相互関税90日間停止 トランプ大統領の思惑 「一律3~4万」“現金給付案”与党が検討
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 トランプ関税が一転、停止となるなか、与党内で浮上していた一律4万円程度の現金給付案に影響はあるのでしょうか。

【画像】本当にできるの? 記者解説

■「トランプ関税」“停止” 急転なぜ

トランプ大統領
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トランプ大統領
「どうなるか見ていこう。素晴らしい結果になると思う」

 10日も世界は、この人に振り回されています。一体、何を考えているのでしょうか?

米政治・外交が専門 上智大学 前嶋和弘教授
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米政治・外交が専門
上智大学
前嶋和弘教授

「『これはまずい』と思ったのかもしれない」

 SNSへの投稿があったのは、日本時間10日午前2時すぎのこと。

トランプ大統領のSNS
「私は90日間の相互関税の一時停止と、10%への大幅な引き下げを許可した」

わずか13時間あまりでの方向転換
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 トランプ大統領が「相互関税」の上乗せ分について、「90日間停止する」と表明しました。発動したのは、日本時間9日午後2時すぎ。わずか13時間あまりでの方向転換です。

 日本に広がったのは、安心感。

林官房長官
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林官房長官
「今回の措置については非常に前向きに受け止めている」

日経平均株価
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 日経平均株価は、一時2900円以上値上がりし、史上2番目の上げ幅を記録。証券会社には、朝から買いの注文が殺到しました。

相互関税
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 トランプ大統領のいう相互関税は、各国・地域を対象に一律10%の基本税率を課し、貿易赤字が大きい国などにはさらに税率を上乗せするというもの。

 日本には自動車などを除き、合わせて24%の関税がかけられていました。今回、トランプ大統領は一律10%の税率は維持したうえで、上乗せ分を90日間停止するとしています。

■トランプ大統領 “方針転換”なぜ?

 なぜトランプ大統領は、突然、方針を転換したのでしょうか?その訳について、大統領の周辺は…。

ベッセント財務長官
「私たちのもとには誠意をもって交渉に臨みたいと考えている、ほとんどの同盟国からの反応が殺到している」

「同盟国からの反応が殺到」
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 相互関税を巡り「75か国以上から交渉の申し入れがあり、その個別の交渉に時間がかかるため」と説明しています。

 トランプ大統領自身も…。

トランプ大統領
「(各国との)交渉には臨みたいし、正しくやりたいと思う」

 ただ、専門家はそうは見ていません。

前嶋教授
「“トランプ不況”から“トランプ恐慌”になりそうだという可能性も出てきた。『これは止めないといけない』ということだと思われる」

 トランプ大統領が相互関税を発表して以降、ニューヨークダウ平均株価が大幅に下落するなど、アメリカ国内でも影響は広がっていました。

「現政権はトランプ氏が『黒』と言えば全員『黒』」
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前嶋教授
「『債券市場で長期金利が上がった』『株価も下がった』というところを考えながらいったん停止したということでは。(トランプ氏は)“トランプ恐慌”という言葉が生理的に耐えられないのだと思う。現政権はトランプ氏が『黒』と言えば全員『黒』と言い、『白』と言ってはいけない。最後の最後まで決断が遅くなる。決断の修正も遅くなる」

 今回の決定を受け、ニューヨーク市場ではダウ平均株価が過去最大の上げ幅を記録するなど、主要な株価指数がそろって急上昇。

トランプ大統領
「史上最大の上昇だ。とても良いことではないか」

■対中関税「125%」に “報復応酬”どこまで続く?

 一方で、世界が安堵(あんど)するなか、緊張の続く国が一つだけあります。

トランプ大統領
「中国は倍にしてやった。中国は報復してきたからね」

中国については報復措置
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 トランプ大統領、中国については報復措置を取ったとして、追加関税を125%に引き上げ、即時発行すると発表にしました。

中国で生産 日本カノマックス 村上敏樹専務
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中国で生産
日本カノマックス 村上敏樹専務

「もうここまできてしまうとこれが何百%になっても…どうするんだろうって思いますね」

 影響は、日本の企業にも。

 大阪に本社を置く計測器メーカー。中国の工場で製造する精密機器が主力製品でアメリカにも輸出していますが…。

「商材としては赤字」に…
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村上専務
「当然ながらそれ(125%の関税)をすべて吸収することになれば、商材としては赤字になりますので、価格に転嫁せざるを得ないことがどうしても起きると思う。かなり影響が出ると思う」

 なぜ、トランプ大統領は中国にだけは強硬な姿勢を崩さないのでしょうか?

