
都内とあって、都心からのアクセスもよく、年間約300万人もの登山者数を誇る高尾山にある薬王院。1300年の歴史には天狗やほら貝、5つの神が合わさったご本尊など、知られざる魅力が詰まっていました。
都心から近い霊山・高尾山薬王院へ
ケーブルカーで中腹にある高尾山駅まで、約6分。駅から出ると目につくのは…。
紀真耶アナウンサー
「こちらは標高472メートルの場所です。スカイツリーも見えますね。都心の様子がよく見えます。ここからは歩いて向かいます」
ケーブルカーの駅から、大自然の空気を全身で浴びながら歩くこと約20分。見えてきたのは、四天王門という山門です。今回は、山伏の装いをした高尾山薬王院の僧侶・上村公昭さんに案内してもらいます。
紀アナ
「いい眺めですね」
上村さん
「そうですね。きょうはとっても天気が良くてね」
紀アナ
「でも、なんでこの山の中に薬王院ができたんですか?」
上村さん
「元々、奈良時代の天平16年(744年)に聖武天皇の勅命によりまして、行基菩薩(ぎょうきぼさつ)によって創建されたといわれております」
聖武天皇と高僧の行基菩薩は、奈良の東大寺を造る際にも深く関わったという2人です。高尾山薬王院は、約1300年前に開山しました。そんな寺の僧侶は山伏としてほら貝を持っているそうです。
上村さん
「一言で言うと、ほら貝の音というのはお釈迦さまの声、お釈迦様の説法。ですから、修行の始まり、法要の始まりに音を立てるものなんです」
ほら貝の音色は「釈迦の声」だとのいわれがあります。通信手段がなかった昔は、互いの位置を確認するためのほか、緊急時の合図としても活用されたそうです。
紀アナ
「すごく迫力ある音ですね」
上村さん
「そうですね。かなり遠くまで響きますね。山の中で音をたてると」
薬王院のご本尊と「飯縄大権現」の謎
それでは本堂へと向かいましょう。ちなみに…。
紀アナ
「薬王院とありますが、どういう意味なんですか?」
上村さん
「元々、このお寺が開山された時、薬師如来という仏様がご本尊様だったんです。つまり薬の王様がいらっしゃるお寺ということで薬王院というお寺の名前になりました」
紀アナ
「どんな宗派になるんですか?」
上村さん
「このお寺は真言宗智山派という宗派でして、総本山が京都の智積院というお寺なんです。その下に大本山の千葉県の成田山新勝寺、そして、神奈川県の川崎大師平間寺とともに、高尾山薬王院があるんです」
そして、階段の先にある仁王門をくぐり、本尊をまつる荘厳な雰囲気の大本堂へ向かいます。
上村さん
「こちらのお堂では、一日5回お護摩(ごま)というご祈祷をしているんですけれども、この中に(本尊)飯縄大権現(いづなだいごんげん)様がおまつりされております」
飯縄大権現?先ほどは、薬師如来が本尊というお話でしたよね?
上村さん
「今から650年前に、京都から俊源さんというお坊さんがやってきたんです。その俊源さんが高尾山の山の中で、何日にも渡ってお護摩の炎を焚き続けたところ、不動明王の化身として飯縄大権現様が現れたんです。それ以来、元々のご本尊様であった薬師如来様と共に、大事におまつりされるようになりました」
紀アナ
「(飯縄大権現の)姿はどういう姿なんですか?」
上村さん
「不動明王の化身ですので、非常に荒々しい力強いお姿をしていて、詳しく言いますと、全部で5つの神様仏様が合体しているお姿なんですね」
5つの神様と仏様?
