反日感情高まりは?中国在住日本人に広がる不安 「街中で日本語控える」

中国では13日、反日感情が高まるとされる「南京事件」の日を迎え、大規模な追悼式典も開かれました。関係改善の兆しが見えないなか、影響は、現地で暮らす日本人の間にも広がっています。(12月13日OA「サタデーステーション」)

「南京事件」88年 追悼式典で日本批判

中国、南京市。13日は、もっとも反日感情が高まるとされる日です。

ANN上海支局 尾崎文康記者(13日 中国・南京市)
「いま、クラクションが鳴り始めました。この時間、南京市内では追悼の気持ちを込めて車のクラクションが街中に鳴り響いています」

街の各地に、黙とうする人々の姿がありました。多くの中国人が旧日本軍に殺害されたとされる「南京事件」から88年となり、中国政府主催の追悼式典が行われました。国民の声は…

中国の中学生
「私たちは国家の屈辱を決して忘れず、強さを求めて努力しなければならない」

そして、演説の中では、日本を批判する場面も。

中国共産党 石泰峰中央組織部部長(13日 中国・南京市)
「軍国主義を復活させ、戦後の国際秩序に挑発し、世界の平和と安定を損なおうとするいかなる試みも、世界の平和を愛し、正義を重んじるすべての人々に受け入れられることはなく、失敗に終わる運命にある」

狙いは?中ロ爆撃機“東京方面”に

対日圧力は、軍事分野にも広がっています。防衛省は、中国の空母「遼寧」が、12日までに太平洋沖で戦闘機などの発着訓練を約260回実施したと明らかにしました。

また、9日には中国とロシアの爆撃機などが共同飛行しましたが、そのルートが異例だったことがわかりました。沖縄本島と宮古島の間を抜けた後、北東へ進路を変え日本列島に沿うように四国沖まで飛行した中国とロシアの爆撃機。その先には東京があります。このルートを同時に飛行するのは初めての事です。航空自衛隊の元空将、永岩俊道氏は、中国側の狙いについてこう語ります。

航空自衛隊元空将 永岩俊道氏
「彼らとして重きを置く日米の堅固な同盟体制に対応する答えは何かというと、中ロの作戦レベルの体制、運用レベルが非常に高いレベルで整っているということを示すことが、プレゼンスとして評価できるというふうに認識しているんです。それも南西諸島だけではなくて、次に見据えるのは関東エリア、日本の中心部に対するメッセージ。つまり威圧」

現地在住の日本人に広がる不安

日中で続く緊張は、中国に住む日本人の生活も脅かしていました。私たちが出会ったのは、まさにこれから中国に向かうという日本人の男性。

北京在住の日本人(12日 羽田空港)
「仕事の関係、出張で日本に帰ってきたんです。中国に10年くらい住んでいますけど、今までで一番ドキドキしたというか不安に思っています」

男性に北京で会ってみると、外出する時に気をつけていることがあると言います

北京在住の日本人(13日 北京)
「街中を歩くときにできるだけ日本語を使わないように中国語で会話するようにしています」

実際、トラブルにあった友人もいると言います。

北京在住の日本人
「(友人が)『あなたは日本人か?』とタクシーの運転手に聞かれて、日本人だと答えたら途中で降ろされたというようなことがあったようです」

そうしたことから、日本人が集まる場所にしか行かないなど、行動範囲を限定している人もいるそうです。男性の息子も今後の不安を口にします。

北京在住の日本人「不安はあったりする?」
男性の息子「たぶん日本に帰る」

息子は来年、日本で進学することを検討しているそうです。

北京在住の日本人
「中国人の皆さんも心配なさっているんじゃないですかね。日本と中国はできるだけ良い関係を継続できればいい」

また、別の男性はすでに子どもの生活に影響が出ていると話します。

中国在住の男性
「私の子どもも小学校に通っていますけど、現地校の中国のお子さんたちとの交流もなくなったりとか。娘が習い事に通っているんですけど、そのダンスの会場が借りられないとか。日本人だからっていうのも影響しているというような話も聞いています」

日々の生活に不安を抱えるようになりました。

政府と温度差?中国国民の本音は

ただ、日本文化は根強い人気があるようです。

ANN北京支局 井上桂太朗記者(13日 中国・北京)
「北京市内にあるこちらのお店では、日本アニメのキャラクターのグッズなどが数多く販売されています」

買い物客(13日 中国・北京)
「愛国心はもちろんありますが、自分の趣味なのでやっぱり買ってしまいました。中国製ですし」

日本のアニメや漫画をキッカケとして、ある習い事に励む人が多いと言います。それが…。

日本語教室の先生
「これは特別な発音で、まず、イーハオ(一日)…『ついたち』」
「テストでは、四日と八日はよく出ますよ。皆さんは聞き分けできる?」

南京市にある日本語教室では、変わらず授業が行われていました。こちらの女性は、アニメがキッカケで弓道を始め日本語の勉強をするようになったと言います。

日本語教室に通う生徒(12日 中国・南京市)
「日本に行って段位の高い先生方に連絡を取りたいです。日本と中国両国の弓道の交流を発展させたいと思っています」

日中の関係の悪化後、変化は?

日本語教室の経営者(12日 中国・南京市)
「自分は影響をあまり感じていません。みんなは普段礼儀正しく何かわざわざ挑発しにくることはないです」

生徒の数も変わっていないといいます。

観光地で検証取材  中国人は“激減”

中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけてから、約1カ月。どのくらい中国人観光客が減ったのでしょうか。浅草の抹茶スイーツなどを扱うこちらのお店は8割が外国人観光客だといい、そのうち半分は中国人観光客だったそうです。お店を訪れた外国人50組に出身を聞いたところ…。

「(Qどこから来ましたか?)バンコク。タイ」
「マレーシア」
「台湾。彼の誕生日で誕生日旅行に」
「中国出身です。僕は今アメリカ暮らしなんです」

50組のうち、アメリカやタイ、オーストラリアなどが多く、中国が出身と答えたのは2組でした。

雷一茶 中尾清花統轄店長(13日 東京・浅草)
「個人で来ているお客様はぽつぽつまだいらっしゃっていはいたんですが、そういうお客様も減っている現状ではあります」

大人気だった、アノ聖地に行ってみると。

報告・高橋和ディレクター(13日 神奈川・鎌倉市)
「人気アニメ、スラムダンクの聖地として人気のこちらのスポットは多くの外国人観光客で賑わっています」

外国人観光客(13日 神奈川・鎌倉市)
「アイムフロムマレーシア」
「台湾」

スーツケースを持つグループも。

「(Q出身は?)台湾!」

この場所で2時間取材しましたが、中国本土から来たと答えた観光客はいませんでした。ただ、質問に答えずその場を離れた方はいました。

多いときで1日の買い物客の半数以上が中国人観光客だったというこちらのお店。2時間の取材中、私たちが出会った中国本土からの観光客は1組だけでした。

ともや鎌倉小町店 店員(13日 神奈川・鎌倉市)
「徐々にでしたね。徐々に減ってきた感じではありました。2割くらいには減っているのかなという印象」

中国国営テレビは、12月に計画されていた日本行きの航空便が1900便以上欠航になると報道。影響は拡大するのでしょうか。

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