「日本の産業に悪影響も」原油危機の一方で…“黄金のガス”ヘリウム不足懸念

「日本の産業に悪影響も」原油危機の一方で…“黄金のガス”ヘリウム不足懸念
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イラン戦争の長期化で影響を受けるのは原油に限りません。半導体の製造を始め、身近なものでは風船、そしてリニアモーターカーや医療機器のMRIの冷却に使われている『ヘリウム』も影響を受け始めています。国際エネルギー機関の事務局長は「石油ショックとガス供給の崩壊が同時に起きている」と警鐘を鳴らしています。

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医療の現場でも 不安の声

不安は医療の現場でも。体の中を断面で映し出す医療機器MRI。強力な磁場を作り出すためにヘリウムが使われています。

川崎中央クリニック 市村真也院長
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川崎中央クリニック 市村真也院長
「MRIを稼働する上でヘリウムというのは非常に重要で、当院で使っているものはヘリウムがないと撮影ができないもの。ヘリウムもそうですし、他の石油製品がない場合は、あらかじめ手を打っておくことも考えなくてはいけない」

イラン情勢の影響で、世界では今、かつてないほどの危機感が広がっています。

IEA(国際エネルギー機関)ビロル事務局長
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IEA(国際エネルギー機関)ビロル事務局長
「23日だけで1100万バレルの供給が途絶えました。2回の石油ショックの合計よりも多い。石油やガスだけでなく、世界経済の動脈である石油化学製品・肥料・硫黄・ヘリウムも取引が中断して、世界経済に深刻な影響を及ぼすでしょう」

カタールLNG「修復に最大5年」

ヘリウムはカタールで主に作られている
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発端となったのは世界最大の液化天然ガス(LNG)の生産拠点があるカタール・ラスラファンへのイランのミサイル攻撃。年間1280万トンもの天然ガスの生産が、最大で5年間停止する可能性があるといいます。ヘリウムはこの天然ガスの“副産物”で、カタールは世界供給の3分の1を担っています。つまり、世界経済に欠かせない天然ガス、ヘリウム共に供給がストップしたことになります。

カタール カアビエネルギー担当相
「被害の修復には3年から5年かかるだろう。ヨーロッパやアジアに影響する」

半導体にも…幅広い“使い道”

ヘリウムといえば、馴染みがあるのは風船や飛行船ですが、それ以外にも使われています。“産業のコメ”半導体です。

ナノレベル作業の半導体
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精度はナノレベル。わずかな不純物も許されない極めてデリケートな半導体の製造。ヘリウムの沸点は-269度と全ての元素の中で最も低い温度まで液体でいられるため、冷却材として活用しやすい性質を持っています。

国内のヘリウム消費状況
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また、他の物質とほとんど化学反応しないため、クリーンな環境が求められる精密機械の分野で特に重宝されていて、業界では“黄金のガス”とも呼ばれています。その用途は幅広く、半導体の他、宇宙産業など最先端の技術に欠かせない存在です。

「日本の産業に悪影響も」

名古屋工業大学 大原繁男教授
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名古屋工業大学 大原繁男教授
「ヘリウムはものすごく希少な物質で、学生のころは『液化ヘリウムの一滴は血の一滴だ』と教わった」

名古屋工業大学の大原教授。ヘリウムを使って電気抵抗をゼロにする超電導などについて研究しています。

名古屋工業大学 大原繁男教授
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名古屋工業大学 大原繁男教授
「MRIや超電導リニアもそうですが、現在応用されている超電導磁石を動かすためには液化ヘリウムが不可欠です。液化ヘリウムの温度は-269度。この世界の一番低い温度まであと4度といった低温。低温を使わないと強い磁場が出せない。超電導はとても不思議な状態で、電気抵抗が全くなくなってしまうので、たくさん電流が流せる。たくさん電流を流すことで、強い磁場を安定に出すことができる」

その希少性から、今後はリサイクルが必要になると指摘します。

名古屋工業大学 大原繁男教授
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名古屋工業大学 大原繁男教授
「化学反応しないのでリサイクルをしていけるもの。ヘリウムが地球にどれくらいあるかというと、金やプラチナ並みに希少」
(Q.値段が上がる可能性は)
「あると思います。ヘリウムそのものが足りない事態になることが考えられるので。半導体も光ファイバーも作ることができない。様々な他の用途として自動車も実は作ることができない。そうなると日本の産業の強いところでヘリウムがなくて、どうにもならなくなる恐れがあります」

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