前嶋教授
「中国に厳しく出ることで支持層は喜ぶ。共和党支持者は中国に対してとても厳しい意見を持っている。トランプ氏が方針転換してるように見えるが、『問題ないんだ』というふうに支持者には説明できる」

 では、報復合戦はどこまで続くのか…。

「取引材料のツールとしての関税」
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前嶋教授
「“自分にぬかずかない(頭を下げない)国には優遇しない”ということは、関税のための関税ではなくて、取引材料のツールとしての関税だったということが分かる。“米中貿易戦争”がどこまでいくか一定程度はあるかと思うが、意外と取引の可能性は出てくると思う」

 中国政府は、アメリカに対し、84%の報復関税を発動しています。

■一律4万円?現金給付案が浮上

 一方、日本国内では長引く物価高に加え、トランプ関税への懸念が広がるなか、自民党からこんな声が聞こえてきました。

自民党幹部
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自民党幹部
「3万円から4万円を国民全員に給付するのも一つの手だ」

 国民一人あたり3万円~4万円程度の現金を給付しようという案が浮上。一方、同じ与党の公明党からは…。

公明党 斉藤代表
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公明党 斉藤代表
「最も効果的な対策は、減税によって家計や企業の負担を直接軽減することだと考えます。減税へとつながらない現金還付だけでは、下支えとして不十分であり、持続的な効果が低いと」

 政府に求めたのは「減税を前提とした現金給付」。つまり、現金給付も減税も両方実施する案です。

 与党内で浮上している現金給付や減税、街の人はどう受けとめているのでしょうか。

3人家族 会社員(30代)
「(Q.一人あたり3万~4万円の現金給付という話は?)びっくりしました。今物価高でお米が高くなっているので、もらえるのはうれしい」
「(Q.もらえるのはうれしい?)家計の足しになるかと。今3人家族なので9万円。もらえたらすごく助かります」
「(Q.どんなものを減税してほしい?)食品とかですね」

2人暮らし 年金生活(80代)
「現金をもらうより消費税安くとか、そういう感じの方がいいような気がします。(’現金を)もらってもすぐパッとなくなるから」
「あんまり物価が高いから3万円じゃ追いつかない」
「(Q.給付されること自体はどうですか?)大丈夫かなと思って」
「(Q.大丈夫かなとは?)だって、そんなにあるの?借金ばかりでしょ、日本って。そんなに配っちゃって…。よく分からないけど、トランプさんあんなだし。どうなるかわからないし」

1人暮らし 年金生活(70代)
「(Q.現金給付案があがっているが?)減税よりはいいでしょうね」
「(Q.どうしてですか?)早いから」
「(Q.スピード感が求められる?)そうですね」
「(Q.現金給付の額が3万~4万円…)それが少ないのよ。少ない。やっぱりインパクトが、10万ないと」
「(Q.3万~4万円はどれくらいでなくなる?)1週間もつかな…。日常的な生活をしているなかでなくなりますよね」

4人家族 保育士(30代)
「(Q.もし現金給付されるとしたら?)もらえないよりはもらえる方がありがたいので、ありがたくいただきます」
「(Q.何に使います?)今は貯金…。受験とか習い事、塾とかでもお金がかかるので」

1人暮らし 年金生活(80代)
「現金給付はなんかバラマキって感じがしてね」
「(Q.どうしてこのタイミングでこの話が出てきたと思います?)なんか参院選の…というふうに私は受け取りました」

街の人は…
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 街では、現金給付でも減税でも「ないよりはマシ」だという声が聞かれました。

■本当にできるの? 記者解説

政治部 与党担当 大石真依子記者
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政治部 与党担当
大石真依子記者

「減税や現金給付の話が出てくる背景には、参院選を控えるなか『何もしないで勝てるわけない』との与党内の危機感があります」
「公明党の代表が減税を訴えたことに対しては、早速、自民党幹部が『どうして減税ができるんだ。好き勝手言い過ぎだ』と苦言。政府高官も『一度減税すると、元に戻すのに相当な政治エネルギーが必要だ』とけん制しています」
「一方、現金給付について公明党内からは『一人10万円くらいでないとインパクトはない』など早くも“積み増し”を求める声が上がっています」
「ただ、財源論は置き去りになっていて、数兆円単位の財源をどこから捻出するかの見通しは立っていません」
「石破総理も周囲に『現金給付は国民に喜ばれるのだろうか』と悩んでいるようです」

 ある政府高官はこう話しています。

ある政府高官は…
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政府高官
「報道が出ると国民みんな期待してしまうから困るよね。与党が求めてはいるけど、政府としては方針としては全く決めてない」

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