
アメリカのトランプ大統領は2日、イラン情勢を巡って国民に向けた演説を行いました。戦争終結の道筋が示されなかったことを受けて、原油の先物価格が一時1バレル=113ドル台まで上昇するなどエネルギー供給への不安が高まっています。
【画像】イラン革命防衛隊に攻撃されたアマゾンのクラウドコンピューティングセンター
イランがアマゾンを攻撃
イラン学生通信によると、革命防衛隊は日本時間2日、バーレーンにあるアメリカのIT大手・アマゾンのクラウドコンピューティングセンターを標的とした攻撃を実施したと明らかにしました。
革命防衛隊はイランに対する攻撃への報復として、アマゾンやアップルなどアメリカ企業18社のリストを公開し、従業員らに建物から1キロ以上離れるよう呼びかけていました。
一方、トランプ大統領は自身のSNSにイランで最大といわれる橋が空爆される動画を投稿。「これからもっともっと続く!取り返しのつかないことになる前にイランは合意する時だ」と圧力を強めています。
「石器時代に戻す」演説
2日に行われたトランプ大統領の演説。声高に語ったのは、アメリカの“勝利”でした。
「この4週間、我が軍は迅速かつ圧倒的な勝利を重ねた。これほどまでの勝利は誰も目にしたことがない。イラン海軍は消滅した。空軍は壊滅状態。ミサイルやドローンを発射する能力は劇的に制限され、兵器工場やロケット発射台は粉々に吹き飛ばされている。今後2~3週間はきわめて激しい打撃を加え、本来あるべき石器時代に引き戻す。それがふさわしい」
アメリカ国民に向けて行われた演説はおよそ20分。中間選挙に向け国民の不安を払拭したかったのか、強気な発言に終始しました。
イランは徹底抗戦
しかし、これを真っ向から否定するように、トランプ大統領の演説後、イラン側は対決姿勢を強めています。
イランの中央司令部報道官は、次のようにコメントしました。
「軍事拠点の被害は取るに足らず、軍事生産は誰も到達できない場所で行われている。我々は神の信頼のもと、お前たちが決定的な屈辱を受け後悔し、降伏するまで戦い続ける」
革命軍に近いタスニム通信は、イランの海軍や空軍は壊滅状態だとする発言に反論しました。
「海軍が破壊されたのなら、なぜアメリカはホルムズ海峡が封鎖されていると、まだ文句を言っているのか?ホルムズ海峡を火星人が支配しているというのか」
イランメディアは軍の司令官が「敵が地上作戦を実行しようとするならば、1人たりとも生き残らせてはならない」と指示したと伝えています。
イランのペゼシュキアン大統領もコメントを発表しました。
「爆弾によって主権国家を石器時代に戻すという脅迫は、アメリカの印象を悪化させるだけではないのか。今やアメリカは本当にアメリカ国民のためのものなのか」
イランに連帯して参戦したイエメンの親イラン武装組織「フーシ派」。
フーシ派の参戦でホルムズ海峡だけでなく、紅海とアデン湾をつなぐ要所・バブエルマンデブ海峡が封鎖される恐れがあります。
フーシ派はコメントを発表し、週末に100万人規模のデモを行う用意があると語りました。
「イエメン国民の皆様にあす金曜日、首都サヌアおよび各県での100万人規模のデモへの参加を呼びかける。デモを極めて重要なタイミングで行うことで、信仰心が高まり、我らを狙うイスラエルの陰謀に対するイエメン国民のジハード(聖戦)となる」
またフーシ派の軍報道官は2日、イランやイスラム教シーア派武装組織「ヒズボラ」と共同でイスラエルに対し攻撃を行ったという声明を出しました。
演説直後に原油↑株価↓
トランプ大統領は演説の中で、ホルムズ海峡についても言及しました。
「紛争が終われば海峡は自然に開かれるだろう。多くのアメリカ国民がガソリン高騰を懸念している。この短期的な高騰は、イランが商業タンカーや紛争とは無関係な近隣諸国にテロ攻撃を仕掛けたことが原因だ」
市場に向けてメッセージを送りましたが、この演説中から原油価格が高騰。2日には3週間ぶりに一時1バレル=113ドルを突破しました。そして、株価は大きく値下がりしました。
岩井コスモ証券
「ホルムズ海峡は放っておくみたいな話で会見したので、それを嫌気して日経平均も売られたし、原油の先物も上昇している」