上村さん
「まず一つが、お不動様、不動明王ですね。次に荼枳尼天、そして迦楼羅天、歓喜天、天弁財天というこの5つの神様仏様が合体しているのが飯縄大権現様です」
本堂の中の飯縄大権現は通常、御護摩修行の参加者以外は見られませんが、境内の仏舎利塔の前で、その姿を目にすることができるんです。
上村さん
「特に分かりやすいのが、飯縄大権現様は白いキツネに乗っているんです。これが荼枳尼天が合体している部分で。あと、背中に翼があって、顔の部分がくちばしになっているんです。それが鳥の神様の迦楼羅天が合体している部分」
そして不動明王を象徴するものとして、左手の縄で助けを求める人をつかまえて、右手の剣で悪いものを断ち切り、その悪いものを焼き尽くすのが背中の炎です。ところで、二の腕に絡んでいるのは蛇。これは?
上村さん
「蛇は弁天様のお使い。ですから、弁天様が合体している部分の象徴として蛇が巻き付いています。もう一つ、歓喜天という神様も合体しているんです。歓喜天という神様のその姿ではなくて、心が合体しているんです。ですから、その心が合体しているということは、この飯縄大権現様も、どんな人の願いも必ずかなえてくださるという強い心、強い力を持っている、そういう存在なんです」
神と仏の集合体ということで、ご利益も「すごい」と言われています。
上村さん
「特に災いをいろいろ払いのけてくれる、そういったご利益が強い神様仏様なのかなというふうに思っております」
飯縄大権現への信仰は、長野県の飯縄山から広まったとされ、上杉謙信の兜(かぶと)にも奉られたことや、紀州徳川家から敬われたこともあり、世間でも信仰は盛んになっていきました。
上村さん
「昔は今のような医療もない時代でしたので、特に病気の闘病平癒の祈願はよくされていたようです」
天狗の正体を巡る意外な説とは
いろんなご利益があるとされるのが、時代をこえて人々を引きつけるのかもしれません。紀アナウンサーもお詣りしていると…。
紀アナ
「両側に天狗ですか?なんで、ここに?」
上村さん
「天狗様は、高尾山ではご本尊の飯縄大権現様のお使いのような存在なんです。高尾山で修行している私たちのような人間であったり、また高尾山にお参りに来る人を守ってくれる存在だと言われております」
紀アナ
「色が違うのは何でなんですか?」
上村さん
「鼻の長いのは普通の天狗で、こっちは、からす天狗なのでくちばしになっています。(本堂の)上に飯縄権現堂というお堂があるんですけども、その横に天狗様をおまつりしているお社がある」
本堂の背後に建つ飯縄権現堂。その横にあるのが、古来より神通力を持つという天狗をまつる天狗社です。そこには、天狗の象徴といえるげたがあり、天狗信仰の霊山ともあって、こんなものまであります。
紀アナ
「あれはなんですか?」
上村さん
「1本歯のげたなんですけども。めちゃくちゃ重いですね」
「天狗様は高げたを履いて、山の中を駆け回っているというふうに言われているんです。そういった足腰の強い天狗様にあやかりたいということで、健康を祈願する人が、このようにげたを奉納されているんですね」
高尾山薬王院には数々の天狗伝説もあります。
上村さん
「天狗様はですね、高尾山にお参りに来る人を守ってくれる存在ですので、いろんな伝説があるんです。高尾山は巨大な杉がある。樹齢、数百年の大きい杉がある。天狗様は大きな枝に腰掛けて、そこから下を見下ろして、悪い人間が入ってこないように見張っていたという伝説もあるんです」
伝説の一つともなっている参道の杉。その名も「天狗の腰掛杉」というんです。そして、高尾山薬王院と天狗。どんな関係があるんでしょうか?
上村さん
「見ていただくと、天狗様の着ている装束は私たち山伏が着ている装束と大体同じなんです。ですから、こういう山伏が山の中を歩いたり、滝行をしたり、修行をしている姿を昔は村の人が見かけて、何か特別な力を持っている天狗様なんじゃないかという伝説もありますよね」
(「グッド!モーニング」2026年1月7日放送分より)
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