「我慢して当然」な日本の状況に内田氏が指摘

妊娠中のつわり経験者「84.7%」
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 雪印ビーンスターク株式会社が行った妊娠を経験した人を対象にしたアンケートでは、84.7%がつわりを経験していることがわかった。内田氏はこのデータを以下のように分析する。

「9割近くの妊婦さんたちが苦しい思いをしているのに、なぜつわりの原因や治療法が未だに確立されず、研究や臨床の面で遅れをとっているのか。それは長い医学の歴史の中で、臨床の研究も指揮を執ってきたのはずっと男性だったため、女性特有の身体的な負担や苦しみに関しては研究費がつかなかったり、優先的に扱われることが少なかったり、総じて分野が遅れていることが現状である。少しずつ変わってきてはいるが、つわりに関してもここから研究が進んでほしいと心から思う」(内田舞氏、以下同)

 つわりに関する研究などは進んでいるとはいうものの…。

「何が妊婦さんにとって安全か安全じゃないかということも研究はどんどん進んできている。しかし同時に、医療介入が必要だとはわかっていても、赤ちゃんや妊娠にとって大丈夫なのかと恐怖・不安を感じてしまうものだ。こういう時には、医療介入をした場合のリスクに目が向いてしまいがちだが、医療介入しなかった場合も実はリスクが伴う。つわりが酷くて嘔吐が続いた場合に脱水症状が出てしまったり、栄養失調になってしまったりした場合、妊娠そして赤ちゃんに悪影響を与えることは大いにあるため、そのリスクも忘れてはいけない。こういった研究もどんどん進んではいる」

 また同社のアンケートで、つわりが出た場合に75.1%の人が「受診をしなかった」と答えた。その主な理由として、「生活や仕事にやや支障が出たが我慢できた」、「我慢すればいいと思った」という回答が得られた。我慢する人が多い日本の現状を、内田氏は以下のように語る。

「負担が少なく我慢できればそれで良いため、何もかも治療が必要だというわけではないと思うが、特に日本ではつわりだけではなく生理痛や生理周期に合わせた抑うつ症状、気分のアップダウン、妊娠中の痛み、不眠、さらに痛なども、女性の生殖に関わることは全て『辛いことを我慢して当然』という考えがやや蔓延してしまっているのではないかと思う。『我慢して当然』に関しては『全然そんなことないよ』というメッセージを伝えたいし、つわりに関しても万全とは言えないが軽減するような治療法はあるし、妊娠中の痛みや不眠などにも安全に使える薬はたくさんあるため、もっと広く知られてほしいと思う」

(『わたしとニュース』より)

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