「世の中には僕と同じように傷つくしかない人が沢山いる」堂本剛が音楽を届け続ける意味
──時に「アイドル」という肩書が足かせになったことも?
うーん、それはどうだろう。「アイドル」という言葉に囚われる人に対して「寂しいなあ」と思うことは沢山ありましたが、アイドルが嫌だとか悪いとかは一度も思いません。みんな自分の人生や時間を犠牲にしながら没頭して一生懸命に闘っていますから。「アイドル」という言葉に翻弄される人と関わった時に、「上手く伝わらないなあ」「違う方向に話が進むなあ」と思うことが多かった、という事です。でもそこに怒りとかいらだちとかはありません。「仕方がない」という言葉が適当かわからないけれど、「こういうものだからなあ」という諦観なのか…。その繰り返しで生きてきました。
──怒りや悔しさを原動力にはしないタイプですか?
「悔しさをバネに!」とかですか?いやいや、僕はそういったことが全くないです、一生ないです(笑)。理解されないことに対してはもちろん傷つきますが、そこからなにがしかの根性が芽生えるわけでもなく、ただただ傷つくだけ(笑)。これは小さい頃からそうで、人から何か言われて「うわっ…」と思うけれど、そこから「見返してやろう!」とか心に火がつくタイプではないです。ただただ飲み込んでただただ傷ついて終わる。だから僕は一度心を壊したのかもしれません。でも今ではそれも良かったことだと思っています。世の中には僕と同じように傷つくしかない人が沢山いるし、そのような人たちのために音楽が出来たらいいな、届けばいいなと気持ちを切り替える事が出来たからです。僕と同じような気持ちを抱える人たちに寄り添うこと。そこが自分の一番生きやすい場所だと気づくことが出来たわけですから。
取材・文:石井隼人
写真:You Ishii
<衣装クレジット>
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