この依頼を受け、松井ケムリ探偵が調査を開始した。依頼者の三男は実力があり、昨年には県大会の4年生以下の部で3位になった有望選手である。しかし、昨年(県大会)では声が出ていなかったために「逆胴」という技が認められなかった過去があり、これが依頼の大きなきっかけとなっていた。三男は「声を出そうとすると、のどが圧迫される感じがする」と自己分析していた。
そこで、声の専門家であるボイストレーナーの先生に協力を依頼した。先生はアメリカのバークリー音楽大学を卒業し、講師歴32年、担当生徒は5000人以上の実績を持つプロフェッショナルである。
先生の指導は、独特な発声法から始まった。まず姿勢を正し、リズミカルに体を揺らしながら声の出し方を体感する特訓を実施。先生は、声は体全体が「浮いて落ちる瞬間」に出始めると説明した。続いて、「お馬パカパカエクセサイズ」など独特なトレーニングを重ねた。特訓を続けるうち、三男の声は徐々に大きくなっていった。
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