
18日から備蓄米の引き渡しが始まりました。店頭に並ぶ時は「備蓄米」と表記されないということですが、どのような形で販売されるのか。卸売業者への取材からみえてきました。
【画像】政府備蓄米約12トンが精米工場へ スーパーに並ぶのはいつ?
■スーパーにいつ届く?

18日午前9時、政府備蓄米を保管している倉庫の扉が開きます。コメの流通の目詰まり解消を目的としては、初めて備蓄米が放出されます。
埼玉県にある倉庫から、備蓄米が次々と運び出されます。先週、落札された初回放出分は、およそ14万トン。初回の入札対象だった備蓄米15万トンのうち、2024年産が10万トン、2023年産の古米が5万トンでした。

18日に埼玉県の倉庫から搬出される備蓄米は、30キロのコメ袋が400個、あわせて12トン分で、すべて2024年産とのことです。備蓄米を落札したJA全農に引き渡されます。
およそ2時間後、備蓄米は埼玉県内の精米工場へ。コメ袋の中には、備蓄米が玄米の状態で入っています。
この後、備蓄米はどうなるのでしょうか。コメをふるいにかける作業です。JAなど集荷業者に渡った備蓄米は、取引がある卸売業者に売られる予定です。
JA全農 米穀部 藤井暁部長
「まずは円滑な流通をしっかりやっていくために、なるべく早く消費者の皆様にコメを届けていけるように頑張る。一定の日数はかかるが、可及的速やかに、なるべく早いタイミングで届けられるように取り進めていく。備蓄米というのは制度上の区分なので、普通に流通しているコメと何ら違いのないコメなので、そこは安心して食べてもらえればと」

放出された備蓄米は、いつスーパーに届くのでしょうか。
18日、JA全農から備蓄米を購入する予定の大手卸売業者を取材すると、今後の備蓄米の流通について教えてくれました。
JA全農から備蓄米を購入予定 大手卸売業者
「JA全農から備蓄米を購入する予定で進めています。3月中に自社の工場に備蓄米が入る見込みです。備蓄米を自社で精米して、3月中には全国の大手スーパーや外食チェーンなどへの販売を始めたいと考えています」

今月中にも、備蓄米が大手スーパーの店頭に並ぶ可能性があります。ただ、気になるのは、備蓄米放出でコメの価格高騰が収まるのかということです。全国のスーパーでの平均価格は、去年9月時点で5キロあたり3105円でした。
政府は「新米が出てくれば市場が落ち着く」と見通していましたが、新米が出回り始めてからもコメの高騰は止まらず。今月9日までの1週間で4077円となり、10週連続で値上がりで、去年と比べて99.3%も高くなっています。
18日、江藤農水大臣は「備蓄米放出の効果はまだ反映されていない」と消費者に向けて強調しました。
江藤農水大臣
「非常に消費者には苦労をかけているなと思う。ただ、備蓄米はきょうから引き渡しが始まる。精米をして卸売業者に渡るまで、まだ少し時間があるから、政策効果としてはスポット価格。全国平均のスーパーの価格には、まだ反映されていないことは理解してもらいたい」

卸売業者から、スーパーなどの小売店や外食産業に備蓄米が渡るのは、3月下旬以降の見込みです。
備蓄米の品種は41種類。北海道産「ゆめぴりか」、秋田県産「あきたこまち」、宮城県産「ひとめぼれ」、新潟県産「コシヒカリ」などが含まれます。
■牛丼チェーン 備蓄米の活用は?

実際に、外食産業では備蓄米が使われるのでしょうか。番組では18日、大手牛丼チェーンを取材。備蓄米の活用を検討する意向を示しています。
ゼンショーホールディングス
「すき家は厳選ブランド国産米を100%使用しています。現時点で備蓄米の活用は検討段階であり、すき家の品質基準に合致する銘柄が出てきた際は活用を検討していきます」
吉野家ホールディングス
「備蓄米の放出は歓迎していて、商流次第ではあるが、品質や価格のバランスを見て検討や判断をしたいです」
一方、松屋フーズホールディングスは、備蓄米の対応について未定としています。

街の飲食店では、備蓄米を使うかどうか決めかねています。東京・千代田区の食堂新では、国内米が高騰し始めた去年に国産よりも安いアメリカ産「カルローズ米」に切り替えました。
食堂 新 平野新店長
「正直、今のところ、(備蓄米の)金額の様子を見てから使用を考えている」
現在、カルローズ米を1キロ520円ほどで仕入れているといいます。
平野店長
「理想は(備蓄米が)同じくらいの金額か、(1キロ)500円台中盤くらいだったら検討できる金額かなと。できれば、国産米を使っていければと思っている」
■「備蓄米」表示せず どう販売?

そもそも、スーパーなど小売店では、備蓄米と表示して販売するのでしょうか。
JA全農は卸売業者に対して、スーパーなどで販売する際に備蓄米と表示しないよう要請したことを明らかにしました。その理由については、消費者が備蓄米と分かることで取り合いになる懸念があることを挙げています。
備蓄米と表示しない要望について、スーパーの買い物客からは「確かに(備蓄米と)分かれば良いけど、分かったからといって、ちゃんと年産が出るんですよね。備蓄米は管理がちゃんとされているから大丈夫だと思うけど、でもね、おいしいのかな」と疑問の声も聞かれました。

アキダイ 秋葉弘道社長
「備蓄米かどうかというのは、正直言って、味が悪いとか、備蓄米はこういう処理をしなきゃいけないということであれば表示しなきゃいけないと思うが、味にも遜色ないし、普通のコメと同じようにして食べて良いのだから。あえて備蓄米と表示することはしないことに対して、なんでだと疑問を唱える人もいないのかなと」
では、スーパーに並ぶ備蓄米は、どのように表示されるのでしょうか。
18日に取材した大手卸売業者によりますと、備蓄米は様々な品種の2024年産と2023年産の古米を混ぜ合わせて、国産ブレンド米としてスーパーや外食産業に売る予定だといいます。

備蓄米のみのブレンド米が販売されることになりますが、備蓄米とは表示されない見込みです。
ただ、このブレンド米の流通により、コメの価格は1キロあたり100円くらいは下がるのではないかとみています。
買い物客(40代)
「出来ればブランド米を買いたいが、今後高騰するのか分からない状況で、ブレンド米をもしかしたら買うことも考えにはある。(ブレンド米が)3000円ちょっとであれば、ありがたい」
買い物客(70代)
「安かったら、やっぱり備蓄米(ブレンド米)を買う。家計が助かるじゃないですか」
農林水産省は「今週中にも備蓄米の追加7万トンの入札について発表する」としています。