
福岡市で路線バスが60代の男性をドアに挟んだまま発車し、男性が両足を骨折した事故について、バスを運行する西日本鉄道が会見で謝罪しました。
【画像】西日本鉄道が会見 バス事故で運転手への連絡が遅れた理由とは?
■バス運行会社が謝罪

九州で鉄道やバスを運営する西日本鉄道が、定例会見で路線バスの重傷事故について説明しました。
西日本鉄道 林田浩一社長
「本年1月22日夜、福岡市中央区の大名2丁目バス停付近において、当社路線バスに乗車されようとしたお客様の手を挟んだまま、バスが発車し、お客様が車道上で転倒し、負傷する事故が発生いたしました。お客様は両足骨折の重傷で、現在も入院療養中でございます。けがをされたお客様には、心よりおわび申し上げますとともに、ご利用のお客様をはじめ関係者の皆様に、多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを、深くおわび申し上げます。大変申し訳ございませんでした」
「公表につきましては、事故直後の関係者のご意向等にかんがみ控えていましたが、安全にご利用いただく公共交通を担う弊社といたしましては、今回の事故が発生したことについて、速やかに公表すべきであったと深く反省しております。警察の捜査および事故原因の究明が続いていることから、引き続き捜査には全面的に協力してまいります」

事故が起きたのは今年1月下旬、福岡の中心部にあるバス停でした。午後7時半ごろ、男性(64)が西鉄バスに乗車しようとしたところ、両開きタイプのドアに手を挟まれたのです。この時、バスは異変に気付かずに発車。男性は転倒し、両足を骨折しました。

当時、時速10キロから12キロで走行していたというバス。男性の手は、およそ10メートル進んだところでようやく抜けました。10メートルは、ちょうど路線バス1台分くらいの長さです。
西日本鉄道の会見
「事故原因は運転手が発車時に、ドア付近の安全確認を怠ったこと」
実は、運転手は男性の手が抜けた後も、事故の発生に気付いていませんでした。
西日本鉄道の会見
「当時、この事故に関しては全く気付かなかったということ。車内のお客様から『あっ』という声が上がっていたが、車内に異常があったということで、車内の確認はしているが、、車外でも異常はないと判断して、そのまま運行を続けた」

バスのドアには挟み込みを防ぐためのセンサーが付いていますが、この時は反応がなかったといいます。
西日本鉄道の会見
「当該車両のセンサーは、2センチ以内のものを挟んだ時に検知しない仕組み。2センチ以上のものを挟んだ時は、検知して開く仕組み」
センサーは2センチ以上の挟み込みを検知した場合に作動するもので、今回は手の幅がそれに満たなかったと考えられるといいます。
西日本鉄道の会見
「このセンサーを2センチ以下に縮めると、ドア同士が当たってセンサーが常に働く仕組みだそうで、これ以上は小さくできない」
■運転手への連絡 なぜ遅れた?

異変に気付かぬまま走行を続けた運転手。事故の発生は、同じバス停で待っていた他の客が後続バスの乗務員に伝え、その乗務員が営業所へ連絡しました。その後、営業所が当該バスの運転手に伝えたのは、終点に着いてから。事故が発生した現場から終点までは、およそ45分の距離です。
運転手への連絡は、なぜ遅れたのか。当該のバスには無線が付いていなかったというのです。
西日本鉄道の会見
「乗務員は気付いていませんので、終点まで運行しております。終点で管理者から連絡が入り、現場に戻った」
さらに、営業所は運転手の携帯に電話しましたが、運行中で応答できない状態でした。そもそも、バスの運転手が事故に気付かないということはあり得るのか、専門家が解説します。

交通事故鑑定ラプター 中島博史所長
「バスの場合には10メートル程度、人を引きずって気付かないことはあり得ると思う。バスは重量があるので、人一人分くらいの重さがかかったからといって、発進の時の振動等にまぎれ、その抵抗に気付くのは難しい」
ミラーでの確認については、次のように分析します。
中島所長
「おそらく左側のサイドミラーについている補助的なミラーで、位置自体は確認できると思う。バス等の大型車の場合には、広い範囲を確認するために凸面鏡を使っているので、少し離れるとすごく小さく見えてしまう。なので、位置的には見えるが、そこに人が挟まっているかもしれないという注意を払って見ないと、非常に見えにくい、気付きにくいという状況はあったかもしれない」

一方、西日本鉄道は、今回の件を公表していなかったことについて、次のように述べました。
林田社長
「当初は関係者のご意向等にかんがみ、公表を控える判断をとりましたが、今回は事故の重大性をかんがみ、事故概要を公表すべきであったと深く反省をしているところです」