
実は特殊詐欺事件は12月が件数、被害額ともに1年で最も多くなっているんです。なぜ12月に被害が増えるのでしょうか。
緊迫やりとり 被害者明かす
実際の音声
「民事訴訟ね、弁護士探さないといけないんですよ。非常に大きな問題なので」
「私はあなたの味方ですので、大丈夫ですよ」
1000万円もの巨額の金を要求する、特殊詐欺。その被害者となったのは…。
妙慶院 住職 加用雅信さん
「広島の妙慶院という寺で住職をつとめる加用雅信です」
「周囲からは私(住職)が詐欺に引っかかると思わなかったといわれる」
住職が記録したのは実際の音声と3枚の証拠写真です。
「(当時)詐欺だと思ったわけではなく…自分の記録として残そうと思った」
実は、特殊詐欺の件数が倍増する12月。犯人からお金を守るための対策を探ります。
「そもそもは小林と名乗る京都府警の刑事から電話がかかってきた」
発端は先月12日。京都府警の「小林」を名乗る男からの電話でした。
小林を名乗る男
「特殊詐欺事件の容疑者として逮捕状が出ている」
「あなたの口座がマネーロンダリングに使われている」
身に覚えのない事件の“容疑者だ”と言われた住職は…。
「口座が詐欺に使われて、私に容疑がかかっていると言われて動揺したのが一番」
その後、やりとりは電話からビデオ通話に移行。警察や検事に扮した人物の顔を見ながら話すことに…。
検事をかたる男
「このままだとあなたは逮捕されることになる」
「潔白を証明するため、あなたにお金が渡っていないことを確認したい」
ここで、“犯人がついた嘘”を整理します。犯人らは、まず住職の口座に犯罪に関わったお金が入っていることから、「逮捕されるかも」と脅しました。そして、潔白を証明するために、口座のお金を調べるという理由で指定の口座に振り込むよう誘導したのです。その後、住職は録音をスタートします。
加用さん
「(銀行の)窓口に行ってどのようにすればいい?」
検事をかたる男
「私いろいろ考えましたが、お寺の修繕費を宮大工にお支払いするという形に」
加用さん
「これを全部振り込みで出すと。私から」
検事をかたる男
「1000万円ですね、 1000万円で構いません」
犯人側は、銀行の窓口で現金1000万円を「お寺の修繕費」として引き出すよう指示。ただ、このあたりで住職は疑念を抱き始めます。
加用さん
「この方が検察にいるか確認したい。身分証が本物かの判別がつかないので」
検事をかたる男
「そう言われましても…。容疑者が取り調べ中に何か確認したいといっても基本的にできない」
従わなければ逮捕する、という脅しは続きましたが…。
加用さん
「ちょっといったん電話を切らせて」
検事をかたる男
「いったん電話を切る?なぜでしょうか?」
加用さん
「弁護士を間に通させてください」
大金を振り込みかけていた住職が、踏みとどまることができた理由は?
「(やりとりと)並行しながら知り合いの弁護士にどうすればいいか確認した。それはおかしい(詐欺)と言われた」
ここで、ようやく詐欺電話だったと発覚。その後、相談をした本物の警察官から言われたことが…。
「電話で逮捕令状を見せることはない。冷静に言われるとその通りだが、動揺している時にそれが思いつくか、思い出せるかが大きい」
特殊詐欺 なぜ12月に急増?
ニセの警察官が登場する特殊詐欺の被害額は今年、およそ750億円に上り、全体の7割近くを占めます。さらに、街で聞いてみると…。
60代
「『料金が滞納しているので、すぐに手配しないと電話が止まる』留守電はしょっちゅう入っている。無視して何もしないようにしている」
60代
「税関から電話がかかってくる。成田か羽田か分からないけど、いくら払って下さいみたいな」
手を変え品を変え、身近に迫る「特殊詐欺」。しかも、去年の認知件数がもっとも多かったのは12月で、1月と比べると2倍以上に。 今年に入り一時下がりましたが、上昇傾向が継続。今月はさらに件数が増える可能性もありそうです。
セコム IS研究所研究員
濱田宏彰さん
「(12月は)慌ただしい時期になる。いわゆるボーナスの時期であったり、『年末旅行に行くのにお金を準備しておこう』もあり、そのお金を特殊詐欺犯に狙われる」
12月に増える詐欺から、どう身を守ればいいのでしょうか?
「『医療費の還付がありますよ』『税金が年末で還付がありますよ』という手口は非常に考えられる。年末、特に注意していただく一つの手口かもしれない」
さらに、今増えている「ニセ警察官対策」にも使えるのが…。
「まず電話で来るものに対しては、留守番電話を設定していきなり取らない。相手との話をしなくて済むので留守電を十分に活用するのが大事」
