
ホルムズ海峡の事実上の封鎖が、中東に輸出をしている日本の企業に大きな打撃を与えています。一方で、イランからホルムズ海峡の通過を認められる国も出てきています。その一つがタイです。なぜ通過をできたのか、タイ外相に直接話を聞きました。
エンジンが工場に山積み
山形県自動車販売店
リサイクルセンター
菅原弘紀専務
「これが海外に行くエンジンです。どんどんこれがたまっていって」
「(Q.1カ月でどれぐらいたまる?)300個。300個ぐらい」
「(Q.もう置き場所がなくなる?)なくなります」
こちらは、廃車になった自動車から使える部品を取り出し、海外などに輸出している会社。
「(Q.これは?)部品一つひとつ取り外しているところです。ちょうど、ガソリンタンクを外して。輸出のメインになるのは、エンジンなんです」
そのエンジンが置かれているのは、普段、解体作業に使われている場所です。
「本来であればここは(エンジンを)置く場所ではないんですよ。置く場所がなくて、一時ストックして置かざるを得なくて。どんどんたまっていっている」
通常なら、解体したエンジンなどのパーツは、ほとんどがホルムズ海峡の目と鼻の先、UAEのドバイへ輸出されます。しかし、ホルムズ海峡の事実上の封鎖でドバイへの輸出がストップ。
「全体の売り上げの2割弱ぐらいが、今回の中東の関係で落ちますね」
会社の売り上げが下がる中、たまっていく部品は他にも…。
「向こう(中東)はもう熱いですから。このラジエーターがないとエンジンがすぐダメになっちゃうんですね。こんなことして普通は置かないんですけど、置く場所もないです。山積みになってしまうんですね」
中東に輸出するはずだった部品はたまる一方。置き場所もなく、屋外に雨ざらしに。
敷地内に収まらない部品は、船会社の倉庫に使用料を払い、置かせてもらっている状況だといいます。
そもそも、こちらの会社の主な輸出先はロシアでしたが…。
「おととしに、ロシア向けについては経済制裁の問題がありまして、完全にストップになっております」
ウクライナ侵攻の影響でロシアへの輸出はストップ。代わりとなる新たな輸出先として、去年8月からようやくドバイに販路を開いたところでした。
「仮に今、中東の戦争が終わったとしても、しばらくの間ホルムズ海峡がまた開かれるには、また何カ月か1年とか、これからずっと時間がかかると思います。根本から考え方を変えていかなきゃいけないと思いますね」
中東向け軒並みキャンセル
長引く戦争は輸出産業に暗い影を落としています。
トヨタ自動車は先月、中東向けの車種2万台を減産。今月も2万4000台を減らす計画が明らかになっていて、工場の一部を稼働停止する方針。
日産自動車も、子会社の九州工場で1200台規模を減産する方針です。
さらにこんなところでも。ポルシェ、ベンツ、フェラーリなどずらりと並んだ高級車。中古車の輸出代行を行う業者です。
中古車の輸出代行 ジャパン・キャリアー
藤原正幸社長
「(Q.どこへ輸出する車?)こちらは中東向けを計画して置いてあります」
貼り紙の輸出先を見ると、UAE=アラブ首長国連邦の文字が並びます。
日本から海外への中古車輸出先を見ると、1位はUAEで年間およそ25万台。全体の15%近くを占めています。
「日本の中古車は非常に品質がいい。やはり中東の方には、非常に高級車に対する人気が根強い」
円安による割安感に加え、車検制度が整った日本から入って来る中古車は品質が高いとして、海外の業者にも人気があるそうです。
「(Q.『搬入日3月9日』とはどういう意味?)“イラン情勢”が始まってしまって急きょ、船がキャンセルになって輸出ができなくなってしまった」
イラン情勢により、日本から中東向けの輸出が軒並みキャンセル。
この車も船に積まれ出港するのを待っていましたが、急きょ輸出ができなくなり、保管場所に戻ってきました。当然、売り上げの見通しは立っていません。
「船が出ない限りは、正直言ってお客様が望んでいる輸出・輸入という手続きをすることができなくなりますので。このイランの戦闘が、一日でも早く終わることを本当に願っています」
2倍の和牛を輸出予定が…
中東への輸出が途絶えているのは工業製品だけではありません。
甘くとろける舌触りで、きめ細やかな霜降りが美しい鹿児島県産の黒毛和牛。
カミチク 執行役員
上村幸生本部長
「中東のパートナーから、3月の食肉処理加工を止めてほしいと依頼がありました。完全に今は(輸出が)ストップしている状況」
鹿児島県内にあるカミチクグループでは、黒毛和牛の飼育から食肉加工、販売までを行っていますが、イラン情勢により、UAEのドバイへの輸出が止まってしまったといいます。
「(3月分の)約300キロが止まったという状況」
4月からはさらに輸出量を拡大し、これまでの2倍にあたる約600キロの和牛をドバイに輸出する予定でした。
「圧倒的にムスリムの人口は多いので、せめたいなと」
イスラム圏に輸出するためには「ハラル」という、イスラム教徒が食べることを許されたイスラム法に則した方法で食肉処理をしなければなりません。そのためこの会社では、イスラム教の認証機関に諮り「ハラル認証」を取得した矢先でした。
「先行きが見えてくると、畜産業界としてもかじを取りやすい。ただトランプさんも色々と発言はしたものの、朝令暮改。そういったところも含みながら考えています」
イランと協議の舞台裏
日本経済に大きな影響を及ぼすホルムズ海峡は、依然として、イランによって事実上封鎖されたまま。ペルシャ湾内には日本関係の船舶が45隻、日本人乗組員20人が取り残されています。
2日の国会では、高市早苗総理大臣が今後、原油不足で節電・節約の可能性もあることに言及しました。
「国民の皆様への節電や節約のご協力依頼については、今後とも重要物資の需給や価格などについて足元の状況を把握し、あらゆる可能性を排除せずに臨機応変に対応する」
また、2日に日本やイギリスなど40カ国以上の外相がホルムズ海峡に関する会合を行い、航行の安全の確保に向け緊密に連携していくことで一致しました。
中東に原油を依存する各国が対応に追われる中、タイのアヌティン首相がこのように述べました。
「イランがタイの石油タンカーによるホルムズ海峡の安全な通過を認めることで合意した」
原油不足によって混乱が続くタイが、タンカーのホルムズ海峡通過についてイラン側と合意したと発表したのです。
外交の舞台裏でイランとどのような協議をしたのか?ANNがタイのシーハサック外相に単独取材。成功のカギとなったのは?
「イラン側に対して率直に話したことです。我が国は紛争当事国ではなく、国際法上の安全通航権と航行の自由を行使したいと正直に伝えました。そして重要なのは、意思決定を行う人物、あるいは意思決定に関与する人物と直接話すことです」
「日本は、中東地域の国々の平和と安定を求める声を結集する役割を果たせます。今こそ、日本が指導力を発揮する時だと思います」
(2026年4月3日放送分より)
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