思い出詰まったランドセルに向き合う…革職人が伝えたい思い “リメイク”に依頼殺到
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 まもなく3月。小学校の卒業シーズンが迫っている。6年間の思い出が詰まったランドセルに関して、“ある依頼”が殺到する鹿児島県の革職人を取材した。

【画像】小学生時代の思い出がよみがえる “リメイク”されたランドセル

使い終わったランドセルを…

鹿児島県鹿屋市
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 九州南部、大隅半島の中央に位置する鹿児島県鹿屋市。その小さなアトリエには、全国からランドセルとともに想いがつづられたメッセージが集まってくる。

想いがつづられたメッセージ
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「たくさんの思い出のあるランドセル」
「祖父母に買ってもらった自慢のランドセルです」
「心臓に障害を持ちながら、このランドセルで6年間通うことができました」

 アトリエに入ると驚きの光景が…。

 なんと、ランドセルをハサミで解体。そして、型抜きで裁断。

ランドセルを解体して…
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福島洋一さん(47)
「これが一発勝負で、失敗したら取り返しができない。配置を確認してからしないといけないので、ここ(裁断)が一番重要な部分です」

 裁断した生地はミシンで縫い合わせ。さらに、細かい部分を手縫いで仕上げれば…。

使い終わったランドセルを生まれ変わらせる
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「これで完成です。これがミニランドセルです」

 福島さんは、使い終わったランドセルを生まれ変わらせる革職人だ。

ランドセルの特徴が一番出るところ
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「できるだけランドセルの特徴を残すように、結構長めの刺しゅうがあったんですけど、そこの一部と、青とか黄色とかここのステッチ(縫い目)は、ランドセルの特徴が一番出るところなので気を付けてやっています」

形を変えて未来へ残す

 思い出のつまったランドセルは、全国から送られてくる。

ランドセル保管庫
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「こちらがランドセルの保管庫になります」

 隙間なく並べられたランドセル。赤や黒だけでなく、水色に紫、そして緑まで。その数は、およそ300個にも上る。

 リメイク作品は、ミニランドセルだけでなく…。

ミニランドセルだけでなく…
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「ランドセルの外側のステッチ(縫い目)が赤だったので、それを再現して、全部赤のステッチで仕上げました」

ひとつのランドセルから…
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 ひとつのランドセルから、財布や通帳ケース、印鑑ケースなど、5点から9点ほどの作品が生まれる。

 毎年およそ100万人の小学生が卒業し、その役目を終えるランドセル。それらを廃棄することなく、形を変えて未来へ残すことが、福島さんの仕事だ。

 1年間で600個ほどの依頼が殺到し、なかには半年待ちのものもあるという。

注文書に…思い出記載

 依頼を受ける際、福島さんが大切にしていることがある。それは、注文書に書いてもらう、ランドセルとの思い出だ。

ランドセルとの思い出
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思い出
「祖父母に買ってもらった自慢のランドセルです。リメイクの品をプレゼントしたらどんなによろこんでくれるだろうと思い、今回お願いすることにしました」

思い出
「娘をずっと見守ってくれたランドセルに『ありがとう』という気持ちです。生まれ変わったランドセルが戻ってくるのを楽しみにしています!」

思い出は原動力
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福島さん
「見るたびに『やるぞ』という気持ちにはなります」

 福島さんにとって、思い出は原動力。ランドセルの模様や傷をあえて生かす形でリメイクしている。

作り始めたきっかけは?

 ランドセルリメイクを始めたのは8年前。きっかけは、知り合いからの相談だった。

世界でたった一つのリメイク品
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福島さん
「使い終わったランドセルがあるんだけど、それを何かリメイクできない?というふうに言われて」

 6年間使われたランドセルは、革の状態が一つひとつ違う。そのため福島さんは、すべて手作業で行っている。世界でたった一つのリメイク品なのだ。

未来へつながる思い出

奥山さん一家
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 この日、市内に住む奥山さん一家が受け取りにやってきた。

 今年の春から中学2年生になる、長女・莉々さん(13)のランドセルリメイクだ。

目に入る所に違う形でずっと保管しておける
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母・朋子さん(43)
「そのまま置いておくのもいいと思うんですけど、たぶんうちはそのままなおしておく(片付けておく)。目に入る所に違う形でずっと保管しておけるというのはすごくいい」

 ランドセルの色は、「絶対に水色がいい」と譲らなかった莉々さん。できあがったリメイク品がこちら。

できあがったリメイク品
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 ランドセルの前ポケットを利用したフォトフレームに、元の特徴であるハート模様を活かしたミニランドセルなど。

福島さん
「ランドセルのステッチ(縫い目)がピンクだったので、同じように全部ピンクでさせていただきました」

長女・莉々さん
「ありがとうございます」

福島さん
「いえいえ、こちらこそ」

長女・莉々さん
「(お気に入りは)このちっちゃいの」

父・貴幸さん(46)
「ちっちゃいランドセル。かわいいね」
「ちっちゃいのに開けられる」

 莉々さんの小学生時代の思い出がよみがえってくる。

思い出がよみがえる
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母・朋子さん
「1年生の時は、ランドセルが大きく見えて『大丈夫かな』とか思っていたけど。どんどん大きくなるにつれて、ランドセルと体との成長(の比較)じゃないですけど、そういったことが分かりやすい」

 奥山さん一家の色あせない思い出。未来へとつながった瞬間だった。

福島さん
「これが仕事にできるなんて、本当に幸せですね」

世代を超えて伝わる思い

 福島さんの元には、リメイク品を受け取った依頼者から手紙が届くこともあるという。

依頼者から手紙が届くことも
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手紙
「中学生になり、中学校のかばんにつけていると不思議な気持ちになります。大切にします」

手紙
「22歳息子が残したいと言った7センチほどの傷。『わあ、ぼくのランドセルや、帰ってきた!』と傷を見てよろこんでいました」

 ランドセルリメイクを通して、福島さんの伝えたい思いがある。

福島さん
「リメイクしてお届けしたらお子さんもよろこんで。その子どもが大人になって、自分の子どもに『要らなくなった、不用になったものでもリメイクすれば大事に使える』と年代を越えて伝わっていければと思います」

循環する感謝の思い

 今回、取材した福島さんに思い描く未来図を描いていただいた。

 テーマは、ランドセルのリサイクルを通して循環する感謝の思いだという。

 福島さんが思い描く未来図
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 まずは、小学校に入学する時に「買ってくれた人へのありがとう」。次に「6年間過ごしたランドセルへのありがとう」。そして「ランドセルを作ったりリメイクした職人へのありがとう」。このサイクルを通し、人や物を大切にする心が育ってほしいという思いが込められているという。

 福島さんは、今回依頼してくれたお子さんが親になった時、自分の子どもにランドセルリメイクをすすめる「親、子、孫、三世代でのランドセルリメイクが夢」だということだ。

(2026年2月27日放送分より)

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