
アメリカのトランプ大統領によるベネズエラ攻撃で拘束されていたマドゥロ大統領が、ニューヨークの連邦地方裁判所に出廷しました。
【画像】【報ステ解説】「虎」「革命は復讐」ロドリゲス暫定大統領 本音とベネズエラの未来

アメリカ政府は、大統領とは認めておらず、麻薬テロの共謀、機関銃及び、破壊的装置の所持など、4つの罪で起訴しています。

マドゥロ氏は、本人確認では「私はニコラス・マドゥロ、ベネズエラの大統領だ。私は1月3日から拉致されてここにいる。私は無実だ。まともな人間だ」と主張しました。
傍聴席から「報いを受けろ」と叫ばれたときは、「私は戦争捕虜だ」と答えたそうです。
最短でも2、3年はかかるといわれている裁判の始まりでした。次回の審理は、3月17日の予定です。
トランプ大統領は「自分がベネズエラを統治している」と主張しています。

アメリカ ミラー大統領次席補佐官
「“我々の裏庭”にある国が、敵対勢力と資源や武器を売買して、我々に刃向かうのは許さない。(Q.主権国家としての自由では)モンロー主義とトランプ主義の本質は、国益を守ることだ。(Q.アメリカはベネズエラを“侵略”して、元首を捕まえたわけで)侵略して当然だろう。共産主義の独裁者に、強姦魔、麻薬、武器を送り込ませるわけにいかない」
ベネズエラは、脆弱国家にカテゴライズされていますが、それでも主権はあります。

ベネズエラ モンカダ国連大使
「アメリカの侵略の核心的要素を無視することはできない。ベネズエラが攻撃の犠牲となったのは、天然資源のためである。我が国の石油、エネルギー、戦略的資源、地政学的位置は、歴史的に欲望と外部からの圧力の要因となってきた」
ベネズエラと国境を接するコロンビアの街。ベネズエラ人でにぎわっています。

ベネズエラ人
「(Q.どんな国に変わってほしい)いろいろ意見があるけれど、すべてがよくなってほしい。子どもにとって、明るい未来になればいい」
ベネズエラ人
「(Q.リーダーには誰がいいか)国をよくしてくれる人なら誰でもいい」

ベネズエラの首都・カラカス。5日夜、大統領府の近くでは、ドローンを撃ち落そうとしたのか、銃声が響き渡りました。軍の情報共有に不備があったという話しもありますが、真偽のほどはわかりません。

政情不安の増すベネズエラ。当面の舵取りを任されたのは、副大統領だったデルシー・ロドリゲス氏(56)。実質的には、アメリカが指名したといわれていますが、5日、宣誓式が行われました。立会人は、国会議員でもあるマドゥロ氏の長男、マドゥロ・ゲラ議員。そして、国会議長を務めるロドリゲス氏の兄、ホルヘ・ロドリゲス国会議長でした。

ベネズエラ ロドリゲス暫定大統領
「ベネズエラのすべての政治勢力や、経済格差を越えて前進する。アメリカで人質として、拘束されている2人の英雄、マドゥロ大統領と妻のフローレス氏が、拉致された痛みを抱えています。悲しみのなかにあるが、国民の名において、宣誓することを光栄に思う」
ロドリゲス氏は、マドゥロ氏が大統領の座に就いてから、最側近として、10年以上、独裁政権の中枢を担ってきた人物です。
通信情報相や外相を歴任し、2018年に副大統領に就任。関係悪化の一途をたどったアメリカに対しては、批判の急先鋒たる立場でもありました。

ベネズエラ ロドリゲス副大統領(2019年)
「ベネズエラ国民なら、こう言うでしょう。『ヤンキーは国へ帰れ』です。国内の問題に専念しなさい。ベネズエラの問題に対処する政府は、ここにあるのです」
「彼女は虎だ」。それがマドゥロ大統領の評価でした。

ベネズエラ マドゥロ大統領(2017年)
「国を挙げて感謝します。彼女は“虎”のようにベネズエラの主権、平和、独立を守ったからです」
ロドリゲス氏のバックグラウンドにあるもの。7歳のとき、当時、親米路線だった政権に、社会主義組織の指導者だった父親が逮捕され、獄中で亡くなったことが影響を与えているともいわれています。

ベネズエラ ロドリゲス副大統領(2018年)
「革命は、父の死と処刑者たちへの復讐です。社会主義がいかに人道的であるかを示す機会です」
手腕を発揮したのが、経済の立て直しでした。
ベネズエラは、1999年に誕生したチャベス政権と、それを引き継いだマドゥロ政権下で、深刻な経済危機に陥りました。世界一の埋蔵量を誇り、歳入の柱だった石油の価格が大暴落。これが、5年間で物価が1300倍になるというハイパーインフレを引き起こし、混乱の極みに至ります。


政府が行った対策といえば、節電と称して電気を止めたり、1日を30分縮めたりといったものでした。この状況を変えたのが、2020年、財務相に就任したロドリゲス氏です。

公共支出削減などの政策によってインフレ率が低下し、GDPが改善傾向に。石油産業へ海外の投資を呼び込んだ結果、最低にまで落ち込んでいた原油の生産量も回復に転じました。
この経済手腕が、トランプ政権の目に止まったとアメリカメディアは報じています。

