
内戦下にあるミャンマーで発生した地震から7日目。犠牲者は3000人以上に上り救助活動は難航している。ミャンマー国軍は、武装勢力との一時停戦を発表したが、人道支援の輸送を妨害するとの懸念も広がっている。
【画像】ミャンマー 民主派と少数民族武装勢力による武力衝突の発生地
■被災後も市民を苦しめる内戦

ミャンマーでは、被災後も戦闘が続いていた。ミャンマーは2021年の国軍によるクーデター以降、内戦状態で、地図のオレンジ色の部分で武力衝突が発生している。このようにほぼ全土にわたって、国軍と民主派組織や少数民族武装勢力との内戦が続いている。震源に近いザガインも、大半は国軍が支配していないエリアだ。

国内避難民はおよそ353万人。国軍の支配下にあるのは全土の25%未満に過ぎないといわれている。さらに、国軍は地震発生から3時間も経たない時点で北東部シャン州に空爆を行ったといい、30日以降も空爆を続けていたという情報もある。
こうしたなか、一時停戦に向けた動きが出ているようだ。先月29日、民主派の国民統一政府(NUG)が2週間の停戦を表明した。そして、おととい、少数民族勢力のアラカン軍などが1カ月の停戦を発表、さらに、きのう、国軍が今月22日までの停戦を発表した。
■内戦で医療体制がぜい弱に

ただ、すでに負傷者の救護活動に内戦の影響が出ている。独立系メディア「ミャンマー・ナウ」は、震源に近いマンダレーの総合病院では負傷者が次々に運び込まれたため、猛暑の中、屋外駐車場にベッドが並べられていると伝えた。
国連人道問題調整事務所の報告書によると、外傷キット、血液バッグ、麻酔薬などの医療物資が不足、救助活動を妨げているという。
また医師不足も深刻だ。ミャンマーでは国軍によるクーデター後、職務放棄で国軍への抵抗の意思を示す「不服従運動」が広がった。この運動に多くの医療従事者が参加。マンダレーでは全体の8割近くに上っていたこともあり、こうした医師が弾圧を受け、海外へ逃れるなど医師不足に陥っていた。
先月30日、国際赤十字・赤新月社連盟は「単なる災害ではなく、かねて脆弱(ぜいじゃく)だった状況の上に降りかかった複雑な人道危機」だと指摘した。
■被災現場に届かない支援物資

さらに、援助物資をめぐって以下のような状況が発生している。
イギリスの「ガーディアン」によると、ミャンマーで緊急対応調整しているオーストラリア人医師は「国軍は検問所の支配を利用して、民主派などが支配する地域に医薬品が流入するのを阻止している」と指摘する。
またザガインの救助隊員の話では、「国軍は援助物資を装って武器が民主派などの地域に持ち込まれるのではと疑っている。食料配給チームもチェックされ、食料は没収される」と述べている。
■支援に動く各国の思惑

軍事政権は国際社会に支援要請をしている。そもそも2021年2月にクーデターを起こしたミャンマー国軍は、西側諸国からの経済制裁や外国企業の撤退などで孤立していった。そして2023年5月、サイクロン「モカ」が襲来した時、国軍は厳しい移動制限を解除せず、CNNによると、国境なき医師団の通行許可、国連人道問題調整事務所による人道支援の許可を停止した。
しかし、今回の地震では異例の国際支援を要請している。ミンアウンフライン国軍総司令官は先月28日、「いかなる国や組織であろうが救援に来ていただくことができると呼びかけたい」とした。

そして近年、国軍と距離を縮めているのが中国とロシアだ。去年11月、国軍トップのミンアウンフライン総司令官が中国の李強首相と会談した。中国はミャンマーの政治的和解と民政移管プロセスの推進に支持を表明した。
また、先月4日にはプーチン大統領と会談している。ロシアとミャンマーは原子力発電、資源、教育などの協力を確認する文書を交わしている。
こうした関係があるなか、地震の発生を受け中国は、先月29日、習近平主席が電報を送り、北京などから救援・医療隊を派遣、約21億円の緊急支援を発表した。
先月28日、ロシア非常事態省は、プーチン大統領の指示で医師を含む救助隊や災害救助犬を載せた輸送機2機を派遣した。
■米国の災害支援 「USAID解体」が影響か

一方、アメリカの支援はというと、トランプ大統領が先月28日、ミャンマーへの支援を表明した。USAID(米国際開発庁)の災害派遣チームの派遣を検討したが、2日の朝日新聞によると、地震発生から3日経った時点では到着していないという。
また、ワシントン・ポストによると、過去の大災害ではアメリカの職員が数時間以内に現地に到着していたと指摘している。
この遅れは、USAID解体に向けた動きで職員が大幅に減少し、ミャンマーでの活動を担当していた職員15人中14人が無期限休職になっていることが原因なのではないかと言われていて、政府は数人の復職を試みているという。
予算削減の結果との指摘に、アメリカ国務省のブルース報道官は、先月31日の定例会見で「その考えは否定する。様々な要素が関係している」と述べた。
■日本のミャンマー支援は?

今回の地震に関して、日本政府の動きを見ていく。
まず、2021年のクーデター以降、日本はミャンマー国軍に対して、下記3点を求めている。
(1)暴力の即時停止
(2)アウンサンスーチー氏を含む被拘束者の解放
(3)民主的な政治体制の早期回復
国際機関やNGO等を経由した人道支援を除き、新規ODA(政府開発援助)事業は行っていない。

一方で、今回の地震を受けて、日本政府は人道支援に動いている。先月31日、日本政府が派遣したJICA(国際協力機構)職員や医療関係者ら5人の調査チームがヤンゴンに到着した。現地の被災状況や医療ニーズ等を確認するという。さらに、きのう、医師・看護師ら32人の「国際緊急援助隊」がヤンゴンに到着した。
外務省は1日、日・ASEAN統合基金を通じ、防水シートやテントを提供。国連やJICAを通じて、衛生用品などの配布準備も進めているという。さらに、2日、約9億円の支援を発表。国際機関と調整して進めていくと説明した。

林芳正官房長官は、2日の会見で「苦難に直面するミャンマー国民を支えるとの一貫した方針のもと、人道支援をしっかりと実施していく」と述べている。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年4月3日放送分より)
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