警察官かたる詐欺 “見分ける方法”
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 偽の逮捕状に、偽の警察官。急増する警察官をかたる詐欺。その見分け方を元刑事に聞きました。

【画像】元刑事に聞くニセ警察官の見分け方「警察からの電話で口座関係や残高の話があったときには」

■警察官を装う詐欺

詐欺電話
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「もしもし」

20代男性
「もしもし…」


「すみません。お待たせしております。今、調査機関のほうからですね、指定の口座がおりてまいりましたので…」

AI技術を使って顔を加工したり別人の顔を合成したりしていた疑い
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 大阪府警を装った詐欺電話。その時のビデオ通話の映像です。左側が100万円をだまし取られた20代の男性、右側の男は…。


「私は大阪地検特捜部検事の石野と申します」

 捜査員役として登場した、この男。よく見ると、顔を動かすたびに、ひげのような黒いものが映ったり消えたりしています。

 警視庁は、詐欺グループがAI技術を使って顔を加工したり別人の顔を合成したりしていた疑いがあるとみています。

 偽物の警察官が偽物の警察手帳を見せるなどして、金銭をだまし取る詐欺が急増しています。

偽警察官
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福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「今回ですね、携帯が不正利用・不正契約されている件で事情聴取を行っていることに間違いありませんか?」

詐欺調査会社
「はい、間違いありません」

 詐欺グループとのやりとりの一部始終を録音したのは、特殊詐欺の調査や対策に取り組む会社です。

特殊詐欺の調査や対策に取り組む会社
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トビラシステムズ 明田篤社長
「今回の詐欺のタイプは、劇場型詐欺といわれるもの。実際にお金を振り込んでしまって、現在、被害が非常に増えている状況」

警察官を装った男が合わせて4人
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 “劇場型”といわれる詐欺グループで、携帯電話会社のスタッフや、警察官を装った男が合わせて4人、代わる代わる登場します。

中国からの国際電話「86」の表示
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 今年1月、調査会社社員の携帯電話に表示されたのは、中国からの国際電話「86」の表示でした。電話に出ると…。

音声ガイダンス
「お客様がご利用中の携帯電話がすべて2時間後停止させていただきます。ご不明な点がございましたら1番を押してください」

 電話口に出たのは、携帯電話会社のカスタマーセンター「ヒラモト」と名乗る男。

「ヒラモト」と名乗る男
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携帯電話会社 カスタマーセンター ヒラモト
「この番号から迷惑メールの送信、また被害の通報といったものを受けていまして。もしかすると、携帯電話の不正利用・不正契約をされている可能性があります。警察のほうに被害届と無関係証明書、こういった書類を発行されたほうが良いかと思うんですよ」

 すると「警察を紹介する」と言って、この後、電話口には福岡県警本部捜査2課「佐藤マサル」と名乗る男が。

「佐藤マサル」と名乗る男
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福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「福岡県警本部、事件ですか?事故ですか?」

詐欺調査会社
「あ、事件です」

福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「無関係証明書と被害届を発行するにあたって、事情聴取を行ってからになります。今回は緊急対応としてお電話での録画・録音での事情聴取を受けてもらうことになりました」

アイコン画像に、福岡県警のシンボルマスコット「ふっけい君」が
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 スマートフォンのビデオ通話アプリに誘導してきます。そのアイコン画像には、福岡県警のシンボルマスコット「ふっけい君」が使われています。

制服警察官のような格好をした「佐藤マサル」の姿
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 ビデオ通話の画面には、制服警察官のような格好をした「佐藤マサル」の姿が…。偽の警察手帳を見せてきます。

福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「今回個人情報の流出から携帯電話の不正契約に至っている事件ですので、警視庁に照会をして終わりにしますので、お電話切らずにお待ちください」

■実在の番号「0110」詐欺電話

警察署で使われている末尾が「0110」の番号
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 実在する警察署の番号を表示させて、詐欺の電話をかける新たな手口も。警察署で使われている末尾が「0110」の番号。詐欺グループが海外の通話アプリを使い、偽造している可能性もあります。

 元警視庁刑事の吉川祐二さんに、詐欺グループの音声や画像を確認してもらうと、数々の矛盾点が…。

元警視庁刑事 吉川祐二さん
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元警視庁刑事 吉川祐二さん
「民間と警察が内線でつながることはあり得ない。まず一つの矛盾点。捜査2課の捜査員が制服姿で帽子もかぶって対応することは考えられない。犯人側の目的としては、警察官であることを明らかに誇張している」

 福岡県警の「佐藤マサル」は、警視庁の「ヤマザキ」と無線を通じて、偽警察官同士の会話を始めます。

無線を通じて、偽警察官同士の会話を始める
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警視庁 ヤマザキ
「こちら警視庁ヤマザキ、緊急連絡になります。福岡県警本部佐藤、応答願います。どうぞ」

福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「こちら佐藤。どうぞ」

警視庁 ヤマザキ
「別件にて捜査中のマネーロンダリング事件に関与あり、大規模なマネーロンダリング事件の口座関与のため、ただちに取り調べを行い調書は検察および警視庁に送信願います。また本事件の捜査を拒否した場合、特別捜査本部が強制捜査をし、逮捕、勾留、口座凍結となります。どうぞ」

福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「了解、以上」
「もしもし?」

詐欺調査会社
「はい」

福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「これ単刀直入にお聞きするんですが、フジイという人物ご存じですか?」

詐欺調査会社
「知りません」

うその話を吹き込む
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 「フジイ」という男が、マネーロンダリングで逮捕され押収されたものの中から、電話口の女性名義の銀行カードと通帳が出てきたと、嘘の話を吹き込みます。

福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「フジイに協力したのではないかと、今みられています」

詐欺調査会社
「はあ」

福岡県警本部 捜査2課 佐藤マサル
「今、事件を水面下で調べている途中ですので、こちら絶対に口外しないでください。捜査をするにあたって金融リストの作成を行います。口座の銀行名を教えてください。おおよそでいいので、入っている金額を伝えてください」

詐欺調査会社
「300万円くらいだったと思います」

 預金額を確認した後、最後に登場したのが、「福岡県警佐藤」の上司だという「オオノ」です。マネーロンダリング事件の捜査の一環として、指定した口座に300万円を振り込むよう要求してきます。

「福岡県警佐藤」の上司だという「オオノ」
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福岡県警本部 上司 オオノ
「悪いお金が流入・流出していないか、紛れ込んでいなかっていうのをお調べさせていただきます。今回、この査察調査でお調べさせていただく金額を一度その専用口座にお預けしていただく必要があります」

「警察からの電話で口座関係や残高の話があったときには、詐欺だと思って」
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元警視庁刑事 吉川祐二さん
「警察がましてや電話でのやりとりの中で口座番号を聞く、また残高を聞くなんてもってのほか、ありえないこと。警察からの電話で口座関係や残高の話があったときには、詐欺だと思ってください。間違いなく詐欺だと思って結構」

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