柔道・阿部一二三選手(28)。今月行われた国際大会で見事優勝。オリンピックでも見なかったガッツポーズ。実は今年、苦い経験を味わっていたんです。そんななか、新たな試みを行っていた一二三選手を特別に密着しました。

衝撃の一本負け 6年ぶり個人戦敗退

今年7月、アメリカ・ロサンゼルス。3年後の夏のオリンピックの地に一二三選手、詩選手(25)の阿部きょうだいの姿がありました。

詩選手
「初ロサンゼルスです。すごく過ごしやすくて、今のところすごくベリーグッド」

笑顔の妹・詩選手に対して、一二三選手はある決意を持ってここにきていました。

一二三選手
「人生のターニングポイントに絶対なる。この場所を忘れられない場所にしたい、3年後」

実はその1カ月前の世界選手権。まさかの事態が起こっていました。

準々決勝、一二三選手が内股をすかされ、衝撃の一本負け。個人戦6年ぶりとなる敗北を喫していたのです。

一二三選手
「この負けをしっかり生かしてやっていきたい。またここからスタートかな」

3連覇を目指す、次のオリンピック。普段は強気の言動が多い一二三選手が、珍しくこんなことを口にしていました。

一二三選手
「パリ五輪の時よりも年齢は上がるし、体もきつくなってくる。より覚悟を決めてやらないと、五輪3連覇は難しい」

3年後は30歳。柔道家のピークと言われる20代を過ぎての戦いが待ち受けます。日本で行ってきた合宿をロサンゼルスにしたのには、大きな意味がありました。

一二三選手
「3年前から来ていると気持ちも高まるし、その場所にこないと分からないことがある」

なんと3年前から本番の地で、準備を始めていたのです。そもそもアメリカは柔道不毛の地。オリンピックまでに来る機会がないことも予想されました。

「強さを証明のため日々積み上げ」

そこで、今回の合宿では、東京オリンピック前からのサポートスタッフも同行。現地での食事の状態、不自由なくトレーニングできるか、時差による睡眠の影響など細かくチェックします。

これを来年・再来年と続けて、3年後の本番で最高の状態になるように備えます。

一二三選手
「体のコンディショニングより時差が体に影響してくる。そこの合わせ方」

詩選手
「ヨーロッパとは違う。寝られますけど、変な時間に起きる」

生活面に慣れるだけでなく、厳しいトレーニングも欠かしません。長さ210メートル、高低差30メートルの丘を全力で駆け上がります。目標の5本を走り終えてもなお…。

一二三選手
「僕の粘りを見ていてください」

初めて訪れた場所でも、変わらぬ信念で練習に取り組んでいました。

一二三選手
「ここって時の一本が大切。きついところからのもう一本を意識してやっている」

そして今月7日、あの悔しさを晴らす大会・グランドスラム東京がやってきました。

準決勝は大一番。相手は、世界選手権チャンピオンの武岡毅選手(26)。オリンピックへ最大のライバルとなる選手です。

試合は一進一退。規定の4分を終え、延長戦へもつれます。

我慢の時間が続く一二三選手。試合時間は10分を超えても決着がつきません。

12分37秒、激戦を制した一二三選手が復活の優勝を果たしました。

一二三選手
「世界選手権の敗戦を経て、この試合でまた強くなれると感じた。ロサンゼルス五輪に向けて、どういう組み立てをしていくか。阿部一二三の強さを証明していくために、日々積み上げていきたい」

(「報道ステーション」2025年12月19日放送分より)

外部リンク