いまだ不透明な停戦の先行き “合意” のキーパーソンとは

いまだ不透明な停戦の先行き “合意” のキーパーソンとは
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 アメリカとイランが停戦で合意したものの、イスラエルがレバノンに最大規模の攻撃を行っていて、停戦の先行きが不透明になってきた。これを受けてイラン国営メディアはホルムズ海峡が完全封鎖された状態と報じた。

【画像】戦闘開始後のイラン国民の生活は?

カギを握る重要人物

 まずは、アメリカとイランの双方が停戦合意に至った背景をみていく。

 「2週間の停戦合意」に至った背景には、ある人物の存在があった。

停戦合意の“キーパーソン”
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 8日、トランプ大統領が自身のSNSで停戦を発表した際、冒頭に「パキスタンのシャリフ首相および、ムニール陸軍元帥と協議した」という言葉があった。

 このムニール元帥という人物が、トランプ大統領の「お気に入り」とされ、停戦合意のキーパーソンだと報じられている。

 ムニール元帥とはどんな人物なのか?朝日新聞によると、2022年、パキスタンの事実上の軍トップである陸軍参謀長に就任し去年5月、インドとの軍事衝突での功績から史上2人目の陸軍元帥に昇格した人物。

 また去年12月には、陸海空軍を統括する新設ポスト「軍最高司令官」に昇進。政治的な影響力を強めている。

 そして、トランプ大統領の「お気に入り」となった理由は、 去年、武力衝突したインドとパキスタンが停戦合意した際、トランプ大統領が両国を「仲介した」と主張したのに対して、インド側はアメリカによる仲介を否定した。 一方、パキスタンはアメリカに謝意を伝えた。このあとトランプ米大統領は、6月にムニール元帥をホワイトハウスに招いて昼食をともにしたという。

 そうした関係を活かして、今回ムニール氏は停戦合意に大きく貢献したという。

 ロイター通信によると、ムニール氏はアメリカのバンス副大統領やウィトコフ中東担当特使、イランのアラグチ外相と「一晩中」連絡を取り合ったという。そして今回の2週間の停戦合意に至った。

イランが提示 10項目の和平案

イランが公表した停戦案
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 では、最終的な「停戦合意」に至るのか?イランが提示した10項目の条件。この和平案をもとに行われる最終合意への交渉で焦点となるのは何なのか?

交渉の焦点は?
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 トランプ大統領は「イランから10項目の提案を受け、それが交渉の実現可能な基盤になると考えている」とSNSに投稿。

 そしてイランは「自分たちが提示した10項目をトランプ大統領が交渉の基盤として受け入れたため対応した」として「偉大な勝利を収めた」と、アメリカが屈したことを強調した。

 一方、米国のレビット報道官は「トランプ大統領がイラン側の要望リストをそのまま合意として受け入れるなどということは、全くもって荒唐無稽。大統領は米国の国益に最も資する合意のみを結ぶ」として、これからの交渉で決めていくことを強調した。

 またCNNの取材によると、民主党のクリス・マーフィー上院議員は「イランが海峡を支配する権利を得るなら、それは世界にとって壊滅的な事態だ」と懸念を表明している。

戦闘終結協議は?メンバーは?
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 こうした中、アメリカとイランの戦闘終結に向けた協議が行われる。

 8日の会見でアメリカのレビット報道官は、戦闘終結協議は仲介国のパキスタンの首都イスラマバードで11日から実施。アメリカ側はバンス副大統領らが出席すると発表した。

 イランからはガリバフ国会議長が参加すると報じられているが、タスニム通信は「イランの交渉団の代表はまだ決まっていない」と伝えている。

疲弊するイラン国民の生活

 アメリカ、イスラエルは軍事施設を攻撃しているとしてるが、民間にも多くの被害が出ている。

イラン国民の現状は
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 国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、イラン赤新月社は、4月3日現在763校の学校を含む11万5193の民間施設が被害を受けたと報告している。さらに、障害者のための特別ケア施設、医療倉庫、精神科施設、空港インフラなどの被害が報告されている。

 こうした中で、BBCは2日、戦争によって職を失った女性のインタビューを紹介した。「(インフレで)基本的な食料さえ買えない」としたうえで、「大規模な失業が起きているのに、政府は何もしてくれない」、政権の終焉(しゅうえん)を望んでいるが、経済的苦境の不安が大きいという。

 また、テヘランに住む男性は「自分の母の薬を買うのに、今まで1つの薬局でまとまって買えていたけど、今は何軒か回ってやっと買える」と話し、製薬会社が空爆されていて製造が間に合わないなど、薬の価格がおよそ1.5倍になっていると話している。

 さらに、BBCの取材に応じた複数のイラン人は、政権の打倒を望んではいるが、自分たちと国が攻撃を受けていると感じている。つまり、イラン人も被害者だという思いもあり、複雑な感情を抱いているという。

“反体制派”国民からは「失望」も

 では戦闘前から拡大していた反体制の動きはどうなったのか?

封じ込められる反体制の動き
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 BBCによると、イランの現政権は国内治安部隊や忠実な支持者を動員して街頭をパトロールさせていると報じていて、逮捕、拷問、処刑も行われているという。

 実際、人権団体によると、全国的な抗議デモに関連する罪で7人が死刑を言い渡され、6日時点で10代の少年2人を含む5人を処刑した。

 BBCによると、反体制デモに参加し銃撃を受けた男性は、「デモの際に政権は数千人の自国民を殺害したが、また同じことを簡単にやると思う」と、今も身を隠して生活しているという。

子どもも徴兵対象に?
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 こうした中で、イランは体制維持のため、子どもまで徴兵しているという。

 AFP通信によると、先月26日、イラン国営テレビは「12歳から治安部隊に入隊し、革命防衛隊や民兵組織『バシジ』と共に世界のいじめっ子(米国)に立ち向かうことができる」などと放送。

 ガリバフ国会議長は2日、自身のSNSで「1週間未満でおよそ700万人が名乗りを上げた」として「イラン国民は祖国防衛を語るだけでなく、そのために血を流す」と投稿している。

 こうした状況にBBCは、テヘランに住む学生は「高官1人につき3人から7人の後継者が割り当てられている。ギリシャ神話のヒドラのように1つの頭を切り落としても、また別の頭が生えてくる」として、現政権の終焉を望んでいるが変革は非常に困難と語ったという。

(2026年4月9日放送分より)

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