
アメリカのトランプ大統領が、中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)の次の議長に元理事ケビン・ウォーシュ氏を指名すると発表した。ウォーシュ氏とはどのような人物なのか?そして日米の経済への影響は?
ウォーシュ氏が次期議長就任でもトランプ大統領の思惑通りにいかない?
トランプvsFRB
FRBはトランプ大統領と「利下げ」を巡り対立してきた。
トランプ大統領はこれまで、アメリカの中央銀行にあたるFRBに大幅な利下げを求めてきていたが、FRBのパウエル議長は利下げに慎重で、両者の対立は深刻化していた。
そんな中、パウエル氏の議長としての任期が5月に切れることから、その後任人事が注目されていた。
一般的に金利を引き下げると、企業や個人が資金を借りやすくなり、経済活動が活発化して、景気浮揚につながる。一方で、景気が過熱することで、インフレのリスクが高まる面もある。
そして1月30日、トランプ大統領が議長に指名すると発表したのは、元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏という人物だった。
次期議長に指名 ウォーシュ氏とは?
ウォーシュ氏とは一体どのような人物なのか?
ウォーシュ氏は現在55歳。ハーバード大学法科大学院を卒業後、アメリカの金融大手モルガン・スタンレーに勤務し、2002年のブッシュ政権で経済顧問に就任。2006年には35歳で史上最年少のFRB理事に指名された。
ホワイトハウスでの勤務経験がありながらも、ウォール街に太いパイプがある、官民双方に精通した人物とされている。
また、トランプ大統領とのつながりも指摘されている。ウォーシュ氏の妻は、アメリカの化粧品大手「エスティ・ローダー」の創業者一族だ。妻の父ロナルド・ローダー氏は、トランプ大統領の大学時代からの友人で、有力な献金者でもある。
ただ利下げについての考え方をみると、ウォーシュ氏はこれまでインフレの抑制を重視し、利下げには慎重な考えとみられる。2011年には、大規模な金融緩和策を批判して、FRB理事を辞任したほどだった。
ただ「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると2025年12月、トランプ大統領がウォーシュ氏をホワイトハウスに呼んで面談した際、ウォーシュ氏が利下げの必要性を認識していると確認したという。トランプ大統領はSNSに「彼は決して期待を裏切らない」と投稿した。
現議長パウエル氏の動向
仮にウォーシュ氏が次の議長に就任しても、トランプ大統領の思惑通りにいくかは不透明だという。
パウエル氏の議長としての任期は5月15日までだが、FRB理事としての任期は2028年1月末まで残っている。
本来は議長退任と同時に理事も退任するのが慣例だ。しかし、パウエル氏が議長退任後も理事にとどまるとの見方が浮上している。
FRBの理事は7人だが、現在、パウエル氏を含めて政権と距離を置いているとされる理事が4人、トランプ大統領寄りとされる理事が3人という構成になっている。パウエル氏が理事を退いて、トランプ大統領が自らに近い理事を指名すれば、トランプ派の理事が逆転する構図となるため、パウエル氏の去就が注目されている。
次期議長指名で“価格急落”
FRB人事は高騰する金の価格に影響するのか。金の価格は歴史的な高値を記録している。
1月29日、ニューヨーク商品取引所の金先物相場は、1オンス(=およそ31グラム)あたり5600ドル、日本円にしておよそ87万円を一時突破し、史上最高値を更新した。
これまで金の価格が上昇したのは、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻、ガザでの戦闘など国際情勢が不安定になった時だった。一方で、近年の金価格の急上昇は、トランプ大統領がFRBに介入する動きを見せ、「FRBの独立性が揺らぐ」「ドルの信認が低下する」という懸念が生まれたことが遠因になったとみられている。
そんな中で発表されたFRB人事に、市場は大荒れの展開となった。
FRB次期議長にウォーシュ氏が指名されたことで1月30日、アメリカ市場では金の価格が前日の終値およそ83万円から73万円まで急落した。下落率としては46年ぶりの大きさとなった。
ドルへの信認が高まったことで売られたのは、金だけでなかった。1月23日、日米両政府が為替に介入するとの見方が広がり、一時1ドル=152円台前半まで円高が進んでいた。しかし、次期議長にウォーシュ氏が指名されると、円を売ってドルを買う動きも広がり、一時154円台後半をつける急激な円安となった。
高市総理の“円安発言”で波紋
円相場に関しては、この週末、高市総理の発言がニュースになった。
高市総理は1月31日、街頭演説で、円安傾向について「今、円安だから悪いと言われるけれども輸出産業にとっては大チャンス」だと発言。外貨建ての資産である“外為特会”(外国為替資金特別会計)の運用が「今ホクホク状態だ」と強調した。
この発言に対して、一部の野党が反発するなど波紋が広がった。
高市総理は2月1日、自身のSNSを更新して、「円高と円安のどちらが良くてどちらが悪いということはなく『為替変動にも強い経済構造を作りたい』との趣旨で申し上げた。つまり日本の『供給力』を強くするための国内投資の必要性を述べた」とし、「円安メリットを強調したわけではありません」と釈明した。
「手を痛めた」討論番組を欠席
また高市総理は2月1日、NHKの討論番組への出演をキャンセルした。
高市総理は1日朝、番組を急きょ欠席した理由について、自身のSNSで「握手した際に手を強く引っ張られて痛めてしまった。関節リウマチの持病があり、手が腫れてしまった」と説明していた。
ただ1日午後には、岐阜県・愛知県の街頭演説を予定通りこなしていたという。
(2026年2月2日放送分より)
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