
イラン軍事作戦に「福音派」が批判の声を上げるなど、トランプ政権の支持基盤が揺らいでいる。「MAGA派」からも不満が噴出。11月の中間選挙への影響は。
【画像】ローマ教皇レオ14世が異例の発言「戦争を仕掛ける者の祈りには耳を貸さない」
キリスト教“福音派”とは
まずは、アメリカ国内の福音派について見ていく。イランへの軍事作戦について、トランプ大統領の支持基盤である福音派からも批判の声が上がっている。
キリスト教の福音派とは、どういった集団なのだろうか。宗教学者の立教大学・加藤喜之教授によると、「福音派とは特定の宗派ではなく、アメリカで広がった大きな潮流。1970年代以降、政治にも強い影響力を持ってきた」という。
朝日新聞によれば、「神がユダヤ人に与えた土地」であるイスラエルにユダヤ人が帰らなくてはいけないと考えている人が多いということだ。
また、アメリカがイラン攻撃に踏み切った1週間後の3月5日、トランプ大統領がホワイトハウスに福音派牧師ら20人を呼び、牧師らは「神のご加護がありますように」と軍事作戦の成功を祈ったという。
そんな中、トランプ政権幹部にも福音派がいる。それが、アメリカ軍を統括する立場にある、ピート・ヘグセス国防長官(45)。
ヘグセス氏は元FOXニュースの司会者で退役軍人。イラクやアフガニスタンなどに従軍した。
ヘグセス氏の胸には「十字軍」のシンボル「エルサレム・クロス」のタトゥーが刻まれている。十字軍とは、聖地エルサレムをキリスト教徒がイスラム教徒から奪還するために編成させた遠征軍のことで、へグセス氏の信仰心の強さを示している。
ヘグセス氏は過去に上院議会で「イスラエル国家の存亡をかけた防衛を強く支持している」と発言。2020年には「アメリカの十字軍 自由を守る私たちの闘い」という本も執筆していて、ここにイラン攻撃の前兆が書かれているとも言われている。
イランの軍事作戦について、先月23日には、トランプ大統領が「最初に声を上げたのは君だったね。イランに核兵器を持たせてはならないから『攻撃しよう』と言った」とヘグセス氏に責任転嫁する発言をしている。
イラン軍事作戦で亀裂?
福音派だが、トランプ大統領との間で亀裂が生じている。なぜなのだろうか。
3月6日発表のアメリカの世論調査によると、白人福音派の軍事攻撃をはじめとした、イラン政策への支持率は68%と、共和党支持者全体の79%よりも低かった。つまり、福音派のほうが戦闘に対して共和党より慎重だということが分かる。
番組で取材した、元“福音派”のサミュエル・トーマス・ジュニア牧師は「トランプ大統領のイラン攻撃は絶対に支持できない」としたうえで「“福音派”の姿も変わってしまい、自分はそこにはもういられない」と語っている。
ローマ教皇が異例の発言
ローマ教皇はイランへの軍事攻撃を批判した。
レオ14世は先月29日の講話で、「私たちの神は戦争を拒み、戦争を仕掛ける者の祈りには耳を貸さない」と述べ、暗にイラン攻撃を主導したアメリカのトランプ大統領やイスラエルのネタニヤフ首相を批判した。
岩盤支持層「MAGA派」も批判
トランプ政権のもう一つの支持基盤「MAGA派」からも不満が噴出している。なぜ批判の声が上がっているのだろうか。
まずMAGA派とは、「Make America Great Again」の略で、トランプ大統領が掲げた米国を再び偉大にするというスローガンのこと。米国を第一に考え、対外支援の削減など、国際協調に背を向ける政策を強く支持する人たちを表す。
そんなMAGA派からも批判の声が上がっている。
有力なMAGA派として知られる、元FOXニュースの司会者、タッカー・カールソン氏。2024年の大統領選挙時には副大統領候補に起用も検討されたことがある人物だが、先月3日の配信で「これはイスラエルの戦争だ。米国の戦争ではない」と批判している。
また、過去3回トランプ大統領に投票したMAGA派の女性、エレーナさんも「アメリカがイランを攻撃したと聞いて失望した。MAGAの価値観にない」と、トランプ政権を批判している。
そして先月20日に公表されたポリティコが実施した世論調査を見ると、MAGA派の中でも世代間で温度差があることが浮き彫りになった。イラン攻撃に関してトランプ大統領が計画を持っていることを信じていると答えた人、つまりイラン戦略を信じていると答えた人は、2024年にトランプ氏に投票したMAGA共和党員男性の35歳以上では70%以上。一方、35歳未満では49%という結果に。若い世代ほど、イランへの軍事作戦を支持していないことが分かった。
物価高も不満に関係か
MAGA派の若い世代の人たちが募らせる不満は、イランへの攻撃だけではない。物価高にも不満を抱いているのだろうか。
2024年の大統領選挙で、トランプ氏は「米国第一」「ウクライナなどの戦争終結・米兵帰還」「物価の引き下げ」などの公約を掲げていた。
では現状、物価の引き下げなどどうなっているのだろうか。
イラン攻撃以降、アメリカのガソリン小売価格の全国平均は上昇を続け、先月31日には1ガロン(約3.8リットル)あたり、大きな節目となる4ドルを超えた。これはロシアのウクライナ侵攻以来のこと。さらに、イラン攻撃前の2月下旬の価格から30%以上高騰している。
また、OECD(経済協力開発機構)の経済見通しでは、アメリカの今年のインフレ率は4.2%と予測されている。
ポリティコによると、先月下旬、テキサス州で開催された全米のMAGA派などが集う最大級の政治イベントに出席した43歳の男性は、「イランへの地上侵攻は我が国をより貧しくする」としたうえで「ガソリン価格や食料品の値上がりにつながるだろう」と述べたという。
こうした動きを受け、トランプ大統領の支持率はどうなっているのだろうか。
先月24日に発表された、ロイター/イプソスの世論調査によると、イラン攻撃直後、少しだけ上がったものの、ホルムズ海峡の封鎖など長期化が予測されると、トランプ大統領の支持率は36%と、2期目開始以降で最低の水準にまで落ち込んでいる。
トランプ氏のおひざ元で番狂わせ
岩盤支持層の揺らぎは11月の中間選挙にも影響するのだろうか。
先月24日、フロリダ州議会の下院補欠選挙の投開票が行われた。ここは、2024年の選挙で共和党候補が約19ポイントの大差で勝利した選挙区だった。
しかし、今回は生活費高騰対策を訴えた民主党候補に共和党候補が僅差で敗北する衝撃的な番狂わせが起きた。
(2026年4月2日放送分より)
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