。「今近くで内戦が起きていることを知っていますか?」と尋ねると、男性は「知らないし、興味もない」と返答。近くで銃撃戦が起きていても、気に留める人はいないのだ。内戦が日常のひとつとなっているこの場所で、プジョルジョDはどんな人々と出会うのか。命がけの取材によって明らかになった、ミャンマー内戦のリアルとは……。
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