
この冬相次いでいる柿の木に登るクマ。なぜ冬眠の時期になっても柿に執着するのでしょうか。23日は捕獲の最前線で感じた“異変”です。
“新世代クマ”は柿の木に執着?
今年も残りわずかとなった23日。“異例のパトロール”を行うのは、新潟県猟友会の池田富夫会長(76)です。
「これ、クマの足跡」
畑にクマの足跡がくっきりと。
「間違いない。きのうの足跡」
「大きい」
「ずっと向こうの林に向かっている」
「本来ならば冬眠する時期」
住民から通報があり、22日、足跡を確認したといいます。
「いつもだったらクマは絶対に出ない。まだうろうろしている、この辺に」
足跡の幅から、クマの大きさを推定すると…。
「多分体重70~80キロ。『新世代のクマ』にしてはそんなに大きくない。大きいのは100キロ超す」
「新世代クマ」と呼ばれる、市街地に出没するクマ。今年は、冬眠の時期である12月に入っても、住宅の近くで度々目撃情報が。特に目立つのが、柿を食べるクマです。
「過去にはなかった。(柿を)食べていても夜で、日中居座って食べるクマは、50年も経験があるが今年初めて」
銃を持った猟友会が現場に駆けつけても、クマは人を気にする様子もなく柿を食べ続けています。
ハンター歴56年の池田会長が、今、感じている異変は?
「先週は1頭捕獲したのに、1週間で3頭同じところで捕獲したこともあるので異常。今年みたいに急激に出るのはどうしてか。人間が怖くない。木に登って2時間も3時間も人間が見ていても逃げないクマがいるのは、人間を恐れていない」
クマと最前線で対峙する猟友会が感じた異変。それは、「人を恐れないクマ」が、後を絶たないことです。
猟友会ベテランハンター困惑…
新潟県内では、11月後半から12月にかけて、市街地で柿を食べ続けるクマが、次々と捕獲されています。
なぜ、クマは冬眠せずに柿に執着しているのでしょうか?
池田会長
「あれもクマ棚だよ。クマが自分で木を折って自分が座れるようにして。座布団になっているでしょう」
柿の木には、クマの爪痕が。
「今年(の爪痕)だよ。 黒いのは去年(の爪痕)」
「以前は住宅地にクマがおりてくることはなかった。今年は多い、異常。タヌキでもリスでも、人間が来れば逃げるでしょう。今のクマは逃げない。そういうのがエサがあると、最終的には冬眠しないクマと言われるようになるかもしれない」
そもそも、クマは冬眠に備えて脂肪を蓄える必要があり、秋には、大量のエサを求めて、山を動き回ります。ところが、今年は大きな変化が。今年はブナの実など、山にあるエサが凶作だったため、人里に現れるクマが急増。
10月には、秋の味覚「栗」を食べるクマが、親子で現れることも。11月には、丸々と太ったクマがリンゴ畑に侵入。収穫目前のリンゴ2トン分が食い荒らされていました。
12月に入り、冬眠する時期になっても、各地で柿を食べ続けるクマが相次いでいるワケは?
「(今は)柿しかない。一部ではザクロやキウイを食べているが、この時期になればそれ(柿)しかない」
柿は、冬になっても人里に残っていることが多いといいます。
「柿は種がある。種はドングリと一緒。だから柿の種も食べている。すべてではなく排出もするが、かんだものは栄養になる。それで柿が狙われる。第一線にいる我々はそう感じる。タンパク質をとって冬眠に備えているのでは」
さらに、「クマ」と「柿」を巡っては別の異変も。改めて映像を分析すると、柿を食べているのは、「子グマ」が多いことが分かります。
「冬眠前になると子グマが圧倒的に多い。原因はまだ分からない。11月後半から12月にかけて(新潟県内)捕獲したクマは8割が子グマ」
子グマが徘徊している可能性
市街地でクマの出没が相次いだ秋田県でも、同じような傾向が。秋田県猟友会の佐藤寿男会長(81)が感じた異変は?
「今、後半に出たクマは個体が比較的小さい。親グマはもう冬眠しているかもしれないが、個体の小さいクマが柿の木に来ている」
今年、全国で捕獲されたクマは、過去最多の9765頭に及んでいます。
その数が最も多い秋田県や、比較的多い新潟県では、母グマとはぐれた子グマが冬眠の仕方を知らないまま、徘徊(はいかい)している可能性があるといいます。そのまま、住宅の軒下などで冬眠する恐れもあると、猟友会は警鐘を鳴らしています。
池田会長
「『穴持たずのクマ』。どこでもいいから雪降れば (軒下など)いい所に冬眠する。何かあれば大変なことになる」
