――将棋の特訓もされたそうですね。どのような練習を?
指導の先生からは1日100回指せば上手くなると教え込まれたので、その言葉を胸に毎日朝起きてボーッとしている時も駒を手にして動かしていました。オンラインで将棋を指してルールを習得したり、オンラインゲームの画面上の譜面を実際の将棋盤に移して指してみたりしました。腕前としては3枚落ち、8枚落ちのハンデ戦ばかりをやっていたのでまったく強くないです(笑)。それに加えて将棋の中継を見たり、対局動画をネットで漁ったりして、これが飛鳥だったらどう動くのだろうかと考えながら、指し方や仕草を観察しました。
――将棋面で苦戦したところはありますか?
特にコマの扱いが難しかったです。自分の駒を相手にぶつける打ち方があったりして、自宅の練習では出来たのに、撮影では掴んだ駒が四方八方に飛んで行ってしまうことも…。それで何度かNGになったことがあって心苦しかったです。演技をしながら指すときは緊張で手が震えないように注意しました。
――将棋の練習を通して意外な才能を開花させたことは?
駒を触りやすくするために、爪を短く切りそろえている棋士の方が多いので、私も撮影中は爪の長さを気にしていました。その中で自分の爪を切る技術の高さに気づいて甘皮処理も上手くなりました。
――視聴者に『MISS KING / ミス・キング』をどのように受け取ってもらいたいですか?
私自身、こんな不幸な役はやったことがないと思うくらい、飛鳥は惨めな思いをし続けます。撮影中はパワーを吸い取られていくような感覚に何度も陥りました。でも飛鳥は将棋と再び向き合って、将棋の世界に飛び込むことで逆境に立ち向かっていきます。元棋士の藤堂(藤木直人さん)とバディを組み、藤堂の恋人・礼子(倉科カナさん)の癒しに触れながら、将棋を通して心を開いていく。視聴者の皆さんには、好きなものにのめり込み成長し変化していく飛鳥の姿から勇気を感じ取ってもらいたいです。生きていると嫌なことやみじめな思いをすることは誰にでもあります。そんな時に背中を押してくれるドラマです。
取材・文:石井隼人
写真:You Ishii



