バス運転手の不足が深刻な問題になっています。「住みたい街ランキング」トップの東京・吉祥寺の駅前のバス停では、減便・運休の影響でバスに乗れずに学校に間に合わないという子どもも出ているということです。
【画像】朝の通勤通学ラッシュ 吉祥寺駅構内まで続く“バス待ち”長蛇の列
続く減便 大行列も
閑静な住宅街と駅前のにぎわいが同居する街・吉祥寺。渋谷や新宿などに電車一本でアクセスでき、街の中は「バス王国」とも言えるほど路線網が発達しています。
自然も多く、生活がしやすい魅力的な街として今年の住みたい街ランキングでは堂々の第1位に。そんな誰もが憧れる吉祥寺で今、ある異変が起きていました。
吉祥寺や三鷹などのバス事業を担う関東バスは、去年12月から大幅な運休・減便を実施。現在は24系統に影響が出ています。
バスの利用者
「通勤の時間が早く出ないといけないとかあるので、自分も結構困ります」
突然の減便に困惑する住民。日常生活にも影響が出ています。それが「朝の通勤通学ラッシュで大行列」です。
早朝の吉祥寺駅前では多くの小学生が次々とバスに乗車していきますが、次第に…。行列は駅構内にも続いています。
関東バスの誘導員
「並んでて。また入ってくるからバス」
バスの中はぎゅうぎゅう状態ですが、行列はまだ解消されません。
学校関係者
「（Q.行列はまだ続きますか？）きょうはでも中高生が来ないから、まだいい。中高生が来たら、またバーッと並ぶ。きょうはテストか何か分からないけど、来ていない」
中高生がいなくても、次のバスに全員乗り切ることができません。3台ほどバスが発車していったのですが、まだ小学生たちの列は残っています。
学校関係者
「一番混む時間に減便したから大変」
近くの小学校では子どもたちの安全などを考え、減便以降、高学年の児童は徒歩通学を勧めています。
別の日の同じ時間、2つ先のバス停では…。
バスの利用者
「バスが満員になって乗れないことが」
「（Q.このバスですか？）そうですね」
「（Q.乗れますか？）あ、いや、これ…乗れ…乗れない…乗ります」
日によってはバスに乗れず、30分ほど待つこともあるといいます。
高齢者の通院 生活に影響
バスの減便による影響は他にもあります。「駅へのバスが運休」です。
バスの利用者
「急に減ってしまって、吉祥寺行きもなくなってしまったので、つらい」
バスの利用者（89）
「バス停まで歩いて…大変よ。一生懸命、ヨチヨチ歩きよ」
吉祥寺駅からおよそ2キロ離れた閑静な住宅街。大きな公園や学校などもある人気の地域ですが、武蔵野市役所前の通りは吉祥寺駅行の直通便が運休になりました。
さらに、近くの都営マンションのすぐ目の前にあるバス停には貼り紙が貼られていて、三鷹駅まで出ていたバスが来年1月まで運休と書かれています。
バスの利用者（80代）
「急になくなったからね、去年」
都営マンションで暮らす80代の女性。運休前は自宅を出てすぐのバス停から、吉祥寺の隣駅・三鷹までの直通便をよく利用していました。
「足が悪くて歩きにくいから（バスに）乗った方がいい」
女性は通院などで週に2～3回バスを利用。生活には必要不可欠だといい、自宅から離れたバス停へ向かいます。
「そこが三鷹行き。やっぱり私はゆっくり歩いているから、（自宅から）10分ぐらいかかります」
利用者数が多くいるにもかかわらず、なぜ減便するのでしょうか？それは「運転手不足」です。
去年12月、3カ月という期限付きで運休をしましたが、関東バスは先月、5度目の期間延長を発表しました。
減便となっているダイヤには、手書きでバツ印が書かれています。
当初、時刻表は臨時で対応。しかし、運転手確保のめどが立たないのか、先月までに運休中の路線の欄が削除されていました。
さらに、来年1月から新たに1路線でバスが運休となることも決定しました。
都内全域で運転手が不足
深刻な運転手不足によるバスの減便は、吉祥寺だけではなく都内全域でも。新宿など利用者の多い駅発着の都営バスでも、大幅な減便が行われています。
都営バスの利用者（80代）
「ちょっと不便ね。一本乗り遅れたら、30分～1時間待たされちゃう」
一日の利用者数60万人を超える都営バスは、10月のダイヤ改正で19路線が減便しています。
東京都交通局
「都営バスでは路線の一部の運行を受託している株式会社はとバスの乗務員不足により、減便を含むダイヤ改正を実施いたします」
運転手不足の背景には…
なぜ人口も多くバス需要の高い大都市でも、減便せざるを得ないほどの状況に追い込まれているのでしょうか？
東京都市大学 都市生活学部 西山敏樹教授
「（バスを運転できる）大型二種免許は、運転免許の最高峰と言われている。それなのに評価（給料）が低い」
バス運転手は全産業と比べ、平均労働時間がおよそ1割長いのですが、年収は1割ほど低い461万円です。
そのため、西山教授によると若手から中堅の運転手が将来に不安を感じ、職を変えていくことで運転手不足が加速しているといいます。
東京や埼玉の路線を持つ国際興業バスでは、今年4月のダイヤ改正で100便以上が減便しています。
国際興業バス 運輸事業部 鈴木健史部長
「働きやすい仕事にして『バスの運転手をやるぞ』という人を確保しなければいけませんので、待遇を改善したり門戸を広げる」
バス運転体験 初挑戦の大学生
運転手の魅力を知ってもらい、担い手を増やそうと乗り出した対策。それは「運転体験」です。
大型二種免許を持っていない人でも営業所の敷地内でバスの前進と後退を体験できる「バス運転手体験ツアー」を開催しています。
教官
「ちょっとだけ右にハンドル切りましょう」
参加者
「はい」
教官
「ブレーキ踏みます。止まりますよ」
参加者
「はい」
教官
「OKです」
参加者
「はい」
運転体験ツアーに参加した大学3年生はこう話します。
「（車と）大きさが全然違って、ハンドルの長さからすべてが新鮮でした。きょう運転してみて、今までより（バスの運転に）興味が出てきた」
人手不足解消へ 新たな取り組み
参加者の中には女性の姿もありました。
運転体験ツアーに参加（50代）
「かなり久しぶりです。こういう大きいのは教習所ぶり」
女性は8年前、バスの運転に必要な大型二種免許を取得。その後、渋谷周辺で運転手として勤務していましたが、結婚を機に退職したといいます。
「住んでいる地域でもバスが減便されていたり、バスの運転手不足をすごく耳にして、自分も少しでも地域の役に立てたら」
相次ぐバスの減便報道を見て、運転手の復帰を目指すようになったという女性。教官の指導を受けながら、車庫をグルッと一周します。
「（Q.久しぶりの運転はどうでしたか？）緊張しまくりで難しいです。実際に体験してみて、会社の雰囲気とか、そういうところが知れて良かった」
鈴木部長
「実際にバスを動かしている営業所、バスが動いている現場、そして最終的には自分でバスを動かすという体験を通じて広く皆様に知って頂いて、多くご応募いただきたい」
（「羽鳥慎一モーニングショー」2025年12月19日放送分より）
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