
クリスマスに一家3人をおので殺害した罪などに問われている男。初公判で男は「知らないことです」と、無罪を主張しました。
“おので親子3人殺害”初公判
検察側 冒頭陳述から
「被告は防犯カメラの配線を一部切り、妻の悲鳴を聞いて出てきたビショップさんをおのでたたきつけ、娘が逃げ出そうとしたところを追いかけ、おので殺害した」
法廷では、検察官が被告の自宅から発見されたおのを証拠として示しました。黒いおのと、銀のおのです。
事件が起きたのは、2022年12月のクリスマスの朝でした。
埼玉県飯能市で、アメリカ人のウィリアム・ビショップさん(当時69歳)と、その妻の森田泉さん(当時68歳)、そして当時帰省中だった娘の森田ソフィアナ恵さん(当時32歳)が自宅で殺害されました。
近隣住民
「ハンマー。大きめのハンマーって言ってましたね。執拗(しつよう)に、狂気を感じたと言ってましたね」
10年前に引っ越してきたビショップさん一家。逮捕されたのは、1ブロック隣に住む斎藤淳被告(43)でした。斎藤被告の家は直線距離で60メートル。歩いても80メートルほどです。
ビショップさんの知人 金子みどりさん
「本当に親日家で。実際の活動を通して日本のために、アメリカとの架け橋になって活動していた」(2022年)
被告が無罪主張
親日家のビショップさん。なぜ、殺害されなければならなかったのでしょうか。
検察側は、防犯カメラの画像を法廷に証拠として提出。事件当日、斎藤被告は灯油が入ったポリタンクやおの2本を持って一家の家を訪れると、防犯カメラの配線を切ったといいます。
防犯カメラには、犯人と遭遇した妻の泉さんの様子が映っていました。
泉さん
「何であなたがいるの?」
「だから何で?」
「これ、おのでしょ?」
「やめて」
妻の悲鳴にビショップさんが庭に出て「ヘイ」と言い駆け寄ると、犯人はおのを振り上げ何度もビショップさんをたたきつけ、さらに顔を足蹴りにする様子が映っていました。
泉さん
「誰か警察呼んで。誰か助けて」
検察側は、娘の恵さんが逃げ出そうとしたところを玄関まで追いかけて、おので殺害。最後には泉さんをも、おのでたたきつけたと指摘しています。ビショップさんの頭部には14カ所の傷が残されていました。
近所の人
「助けてとか、警察を呼んでという声を聞いたようです」
「女性の声だったようです」
その後、斎藤被告は現場から逃走して自宅に逃げ込み、捜査員が呼び鈴を鳴らしても応じず、自宅2階の部屋で扉の前に物を置いて5分から10分抵抗したといいます。
事件から3年余り。犯人かどうか、そして責任能力が問えるかが焦点です。
メガネをつけ、紺色のダウンジャケットを着て法廷に現れた斎藤被告は…。
斎藤被告
「知らないことです」
裁判官
「全く知らない?」
斎藤被告
「はい」
これまで同様、犯行を否認しました。
なぜ3人は殺害されたのか、明らかになっていません。
検察側は、「動機は供述されていない。ただ全く不明ではない」としたうえで…。
検察側 冒頭陳述から
「被告の思想として、独善的、反社会的、対人関係が希薄などがある」
事件前にトラブル
ビショップさんと斎藤被告の間には、以前からトラブルがありました。
被害者と同じ町内に住んでいた斎藤被告は事件前、ビショップさんの車に石で傷をつけたとして現行犯逮捕されていました。
検察側は、事件が起きる1年以上前から斎藤被告がビショップさんの車に石を投げるのを繰り返し、その様子は防犯カメラにも映っていたとしています。
その後もトラブルは続き、11月にはおの2本やバール、そして事件があった12月には飯能市内で灯油を購入し、被害者の家の防犯カメラも把握していたと指摘しました。
近所の人
「自治会から回覧がされているから、事件があったのは知っている。傷つけられたと、皆さん気を付けてくださいねと」
斎藤被告は器物損壊容疑で3回逮捕され、いずれも不起訴になっていますが、検察側は被害者への報復感情があった可能性を指摘しています。
斎藤被告は高校卒業後、大阪の芸術系の大学に通い映画制作に関わる仕事をしたこともありましたが、現在は無職。事件まで、母親から生活費をもらう生活を送っていたといいます。
斎藤被告の父親
「ショックというより、頭の中で整理ができない状態が続いていて」(2022年)
離れて暮らす斎藤被告の父親が当時、取材に答えていました。
「(Q.斎藤被告はどういった子どもだった?)私のイメージでは、学校時代も友達思いのところがあった。口数は少ないが、優しい子どもだった」(2022年)
裁判の争点は?
今回の裁判の争点になるのは、被告の刑事責任能力の有無です。
元大阪地検検事 亀井正貴弁護士
「元々責任能力の有無というのは是非弁別能力、これが悪いのかというのを判断する能力があるのかということと、もう一つ大事なのは動機が了解可能なのかどうか。つまり普通の人間がこういう動機で人を殺すことはないだろうということであれば、責任能力に問題があるのではないかというところが問題になる。合わせて、例えば統合失調症であるとか、あるいは妄想癖とか幻覚とか、何らかの病歴があるかどうか。病院への通院歴があるかどうかが判断する材料になります」
専門家によれば、重視されるのは動機、「どうして殺害しようという気になったか」という点です。
「動機というのは結局、被告人が何を考えて、どうして殺害しようという気になったかという心の動きや、認識の動きがポイントになる。まさに、そこが責任能力の問題」
さいたま地検は起訴前に、斎藤被告の事件当時の精神状態を調べる鑑定留置を2度にわたって合計10カ月行っています。
「おそらく、これ黙秘しているんですね。黙秘しているから、その具体的な頭の中の構造が見えてこないんですよ。どういう目的のもとに殺害行為に及んだかという動機について語られていないから、全然分からないんですね」
(2026年2月16日放送分より)
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