
与党内では延期論も出ていたなか、石破茂総理は1回目の引き上げを行うといいます。一体、なにが。政治部デスクの解説です。
【画像】がん患者「追い詰められている」 白血病患者「生きることを諦めさせないで」 緊急アンケートに寄せられた声
■高額医療費“引き上げ”なぜ?

立憲民主党
野田佳彦代表
「高額療養費の自己負担上限の引き上げについては1年間延期し、その間患者団体とも丁寧な対話を積み重ねながら制度の持続可能性を図るべきではないか」
政府が今年から再来年にかけて段階的に自己負担の上限額を引き上げるとしている「高額療養費制度」。立憲民主党は1年間の延期を求めましたが…。

石破総理大臣
「高額療養費制度の見直し自体は実施させていただきたいというふうに、今でも思っているところです」
石破総理は予定通り、今年8月に引き上げるとしました。そのうえで来年の引き上げのあり方については…。
石破総理大臣
「いったん立ち止まりまして、本年秋までに政府として患者団体の皆様方を含みます関係者のご意見を十分に承った上で、改めて方針を検討し決定することといたしたいと思っております」

高額療養費制度は大きな手術などによって医療費が高額になった場合、患者の自己負担が高くなり過ぎないようにするものです。いわば「命綱」ですが、政府は…。
石破総理大臣
「高額療養費制度の見直しなどにより、保険料負担の抑制につなげます」

政府は負担の上限額、つまり患者が支払う金額の上限を引き上げると決めたのです。すぐに不安と怒りの声が上がりました。
■患者団体からは“失望”の声も
全国がん患者団体連合会が行った緊急アンケートには患者や家族からの悲痛な声が寄せられました。

20代女性のがん患者のアンケートから
「毎月さらに多くの医療費を支払うことはできない。死ぬことを受け入れ、子どもの将来のためにお金を少しでも残すほうがいいのか追い詰められている」

30代女性の白血病患者のアンケートから
「これ以上医療費が高額になると治療を諦める、命を縮める患者が増えるのは確実。私たちを殺さないでください。生きることを諦めさせないでください」
自治体の長からも…。

島根県
丸山達也知事
「私は少なくとも、少なくとも、提案されたというだけでも、国家的殺人未遂だと思う。国家的殺人未遂だと思う」

反発を受け、政府は「多数回該当」。長い期間、治療を受ける人が直近12カ月以内に自己負担が3回上限額に達した場合、4回目から上限額を引き下げる仕組みは据え置くことにしました。
一方で負担額の引き上げ自体は今年から実施するとしました。
石破総理大臣
「物価上昇分というものは、きちんと反映させていかなければなりません。
■与党内では延期論も それなのになぜ?

政治部官邸キャップ
千々岩森生記者
「事態はきのう大きく動いた。まず、与党幹部からは患者団体の反発がある、予算案の採決もあり、ここはいったん延期すべきだと言う声が上がっていた。石破総理にも届いていた。一方で夜になって今度は担当の厚労大臣、財務大臣が公邸で石破総理と面会をした。保険料の負担軽減も考えてこれ見直しは必要だという立場。言ってみれば巻き返しをはかった形になった。石破総理自身はというと、すでに政府案はいったん修正してるのでこれ以上手を加える考えはなかったが、まさにきのう、この両者の意見を組み入れた形でさらなる一部修正に踏み切ったというのが今回の流れになる」
石破総理の決定に患者の団体は…。

悪性リンパ腫を経験
全国がん患者団体連合会
天野慎介理事長
「総理からは1年目の定率値上げ、物価上昇分なのでどうしても上げたいというご説明だったと理解しましたが、そもそも薬価は上がっていませんし、またなぜこの時期にやらなければならないのか、2年目、3年目の取り扱いがどうなるのかというのは、きょうの答弁では判然としない。このまま五月雨に上がってしまうということを危惧しております」