年の瀬の市街地に急増 “冬眠法”知らない子グマが徘徊
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 年の瀬も相次ぐクマの出没。特に今年は冬眠の仕方を知らない子グマが街を徘徊(はいかい)するケースが増えていると、専門家は警鐘を鳴らしています。

【画像】7日連続で目撃された子グマ なぜ?市街地徘徊のクマ増加

師走の市街地に子グマ出没

雪の上を駆け抜けるクマ
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 冬眠の時期になっても市街地に現れるクマ。

 長野県で雪の上を駆け抜けるクマを防犯カメラが捉えていました。

 今月4日午前6時半ごろ、雪かきをする人が画面左側に移動した時に、目の前からクマが現れます。クマは猛スピードで住宅が建ち並ぶほうへ去っていきました。

除雪しているところにクマ出没
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防犯カメラの所有者
「隣の家の人が玄関先を除雪しているところに、たまたまクマが出てきた。一緒に除雪をしていた息子が『クマ、クマ、クマ』と声を出したら、(クマが)向きを変えて息子のほうに向かってきた。雪を除雪する道具でガードしたらクマがよけていった。信じられない。『こんな所に出ちゃったんだ』。『まさか』という感じ。居住区、村内の真ん中なので、クマが入ってくる場所では今まではなかった」

連日キウイを“物色”

 12月に入ってからもクマの出没が絶えません。特に市街地で目撃されているのが「子グマ」です。

子グマ
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 18日は、福島県北塩原村で、役場近くの住宅の柿の木に体長およそ50センチの子グマが7時間にわたり居座った末、捕獲されました。

キウイを食べている子グマ
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 同じ場所に毎日やってくる子グマも。秋田県の住宅の近くで、木にのぼる子グマを近隣住民が何度も撮影していました。

 16日午後2時ごろ、よく見ると、子グマがキウイを食べているのが分かります。

 この日は午前8時、正午、午後2時に同一とみられる子グマが3回、現れています。

近隣住民
「いくら子グマだとしても見るほうにしてみれば、すごく怖い。いつこっちに来るかと思えば」

 近隣住民が7日連続で子グマを目撃しています。クマを捕獲するための「箱わな」が設置されました。

「もしやるとすれば麻酔銃を撃って駆除すると(職員が言っていた)」

麻酔銃
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 柿の木などにのぼっているクマを捕獲するために使われているのが、麻酔銃です。ただ、体が小さい子グマに麻酔銃を当てるのは容易ではないといいます。

 13日、新潟県内の柿の木にのぼっていた子グマは「緊急銃猟」により駆除されました。その時に使われたのが、こちらの麻酔銃です。

 緊急銃猟の現場で、実際に麻酔銃を撃った、ハンターの佐藤正さん(73)に話を聞きました。

どの辺りにクマが?
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ハンター歴47年
新潟県猟友会十日町支部 佐藤さん

「ここから狙って撃った」
「(Q.どの辺りにクマが?)大きな太い枝が2本に分かれている。その間くらい」

 映像を確認すると、柿の木の上のほうに体長50センチほどの子グマがのぼっています。こうした場合、散弾銃やライフル銃など、火薬を装填(そうてん)する銃は使えないといいます。

「散弾銃・ライフル銃を使うと跳弾、弾が跳ね返る危険性がある。そういう中では装薬銃(火薬を装填する銃)は使えない」

筒状の弾
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 使用した麻酔銃は、長さが1メートル50センチほどです。筒状の弾は長さが20センチほど。この中に麻酔薬を入れて発射します。

「これだけ大きいもの(弾)を撃つと風の影響も受ける」
「(Q.横風が吹くと?)もうダメ」

 どこに狙いを定めて撃っているのでしょうか?

どこに狙いを定めて撃つ?
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「麻酔(銃)を撃つ場所は尻肩などの筋肉。筋肉に撃たないときかない。移動しているものにピンポイントで撃てるか。それは難しい」

なぜ?市街地徘徊のクマ増加

 今年は、冬眠の時期に市街地で徘徊する子グマが特に増えていると、ベテランハンターは訴えます。

「7割8割が子グマ」
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佐藤さん
「本当に今年は(出没が)異常なくらい異常。今年(麻酔銃で)出動したのは6~7回あるが、11月後半から12月初めに集中している。7割8割が子グマ。県内全域そういう状況」

 なぜ、冬眠の時期に子グマの出没が増えているのでしょうか。

子グマ
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 住宅の柿の木に現れた子グマ。先月下旬、猟友会に所属する男性が撮影しました。辺りに母グマの姿は見当たらなかったといいます。

子グマを目撃 猟友会の男性
「その地域で、その前日に大きいクマが捕獲されたのを猟友会の先輩から聞いたので、多分親グマが捕獲されて1頭でさまよっていたのかなと。私、南魚沼市に住んでいて、今年夏の間、猟友会で南魚沼市全体で100頭は捕獲している」

捕獲されるクマが急増
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 市街地に現れるクマが相次いだ今年。それに伴い、捕獲されるクマが急増していることが背景にあるといいます。

 親をなくした子グマがこの時期になっても「冬眠の仕方を知らずに市街地で徘徊している」と、専門家は警鐘を鳴らしています。

専門家が警鐘
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石川県立大学 大井徹特任教授
「今年の秋から冬にかけて生まれてから約11カ月しか経っていない子グマが、単独で行動しているのがよく見られるようだが、この時期の子グマは通常は母親と一緒に行動している。冬眠する場所については1年半、一緒に活動する母親から学ぶことが多いと考えらえる」

1年半ほど親子で行動
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 冬眠中に出産をするクマは、1年半ほど親子で行動を共にするといいます。

 本来、子グマは1歳の時に母グマと冬眠をするはずが、その前に親とはぐれてしまうことで、冬眠できずにいる恐れが…。

住宅の軒下に入り込む事態も
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 実際に今月、単独で行動していた子グマが住宅の軒下に入り込む事態も起きています。

「先生になる母親がいなくなってしまった状態のクマ。どこならば安心して安全に冬眠できるか分かっていない。そうしたクマの中には人家や倉庫に入り込んで冬眠しようとするクマが出てくる可能性がある」

 今後も住宅などでの出没に注意するよう呼びかけています。

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