
イスラエル軍はガザ地区で、撤退していた軍事地域にも展開を始め、空爆に続き、地上作戦も再開しました。その背景に透けて見えるのはネタニヤフ政権の国内事情です。
【画像】デモ拡大・支持率低下も…イスラエル軍の攻撃“激化”ガザへの地上作戦も再開
■戦火拡大 ガザへの地上作戦も再開


停戦合意で北部に戻れていた人たちも何度目かの避難です。イスラエル軍からのビラには「緊急警告」の文字。ここは作戦地域となり、危険なので避難しろという一方的なメッセージがありました。
ガザ市民 「いつまでこんな生活が続くのか。10回目の避難だ。ここからデイルアルバラ、ラファまで行って疲れ果てた」

イスラエル ネタニヤフ首相(18日) 「これは始まりに過ぎない。たった今からイスラエルはハマスに対し、強度を上げて活動する。これからの交渉は戦火の下で行われる」

ガザへの空爆再開から2日。ガザの保健省によれば、これまでに506人が死亡しました。ネタニヤフ首相が言う「戦火の下の停戦交渉」が成立する見通しはどこにもありません。
ガザ市民 「この子と妻が死んで私が残された。戦争に戻った。何の罪もない者が狙われる」
イスラエル軍は関連を否定していますが、ガザ中部にある国連のゲストハウスでは国連の職員1人が死亡し、5人がけがをしました。

イスラエルによる攻撃再開は空爆だけにとどまらず、一部で地上作戦も再開しました。場所はガザを南北に隔てるネツァリム回廊。停戦合意を受けてイスラエル軍が撤退し、多くの市民がここを通って故郷に帰還していましたが、再びイスラエルの支配下に置かれることになりました。
さらに、20日に入ってガザ北部でも地上作戦が始まり、どこまで拡大するのか先が見えません。

CNN ロバートソン記者 「イスラエルの世論調査では戦争終結を望む声が多く聞かれますイスラエル国民の7割以上が“完全な撤退”を望んでいるんですまた半数以上がネタニヤフは直ちに辞任すべきと考えています」
■支持率低下 ネタニヤフ政権に逆風

“人質の解放を目指した”とされるガザへの攻撃再開ですが、イスラエル国内での支持は高くはなく、政権に反発するデモは拡大するばかりです。


激しい攻撃は、いまだ解放されていない人質の命を危険にさらすことと同じ。政権支持率は47%(2月時点)に低下し、7割以上が首相退任を望んでいます(今月17日時点)。
デモ参加者 「人質がまだ戻ってこない。政府が人質解放に動かないから抗議をしている」 「首相のせいで国の状況は悪化している。私たちが望むのは民主主義の再生で、今のような独裁ではない」
「民主主義を取り戻したい」。そう市民が叫ぶのは、ネタニヤフ首相が、自身の政権維持に重きを置いているからです。19日、国家治安相として政権に復帰した極右政党『ユダヤの力』の党首ベングビール氏。停戦案が浮上した1月。当時もネタニヤフ政権のもと国家治安相を務めていましたが、激しく反発し、その後、辞任と連立政権からの離脱を表明しました。

イスラエル ベングビール国家治安相 「この交渉からは決別した。多くのテロリストをエルサレムに放つというのです。そんなことをしたらテロリストたちは再び我々を傷つけ、殺害しようとするだろう」

もともと、複数の政党と連立を組むネタニヤフ政権は『ユダヤの力』の離脱によって過半数を割り込んでいました。そんななかで、ネタニヤフ首相に迫っているのは、今月末までに成立させなければいけない予算です。不成立なら憲法の規定で解散・総選挙になります。
ネタニヤフ首相にとって、ベングビール氏を説得し、連立政権に戻すことは、自身の立場を守るうえで欠かせないことだったのです。
イスラエルには、イエメンの武装組織フーシ派からミサイルが発射されました。

フーシ派報道官 「抑圧されたパレスチナ人を助け、犯罪国家イスラエルによるガザ地区での虐殺に対処するため、わが軍のミサイル部隊は特別軍事作戦を実施した」
ガザへの攻撃再開に、イエメンの武装組織フーシ派による反撃。アメリカの停戦延長の提案もむなしく、中東は停戦以前に逆戻りしつつあります。