“ドル安”望むトランプ氏『マーアラゴ合意』実現性は?日米財務相会談の焦点は為替
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中国の呼びかけにより、国連安全保障理事会の非公式会合が23日、開かれました。
各国が集まった理由は、世界経済にしかけられた“戦争”のためです。

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中国 傅聡国連大使
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中国 傅聡国連大使
「テーマは、一国主義といじめ行為の国際関係への衝撃。特に、最近、アメリカは、さまざまな口実を使い、すべての貿易パートナー国に乱暴な関税を課すことを発表した。各国の正当な権益、WTOの規則に違反し、多国間貿易体制を著しく侵害。世界の経済秩序の安定に打撃を与えている」

アメリカ ティン・ウー 国連政治顧問代理
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アメリカ ティン・ウー 国連政治顧問代理
「本日の会合はパフォーマンスに過ぎず、前提となる中身も説得力もありません。“中国は言っていることと、やっていることが違う”。中国は長きにわたり、一方的で、不公平な貿易慣行でアメリカを含む、世界中の市場経済と労働者に損害を与えてきました」

異例の国連安保理は、多くが米中のやりあいの場になりました。ただ、各国、危機感を持っていることは事実です。

パキスタン代表団
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パキスタン代表団
「発展途上国にとって、維持可能な発展の夢は遠いまま。いまも、不公平かつ不公正、搾取的な貿易と金融制度に脅かされています」

韓国代表団
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韓国代表団
「多国間の貿易制度は、維持可能な発展の基礎を成すものです。韓国は、今後も、多国間主義と国連を支持します」

アメリカが設定した交渉のリミットは、7月8日。

G20の財務大臣・中央銀行総裁会議も、各国がトランプ関税への対応を議論する場となっていました。

加藤勝信財務大臣
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加藤勝信財務大臣
「米国による広範な関税措置の発動は、極めて遺憾である旨を述べたうえで、米国に対し、WTO協定との整合性に深刻な懸念のある関税措置の一刻も早い見直しを求めたところであります。G20の場においても、多くの国が、米国の関税措置に関して言及がありました」

それでも、トランプ大統領に“大幅な方針転換”の動きはなく、新たな関税すらも、ちらつかせるほどです。

ベッセント財務長官と加藤財務大臣
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日本時間25日午前3時から、加藤財務大臣はベッセント財務長官との直接会談に臨みます。焦点は、為替です。

トランプ大統領も、為替に言及していました。

アメリカ トランプ大統領
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アメリカ トランプ大統領
「遺憾ながら暗殺されたが、偉大な安倍総理、シンゾウにも、電話で『円安を放っておくな』と言ってきた。『うちのトラクターが売れなくなるし、観光業にも悪い』と」

ドル安を求めるトランプ政権。その背景にあるのではとされているのが、今月になって、金融市場や、アメリカメディアが言及していた論文です。

マーアラゴ合意
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トランプ大統領の経済ブレーンが書いたもので、フロリダにある別荘の名をとり、『マーアラゴ合意』という通貨協定を提案しています。ドル安にするため、各国に対し、安全保障と引き換えに保有する短期国債を超長期国債と交換することなどを求めています。従わない場合は、関税を課すともしています。

アメリカは、過去にもドル安戦略をとってきていて、再び、世界経済を混乱に突き落とすような転換をするのではと警戒されています。

加藤勝信財務大臣
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加藤勝信財務大臣
「1つは、為替相場は市場によって決まるもの。そして、過度な変動は、経済および金融の安定に対して、悪影響を与える。それをベースにして、今回の協議にもあたりたい」

まもなく日本とアメリカの2国間交渉が始まります。

トランプ大統領の意向
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トランプ大統領は、貿易による赤字を解消したいため、輸出に有利なドル安にしたいのですが、最近の市場の動きを見てもわかるように、為替のコントロールは難しいです。そこで、アメリカの“秘策”ではないかと注目されているのが『マーアラゴ合意』です。

マーアラゴ合意
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正式な“合意”ではなく、トランプ大統領の経済のブレーンが書いた論文の中に、以下のような内容が示されています。
 ●ドル安への誘導
 ●関税の戦略的な活用
 ●安全保障と経済政策の連携など

従来は、別々の“安全保障”と“経済”を一括りにしているのが特徴です。アメリカの軍事力で他国を守る代わりに、経済への協力などを求めるというもので、日本のような友好国にこそ、関わってくる内容になっています。

実現性はあるのでしょうか。

◆トランプ政権1期目の時に貿易交渉を担当した関西学院大学の渋谷和久教授に聞きました。

関西学院大学の渋谷和久教授によると
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渋谷教授は「アメリカでは関税交渉が始まる度に、自動車産業などの労組が、為替について必ず盛り込むよう要求してくる。その声に応えて“為替についても協議していますよ”というポーズを見せる必要がある」と話します。自身が関わった貿易交渉の時も、同じようなことがあったといいます。そのうえで「40年前に主要国が協調してドル安に導いた『プラザ合意』のときとは、為替の取引量や各国の関係性など、状況が大きく変わっている。いまは、各国が協調介入したとしても、為替を操作できる時代ではない」としています。

アメリカ側と日本政府はどう向き合うのでしょうか。

日本側の分析
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現地ワシントンで同行取材している経済部の佐藤美妃記者によりますと、日本側は、トランプ氏は自身の政策や発言によるマーケットの乱高下を強く気にしていると分析していて、“マーケットを安定させる重要性”を強調することが交渉のカードになるとみているということです。

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対中関税引き下げか トランプ大統領軟化 日本に追い風?
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