
市街地でのクマの出没が相次ぐなか、クマとの境界はどこにあるのか。専門家が語る異変です。
今年のクマは「異常」
盛岡猟友会 稲葉順一事務局長(68)
「きょうは寒いから厚いの着て、箱わなを見に行きます」
年末でも猟友会の活動は続きます。道が雪で白く染まる中、この日もわなの見回りに行きます。
「1回も来なかった。(箱わなを)仕掛けてから」
「(Q.箱わなは何月まで仕掛ける?)本来は10月末。今年に限っては出没が多いので2カ月延長になった」
実際に10月以降の盛岡市では、雪が舞う中、地面を掘る大きなクマの姿が。時折こちらに顔を向ける場面もあります。
別の場所でも、6日連続で箱わなにクマがかかりました。
「去年は30頭前後。それが普通。(今年は)普通の年の4倍。盛岡市の中心部に出たのを見て『これはかなり異常だな』と感じていた」
「(Q.今年のクマをどう思う?)異常」
人里に近づく理由は人口減?
異常なクマの出没。専門家が感じた異変は?番組はクマの研究を25年間続けている岩手大学農学部・山内貴義准教授の調査に同行させてもらいました。出没情報を細かくチェックしながら進めていきます。
山内准教授が車を止めたこの場所は。盛岡市では10月に市内中心部を流れる中津川の河川敷にクマが現れ、大騒動になりました。
「本当に町のど真ん中、官庁街。 ちょうど8時くらいだったので、本当に通勤通学の時間帯。かなりの人が橋を行ったり来たりしている状況で河川敷にクマが出た。 しかもこういう見晴らしのいいところに出たのでやっぱりかなり驚きました」
「基本的に山から川ってつながっているので、 なので川を通ってきてしまうと、ちょっとびっくりするくらいの街中にいきなり出没する可能性がある」
今回の取材中にも。
「きょう9時58分なので、1時間ちょっと前にクマが出没した場所に向かいます」
盛岡市の住宅街にクマが出没したとの情報が。現場付近は住宅が立ち並び、少し歩くと緑も広がり自然との境界線が分かりにくいようにも感じます。
「“里山”は人間が常に入り込んでまきを取ったり、野生動物がおりて来られない環境だったんですけど、今そこが人口がどんどん少なくなってきている」
人口の減少もクマが人里に近づいている要因の一つだといいます。
クマとの境界線どこ?調査同行
市街地への出没が相次いだ盛岡市。建物のなかにクマが侵入するケースも目立ちました。10月には盛岡市の中心部にある岩手銀行本店にクマが現れ、そのまま地下駐車場に入り込みました。
市の担当者
「地下の駐車場なのでライフル銃の使用が無理です。麻酔捕獲によって不動化する」
その現場に居合わせたこの人に話を聞かせてもらいました。盛岡市動物公園ZOOMOの辻本恒徳園長です。
「これが投薬器です。ここに薬を入れます。こっちは空気を入れます」
辻本園長は、普段動物園で使用する麻酔吹き矢の技術を活用して、市内に現れたクマの対応にあたりました。
先月には、住宅街近くにあるリンゴ園にクマが現れ辻本園長が吹き矢で対応にあたりました。
「鉄砲で対応できる場所はそれで済みますが、 街の中で鉄砲を撃てない場面が多かったから、そういう時には危険性の少ない吹き矢で対応、捕獲をするということがいつもよりとても多かった」
現場で感じた異変もありました。
「吹き矢で狙う時、クマは間合いを詰められて、人に何かされるかもしれないとなると先に威嚇、襲ってくる。(今年は)あまりそういうこともない。それは人への警戒心が低くなっている個体」
相次ぐ出没に専門家は、ヒトとクマの明確な線引きが必要だといいます。電気柵で明確な境界を引いている場所を見ると…。
山内准教授
「外側に電柵を敷いて被害はほとんどない。まだ柿が残っているので」
今後については。
「野生動物の進出を念頭に入れながら地域づくり。住宅地、都市にも野生動物が出てしまうので。野生動物の被害が出ないような街づくりは今までやっていなかった。それも考慮に入れる必要がある」