日経平均株価は一時1400円以上値下がりし、2日の終値は1276円安の5万2463円でした。
イラン出身者“深い失望”
トランプ大統領の演説を真剣な表情で見つめていたのは、東京・板橋区で居酒屋を営むイラン出身のマンスールさん(62)です。
「(Q.ご家族は?)テヘランなんです。イランのテヘランに住んでいて、軍事施設の2キロ先に住んでいる。それも心配していますね」
イランからおよそ40年前に来日したマンスールさん。兄弟や親族がイランの首都テヘランで生活していて、攻撃が始まる前日までは、毎日のように連絡を取り合っていたといいます。
「本当に平凡なメッセージばかりなんですけど、この戦争が始まってからは、一切そういうの(家族との連絡)がない」
アメリカの攻撃開始直後、妹から送られてきたメッセージを最後に連絡が途絶えたままだといいます。
「1カ月以上、一切連絡がない。ネットが遮断されているということだと思うけど、安否確認が取れないのは心配」
安否が分からないまま、すでに1カ月。テヘランにいる家族へ電話をかけ続けていますが、連絡は途絶えたままです。
「音は鳴るんですけど、ネットが遮断されているので、相手側にはつながっていない」
2日、世界中が注目していたトランプ大統領の演説。
「我々の行動によって、イランがアメリカと世界にもたらしてきた不気味な脅威を終わらせる目前に来ている。それが成し遂げられ、すべてが終わった時、アメリカ合衆国はこれまで以上に安全で強く繁栄し、偉大な国となるであろう。ありがとう。おやすみ」
これに対し、マンスールさんは次のように話します。
「全然(戦争を)やめるとか話なかったね。もっとあしたは明るい世界が来るのかなと思っていたら、全然もう『おやすみなさい』で終わったじゃないですか。具体的な話をすると思った。平和に結びつくことは全然出てこなかったね」
トランプ大統領の演説に、深い失望感をにじませたマンスールさん。今後も攻撃が継続されるとの発言については…。
「(テヘランで)孫がそろそろ生まれるんですけど、そういう心配もあります。(発電所が攻撃されると)電気がなければお湯も作れないし」
「(Q.余計に心配?)心配ですよね」
演説に“強い怒り”
一方で、トランプ大統領の演説を聞き、怒りをあらわにした人もいます。
さいたま市でペルシャじゅうたんなどの工芸品を扱う店を経営する、イラン出身のゴーハリさん(60)です。
「言ってること、めちゃくちゃだと感じていないですか。我々、核爆弾持っていない。核爆弾作っていないです、元々。NPT(核兵器不拡散条約)も入ってます。(トランプ大統領は)言っていることをご存知ですけど、コロコロ変わっています。だから言っている言葉、時々理解できない」
イランのテヘラン出身で、およそ30年前に来日。攻撃開始以降、テヘランで暮らす5人の兄弟と連絡が取れないといいます。
「家族はおそらくテヘランから離れていると思いますけど、でも生きているか生きていないか、はっきり分からない状況」
店で扱うペルシャじゅうたんは、すべてイランの職人が手作りしたもの。その職人たちとも連絡が取れず、商品の入荷も止まっているといいます。
「こっちウールになりますけど、シルクはまた別世界です」
「(Q.この輸入先も連絡がつかない?)全然ダメ」
「(Q.今ちょっと在庫あるけど?)いつかまたどうなるか。手に入るかどうか不安」
ゴーハリさんは攻撃開始以降、毎日流れるニュースに心を痛めてきたといいます。
「私の国の政治家ダメでも、それイラン人の問題です。やっぱり、イランの国民に任せないといけない。日本の昔の映画『侍』『おしん』『七人の侍』『北の国から』とか、たくさんイランに入ってきました。戦争は非常に良くない。人間の苦労して作ったものが破壊されます。やっぱり力を持っている人、力がない人を守ってあげないと。力を貸さないと、食べさせないと」
ゴーハリさんは、一日も早くイランに平和が訪れてほしいと話します。
(2026年4月3日放送分より)
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