トランプ政権“危うい軽さ” 軍事作戦がチャットで漏えい? 米軍のフーシ派攻撃
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 アメリカによる軍事作戦の情報が、通信アプリを通じて外部に漏えいした問題で、トランプ政権幹部らのチャットでのやりとりが明らかになった。政権のずさんな情報管理に批判が高まっている。

【画像】“前代未聞の失態” トランプ氏「言論の自由を取り戻す」主張も

■軍事情報に民間アプリ使用か

“前代未聞の失態”
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 “前代未聞の失態”とも言われている。

 今回、漏えいが指摘されているのは、中東・イエメンの反政府勢力「フーシ派」に対するアメリカによる軍事作戦の情報だ。

 この情報は、トランプ政権の中枢幹部らがネット上のチャットルームでやりとりしていたもので、管理人を務めていたのはウォルツ大統領補佐官とみられる人物だ。

 他に、バンス副大統領、ルビオ国務長官、ヘグセス国防長官、ラトクリフCIA(アメリカ中央情報局)長官がメンバーに含まれていたとみられる。

 さらに、このグループに思いがけず加わることになった人物がいる。

 民間人で米・老舗有力雑誌『アトランティック』のゴールドバーグ編集長は、「フーシ派PC小グループ」と名付けられたグループから、「マイケル・ウォルツがあなたをグループに追加しました」「1週間後にメッセージが消去されます」と書かれた招待を受けた。ゴールドバーグ氏は、ウォルツ氏から誤って招待されたとみられる。

 こうしたなか、ヘグセス国防長官は、部外者もいるチャットルームで、攻撃の具体的な予定時刻に触れる投稿を行った。

 投稿にはまず、「現在、東部標準時11時44分:天候は良好。米中央軍に確認し、軍事作戦が始まった」、続いて「12時15分:F-18戦闘機群発進」との情報が示された。

 また、「14時15分:ドローン部隊がターゲットに到達(最初の爆弾を投下)」との記述があり、さらに「15時36分:F-18戦闘機群2回目の攻撃開始。さらに海上よりトマホーク発射」と投稿された。

 実際に「最初の攻撃目標が破壊された」との報告を受けると、バンス副大統領は「エクセレント」、ラトクリフCIA長官は「良いスタートだ」と反応した。一方、ウォルツ氏は「拳・国旗・炎」の絵文字を投稿した。

使用されたのは「シグナル」
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 ホワイトハウスは「機密情報は含まれていない」と強調しているが、今回チャットに使用されたのは「シグナル」という民間メッセージアプリで、ユーザー数は約7000万人に上る。

 グループに入ると、グループ内の会話を共有できる仕組みで、日本人になじみのあるLINEのグループのようなもの。CNNによると、バイデン政権でも会議の調整などに使用されたため、秘匿性が高いものだという。

 ポイントは、軍事作戦に関する情報を民間のアプリ上でやりとりしたこと。トランプ大統領は「機密情報はなかった」と主張した。

 一方、民主党の上院議員は「標的、武器、攻撃手順やタイミングが投稿されていて、これらは機密情報ではないのか」と議会で追及した。

シチュエーションルーム
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 では、アメリカで国家機密はどのように扱われてきたのか。

 ホワイトハウスの地下にあるシチュエーションルームは、大統領や高官が緊急対応にあたる部屋だ。2011年5月に行われたオサマ・ビンラディン容疑者の急襲作戦では、オバマ政権の高官らが現地からの映像を注視したとされる。

 CNNによると、シチュエーションルームに集まらない場合でも、今回のチャットに参加していた高官は独自の機密通信システムにアクセス可能で、機密情報の安全確保を職務とするスタッフも抱えていたが、そうしたものは使用されなかったという。

■間違いだらけ?“マスク氏主導”省庁HP

名前の由来は
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 数字の間違いも珍しくないようだ。イーロン・マスク氏が率いる政府効率化省は「DOGE」と呼ばれ、米連邦政府の支出や職員の削減に取り組んでいる。

 DOGEは政府効率化省(Department of Government Efficiency)の頭文字だが、マスク氏がお気に入りの仮想通貨「ドージコイン」から取ったものだという。これまでも、ドージコインのアイコンや柴犬を使った組織のイラストが投稿されてきた。

 DOGEのホームページは、トップ画面にマスク氏が所有するXの投稿が表示されるシンプルなつくりで、「本日の素晴らしい仕事 助成金をキャンセルし、2億3700万ドル(約358億円)を節約」などと、成果をアピールするかのような書き込みが投稿されている。

削減総額は検証不可能?
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 ロイター通信によると、DOGEが24日時点で発表した削減総額は1兆1500億ドル(推定・約174兆円)だが、間違いの削除や訂正が繰り返され、削減総額は検証不可能だという。

 例えば、「80億ドルを節約した」と報告していたが、実際は800万ドルだったことも判明した。しかも、28日までの削減額は1300億ドル(約20兆円)とされ、1兆1500億ドルとは一桁違っている。

 このように、特に訂正のアナウンスなどなく、いつの間にか書き換えられていることも珍しくないという。

同志社大学大学院 三牧准教授
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 こうした誤情報の発表について、同志社大学大学院の三牧聖子准教授は「トランプ政権のノリは危険。統治する立場になってからも、選挙中の感覚のまま」と指摘した。

 例えば、トランプ陣営は大統領選で「移民がペットを食べている」というSNS上の誤情報を拡散してしまったことがある。

SNS規制緩和
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 トランプ氏の大統領就任後、SNSの規制が大きく緩和された。トランプ大統領は1月の就任演説で「アメリカに言論の自由を取り戻す」と宣言。その後、署名した大統領令により、SNS上の言論に政府が介入することが禁止された。

 米IT大手が、第三者による投稿内容の事実確認「ファクトチェック」を廃止したのも、トランプ氏の意向を踏まえたものとみられる。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年3月28日放送分より)

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