
政府が物価高対策で自治体に活用を促す「おこめ券」を巡って9日、鈴木憲和農水大臣が国会や記者会見で「業界への利益誘導ではないか」などと追及されました。鈴木大臣は否定しています。
【画像】鈴木農水大臣の地元・山形ではおこめ券配布する? 35市町村を調査
おこめ券配布に批判集中
区が独自におこめ券を配布している東京・台東区のディスカウントストアでは、9日もおこめ券を利用し買い物する人の姿がありました。
買い物客
「安くなるんだったら全然(コメを)買いたい。(おこめ券が)ほしいですね」
おコメをお得に買えるはずのおこめ券。しかし、政府が提唱する“おこめ券の配布”には批判が集中しています。
記者
「おこめ券の発行が結果的に、コメ価格を下支えすることになるということは、これまで大臣が主張してきた『国がコメ価格には関与しない』という考えと矛盾しないのか」
鈴木大臣
「コメの値段どうこうが、それ(おこめ券)によって何か影響したいとか、そういうことは一切ございません」
さらに…。
記者
「業界団体のための利益誘導政策で国民の生活第一とは言えないのではないか」
鈴木大臣
「何度も申し上げておりますが、私が利益誘導を何かするということは一切ありません」
おこめ券の発行をしているのは、「JA全農」と米穀卸売業者で組織する「全米販」の2団体。おこめ券の中には、発行元への利益も含まれているため“利益誘導”ではないかという指摘が出ています。
鈴木大臣
「私がJAグループに何か利益誘導するということは全くありません。また今回の重点支援交付金のやり方についても、私自身よく事務方の皆さんと議論をしたうえで、このような打ち出しになっているということは、ご理解をいただければありがたいと思います」
誰が発案? 鈴木大臣「こだわっていない」
また“政策の発案”については次のように答えました。
記者
「(おこめ券は)『大臣独自の発案だろう』というのは事実?」
鈴木大臣
「これはしっかりとみんなで議論をした結果だというふうに考えております」
記者
「最初は大臣の発案だった?」
鈴木大臣
「まさに事務方のみなさんと議論をしっかりとした結果です」
“事務方と議論をした”と繰り返した鈴木大臣。しかし…。
10月の就任会見では、すでにおこめ券というワードが登場していました。
鈴木大臣
「今の(コメの)価格だと買えない方に対応することができるとすれば、今は物価高対策の中で『おこめ券』も含めておコメクーポンも含めて対応するのが、今すぐにできることだと思います」
さらに就任の翌週、番組に生出演した時も。
鈴木大臣
「私が提案もしている、そして高市総理からもご指示のあった、まさに物価高対策ってこの中でやっていくべきことなのかなというふうに考えています」
玉川徹氏
「それはいわゆるおこめ券ってやつですか」
鈴木大臣
「おこめ券も含めてそういうことだと思います。私自身なぜ前からおこめ券というのにこだわっているかというと、いろんな取り組みがそれをやることによっておコメを買えるようになるということだけではなくて、本当に困っている人にどのように手当てができるかということに私は行き着くというふうに思います」
9日の国会で、物価高対策について問われた高市早苗総理大臣はこう答えました。
「自治体によっては、それはクーポンかもしれない、電子マネーのポイントかもしれない、そしてまた農水大臣が大好きな『おこめ券』かもしれない。いろんなやり方があるかもしれませんが、それぞれの地域の実情に応じて取り組んでいただけるようにと、私どもは私どもの考え方で予算をつくらせていただきました」
また野党議員からも。
立憲民主党 山岡達丸議員
「おこめ券に関してなんですけど、不可解なのは非常にそこにこだわる姿勢をみせているということ」
鈴木大臣
「私が何かおコメだけにこだわっているわけでは全くないということを、この場で正式に申し上げさせていただく。食料品の物価高騰に対する支援にあたっても、いわゆる『おこめ券』の配布だけではなく、電子クーポン、プレミアム商品券、地域ポイント、食料品の現物給付など、各自治体においてできるだけ負担感が少なく速やかな実施が図られる方法を選択し進められることを期待している」
おこめ券見送り続出「重要ではない」
自治体では“おこめ券離れ”が加速しています。
長野市 荻原健司市長
「必ずしも『おこめ券』にこだわる必要はないのではないか。おコメも含むさまざまな物をお買い物いただけるような形がいいのかなと考えておりまして。私の選択肢の中では『おこめ券』は重要ポイントではないというふうに考えております」
長野市の荻原市長はコメに限定せず、市民が望むものを購入できる形にすることが望ましいとの考えを示しました。
福岡市の高島宗一郎市長は苦言を呈しました。
「500円を配るのに(経費が)1割以上、60円。そこのコストに対しては国として問題意識をぜひ持っていただきたいなと思います」
福岡市は、おこめ券は配布せず、一般家庭用の下水道料金について2カ月分の基本使用料と従量使用料を無料に。さらに、市内全域で使える20%のプレミアム付き商品券を発行するとしています。
山形の35市町村を調査 配布明言はゼロ
広がる“おこめ券離れ”。
鈴木大臣のおひざ元、山形県では配布されるのか、番組は独自に調査。県内の35市町村に聞き取りを実施しました。
35市町村のうち、31市町村が配布するかどうかを「検討中」だといいます。
そのうちの1つ、県内中央部に位置する大江町の職員はこうコメントしました。
「大江町は農家が多い土地柄なので、農家から直接おコメを買うことも多い。今のところ消極的な検討といった段階になると思う」
コメどころならではの理由で、配布に消極的だといいます。さらに…。
「私自身、役場の仕事をしているが、『おこめ券』という存在を初めて知った。町民でも知らない人は少なからずいると思う。周知の方法も難しいため、スムーズに住民の方に届けられるかも含めて懐疑的な部分がある」
残りの4市町村は「配布しない」方針。現時点で「おこめ券」を配布することを決めた市町村はゼロという結果になりました。
県北東部にある人口およそ6000人の大石田町では…。
「物価高はおコメだけではない。広い支援を行いたいので、おコメ以外の物も購入できる商品券の配布を検討している」
記者からの「おこめ券の発行が、現在のコメ価格を下支えすることになるのでは?」という質問に対し、鈴木大臣は「現状、なかなかコメの値段がお手頃なものがないということで買いたいだけ買えないというお声がある。そこに対してしっかりと応えていきたい。コメの値段に何か影響を与えたいとか、そういうことは一切ございません」と答えました。
また、「親密な関係のJAを救済するための利益誘導策では?」という質問に対しては、「私がJAグループに何か利益誘導するということは全くありません」と答えました。
番組の取材に対し、JA全農は「そのようなご指摘は当たらず事実無根です」と答えました。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年12月10日放送分より)
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