中国で「南京事件」追悼式典 反日感情の高まり懸念 欧州に接近…狙いは?
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 13日、中国でいわゆる「南京事件」の追悼式典が行われ、共産党幹部は日本を批判しながらも、高市政権を直接名指しすることは避けた。どのような狙いがあるのか?

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「南京事件」から88年

「南京事件」を「国家行事」に
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 「南京事件」の追悼式典が行われる日は、反日ムードが高まる日だと言われている。日中戦争中の1937年12月13日、旧日本軍が多くの中国人を殺害したとされる、いわゆる「南京事件」だが、中国では12月13日、犠牲者を追悼する式典を毎年開催している。

 この追悼式典は、もともと江蘇省や南京市が中心となって開く行事だったが、2014年、習近平国家主席がこの日を「国家哀悼日」に制定し、式典を国家レベルの行事に引き上げた。習主席はこの2014年と、事件から80年の節目である2017年に出席している。

反日感情は高まるのか?
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 中国では、「南京事件」の日を前に反日感情の高まりが懸念されていた。

 朝日新聞によると、7月に公開された映画「南京写真館」が興行収入で日本円にして640億円を超える大ヒットを記録しており、AFP通信によると、この映画は旧日本軍によって悲惨な目に遭う南京市民を描いており、香港メディア、サウスチャイナ・モーニング・ポストは「まるで反日感情をあおるために仕組まれたかのようだ」と紹介した。

 また「南京事件」追悼式典の当日には、中国軍で台湾海峡などを管轄する東部戦区の司令部はSNSに「血に染まった剣を常に高く掲げ、汚れた首を断ち切り、軍国主義の復活を許さず、歴史の悲劇を決して繰り返さない」とのコメントとともに、南京事件を扱う記念館のモニュメントの写真や刺激的なイラストが描かれたポスターの画像を投稿した。

追悼式典「名指し批判なし」

 レーダー照射問題など日中の緊張が高まるなか、南京事件から88年の13日、追悼式典が開かれた。

追悼式典には約8000人が参加
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 追悼式典にはおよそ8000人が参加し、今年は「抗日戦争勝利80年」となる記念の年であったが、習近平国家主席ら最高指導部7人は出席しなかったという。

 また、この式典の前後は反日感情が高まる日ともいわれ、AFP通信によると2018年には香港の日本総領事館前で抗議デモがあったが、今年は大規模デモなどは確認されていない。

高市政権を名指しで批判することはなかった
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 さらに式典で演説を行った中国共産党の石泰峰中央組織部長は「軍国主義を復活させ、戦後の国際秩序に挑戦し、世界の平和と安定を損なおうとするいかなる試みも失敗に終わる」と、高市総理の台湾有事発言を念頭に、日本への警戒感をあらわにしたが、高市政権を名指しで批判することはなかった。

 これは中国国内の反日ムードが高まりすぎないよう配慮した可能性もあるという。

中国が欧州接近…狙いは?

 そんな中国が今ヨーロッパに接近しており、そこには日本を孤立させる狙いもあるのでは?との報道もある。

中国はヨーロッパ諸国と関係強化
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 中国はヨーロッパ諸国と関係を強めている。4日、フランスのマクロン大統領が中国を訪れ、習近平国家主席と首脳会談を行った。そこで習主席は台湾問題などを念頭に「中国・フランス両国は歴史の正しい側に断固として立つべきだ」と発言しました。そして中国外務省の発表では、マクロン大統領は「『一つの中国』政策を断固として守る」と応じたという。

 また来月末にはイギリスのスターマー首相が、そして来年春までにはドイツのメルツ首相も中国を訪れる予定だという報道もある。

 さらに中国の王毅外相も各国への働きかけを強めており、ヨーロッパ諸国だけみても3日にはフランスのバロ外相、8日にはドイツのワーデフール外相と相次いで会談している。

 ワーデフール外相との会談では「ドイツと違い、日本は戦後80年がたってもいまだに侵略の歴史を徹底的に反省していない」と話し、ワーデフール外相は日本に言及せず「『一つの中国』政策を堅持する」と答えたといい、中国はヨーロッパを相手に対日批判外交を強めている。

中国を無視できない事情
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 そんな中国を無視できない事情がヨーロッパにはあるという。朝日新聞によると、EUはレアアースで中国に依存しており、EUで2021年に使われたレアアースのうちおよそ98%が中国から輸入したものだった。

 去年のEUの中国からの輸入額は日本円にしておよそ95兆円に上り、EUにとって中国は輸入における最大の貿易相手国となっている。

 こうした状況についてドイツの国際放送局「ドイチェ・ヴェレ」は「EUが対中経済依存の『デリスキング(関係を維持しつつ依存を避けリスクを減らす)』戦略を提唱して2年半が経過したものの、実際には依存度が減るどころかさらに深刻化している」と指摘している。

「台湾有事」発言 答弁書に記載なし

 こうしたなか、台湾を巡る高市総理の答弁について新たなことが分かった。野党は改めて批判を強めている。

「存立危機事態になり得る」という記載はなかった
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 高市総理の台湾有事に関する答弁について内閣官房の答弁資料には、「存立危機事態になり得る」という記載がなく、「台湾有事という仮定の質問に答えることは差し控える」とあった。高市総理が実際にした答弁がなかったと分かった。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月15日放送分より)

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