ニューヨーク・タイムズ
「アメリカは、マドゥロ氏の代わりとしての当座の後任候補を、数週間前から決めていた。ロドリゲス副大統領が、カギとなる石油産業の陣頭指揮で、トランプ政権の当局者らを驚かせたからだ」
◆ベネズエラの今後はどうなるのでしょうか。

ベネズエラの政治経済が専門で、実際にベネズエラを訪れ、現地調査をされていたジェトロアジア経済研究所の坂口安紀主任研究員に聞きます。

ベネズエラの暫定大統領に選ばれたロドリゲス氏は、パリ、ロンドンの大学で学び、弁護士資格を持ち、マドゥロ政権で、副大統領、石油相などを務めます。アメリカの軍事作戦を「野蛮な行為」と批判。その後、SNSで「アメリカ政府と手を取る」と態度を一変させました。それでも就任式では「2人の英雄が拉致されたことに心を痛めている」と発言しました。
(Q.ロドリゲス氏の本音をどうみますか)
坂口安紀主任研究員
「彼女としては、拘束劇を目の前にして、ここでアメリカに抵抗してもダメだろうということを現実的に理解している。一方で、彼女自身は、いまの政権を守りたい。マドゥロ氏はいなくなりましたが、それ以外の政権、体制は残っている。それを維持したいと思っていて、国内に向けては、いままでの言動を続けないといけない。けれども、アメリカに向けては『一緒にやっていきます』と二枚舌というか、上手く、その間で立ち回る二つの顔を見せていると思います」
◆なぜ、ベネズエラは凋落していったのか。歴史的にみていきます。

坂口さんによりますと、1999年から反米掲げるチャベス政権が誕生。物の値段や為替レートなど、すべて国が決める“国家介入型経済”にしたといいます。ベネズエラ国内にあったアメリカの石油資本を国有化。当初は、原油高で急速に経済成長しますが、その後、原油価格下落などで産油量が激減します。
2013年から後継者のマドゥロ政権が誕生。チャベス派の政権運営が続き、経済はさらに悪化します。2014年からの7年間でGDP=国内総生産が5分の1に縮小。物価が、1300倍になるハイパーインフレとなります。
(Q.チャベス政権時にベネズエラを訪れていたそうですが、カギとなるのが石油産業の衰退にありそうですね)
坂口安紀主任研究員
「石油産業の衰退と経済政策の失敗の二つがベネズエラ国民を苦しめたということです。石油産業に関しては、90年代までは優秀な石油のプロフェッショナル、経営者が多くいました。彼らは、石油産業において、継続的なメンテナンス投資が必要である。それをしないと生産性が落ちていくことを訴えたわけですが、できる限り政府に資金を取り込みたいチャベス大統領は、投資を言い訳に政府はお金を出さないとして、それらの優秀な経営者たちを追い出してしまった。そのような、国営石油会社の経営をポリティサイズしたこと、チャベス派の人しかつけないとか、資源ナショナリズムを色濃く反映させ、その結果、経済合理性のない石油政策をとったことで、産油量がどんどん落ちて、チャベス政権前と比べて、一時期は10分の1、現在でもちょっと戻して、それでも3分の1まで縮小させてしまったということです」
(Q.キューバとの関係の深さが取りざたされていますね)
坂口安紀主任研究員
「キューバのフィデル・カストロ氏は、前任者のチャベス大統領にとっては、メンター、アドバイザーのような存在で、非常に頼っていました。その代わりに、キューバは資源がありませんし、経済的に困窮していたので、キューバに対して、ベネズエラが石油を送る協定を結び、キューバには優秀な医師や看護師、教師がいるということで、彼らに、ベネズエラに来てもらうスキームを作りました。キューバとの関係は、チャベス期から20年以上になると思います。今回の軍事作戦で、マドゥロ氏の居場所と軍の基地・施設がターゲットになりました。それについて、キューバ政府が、この爆撃によって、キューバの軍人と内務省の職員32人が犠牲になったと発表しました。これはどういうことかというと、マドゥロ大統領とすれば、その大統領の周辺や、国軍の基地という非常に戦略的に重要なところに、外国の、キューバの軍人や内務省職員が、これだけ多く夜間にもかかわらず詰めていたということが明らかになったことは、この両国の関係性を露呈したといえます」
(Q.今後のベネズエラはどうなるのでしょうか。ノーベル平和賞受賞したマチャド氏が、政権を担う動きはありますか)

坂口安紀主任研究員
「多くの方は、そうなるだろうと思っていたところ、ロドリゲス氏が就任して驚いたのですが、まだマドゥロ政権のほとんど、彼以外は残っている状況で、マチャド氏は国内に戻れないです。まず、現在、残っている政権を解体し、民主化に向けての地ならしができてから、彼女が戻ってくるというのが、理想的なシナリオ。アメリカにとってもそうですし、多くの反政府派のベネズエラ人にとっても、そうです。ただし、それは、かなり難しいです」
(Q.ロドリゲス氏が態度を変える可能性はありますか)
坂口安紀主任研究員
「あります。彼女は、アメリカには一緒にやっていきましょうと言いながら、おそらく時間稼ぎをするのではないかと思います。その間に、何らかほかの方策によって、いまの体制の維持の方法を探すのではないかと思います。これに関しては、アメリカはわかっている。だからこそ、2回目の攻撃があるかもしれないと脅しているのだと思います」
