
世界が注目する、アメリカとイランの直接協議。双方の交渉団は、パキスタンの首都イスラマバードに入りました。 (4月11日OA「サタデーステーション」)
米とイラン交渉団 パキスタン首相と会談
アメリカのバンス副大統領は11日午後、パキスタンのシャリフ首相と会談しました。シャリフ首相は「今回の協議が地域の恒久的な平和に向けた足がかりとなることを期待する」と話したといいます。またシャリフ首相は、ガリバフ国会議長らイランの代表団とも会談。アメリカとイラン、双方の代表団と個別に会談したシャリフ首相は、交渉開始の条件を巡り「隔たり」がある両国の言い分を聞き取ったとみられます。
米トランプ大統領(ワシントン近郊 10日)
「(Q大統領にとって“良い合意”とは?)核兵器を持たせないこと、それが第一だ。私はすでに体制変革は行われたと見ているが、それは判断基準には一度もなかった。核兵器は持たせない、それが99%だ」
トランプ大統領は10日、イランとの協議に向け自らの狙いを明らかにしました。
米トランプ大統領(ワシントン近郊 10日)
「(ホルムズ海峡を)とにかく開放させる。すぐにも開放されるだろうと思う」
「(Qバンス副大統領が出発する前にどんなことを言いましたか?)幸運を祈ると言いました。彼には大きな仕事が待っている。どういう状況になるかを見極めていく」
アメリカの代表団を率いるバンス副大統領は。
米バンス副大統領(ワシントン近郊 10日)
「前向きな交渉を心がける。トランプ大統領は明確な方針を示しており様子を見たい」
バンス副大統領は、日本時間11日午後3時すぎ、イランとの会談が行われるパキスタンに到着しました。代表団には、2月の攻撃前まで交渉にあたってきたウィトコフ中東担当特使やトランプ大統領の娘の夫・クシュナー氏も同行しました。
一方のイラン側の代表団を率いるのは、革命防衛隊で空軍司令官を務めたことがある、ガリバフ国会議長。アラグチ外相らとともに、パキスタンに入りました。ガリバフ国会議長がパキスタンへ向かう機内で撮影された映像では、機内の座席に爆撃で亡くなったイランの児童たちの写真や遺留品が並べられています。ミナブの小学校では、少なくとも175人の児童らが死亡したとされ、アメリカ軍の誤爆による可能性が高いと報じられています。
厳戒態勢のパキスタンの首都、イスラマバード。日本時間11日午後、アメリカとイランの和平にむけた直接協議が始まるとされていました。
CNN記者(パキスタン・イスラマバード 日本時間11日午後5時すぎ)
「間もなく交渉が開始されます。 交渉はまず間接的な形式で始まり、その後に直接的な交渉に移行する模様です。 その移行のためには信頼構築が必要でしょう。 (両者は)大きな根本的な障壁を乗り越える必要があります」
イラン国営放送は。
イラン国営放送のリポーター(パキスタン・イスラマバード)
「現在、イランの代表団とパキスタンのシャリフ首相との協議が行われています。その後、協議の結果を踏まえ、アメリカとの交渉に関する具体的な内容が決定される見通しです」
どうやら、パキスタンを間に挟んでの間接的なやり取りは始まっているようですが、アメリカとイランの両者が顔を合わせた直接交渉はまだ行われていないようです。そして、直接交渉がなかなか始まらない原因として考えられるのが。
CNN記者(レバノン・ベイルート 日本時間11日午前3時)
「レバノンは今も攻撃されています。イスラエルはレバノン南部に攻撃しており、(一方のレバノンの)ヒズボラも、今もロケット弾でイスラエル北部を攻撃しています」
交渉が始まろうとするなか、イスラエルとレバノンの戦闘は終わっていないようです。8日の一時停戦合意では、イラン側は「レバノンを含む全戦線の戦闘終結」など、「10項目の停戦条件」を示しています。しかし停戦合意以降、レバノン側の死者は350人を超えると報じられています。レバノンでの停戦も条件だとするイラン側と、含まれないとするアメリカ・イスラエル側とで、大きな乖離が生じているのです。
イラン代表団を率いるガリバフ国会議長は10日、交渉を始める条件として、“レバノンにおける停戦の実施”などをあげ、けん制を続けています。
また、レバノンでの停戦を巡っては、レバノン大統領府は、14日アメリカの仲介で、レバノンとイスラエルが協議することで合意したとしています。
ホルムズ海峡 通航再開見通せず
また、トランプ大統領もイラン側も強く主張するのが、「ホルムズ海峡」についてです。イラン側は、8日の一時停戦合意では、「ホルムズ海峡の通航が可能になる」としていましたが、イスラエルのレバノン攻撃で再封鎖されました。しかし…。
ペルシャ湾の船が受信した無線(9日)
「全ての船舶に告ぐ。ホルムズ海峡は現在、航行可能となっている。航行しても構わないが、イラン海軍への報告が義務付けられている」
これは、ペルシャ湾内で足止めされている船舶が9日夜に受信した音声です。イラン側からのメッセージとみられ、ホルムズ海峡の航行が可能になったことを伝えています。船は通行できるようになったのでしょうか。
東京大学大学院 渡邉英徳教授
「今見ているのがMAYASANっていう(日本の石油)タンカーの動きなんですけど、この図で言うと右側がホルムズ海峡ですね。そこに向けてかなり速いスピードで移動している」
ホルムズ海峡のモニタリングを続けている東京大学大学院の渡邉教授は、イラン側が発したとみられるメッセージが受信された時刻と近い時間帯に動き出した、日本行きのタンカーを確認しました。そのホルムズ海峡近くには、日本へ積み荷を運ぶことになっている多くの船が集まっているといいます。
東京大学大学院 渡邉英徳教授
「このMIRACLE HOPEという船は、日本の大分に原油を運ぶ予定になっているタンカー。DAISEN、これも日本の川崎に原油を運ぶタンカーですね。だから日本の原油タンカーが集まっているところに、合流してきたと考えられます。出口に近いところに陣取っていた方が、その後の順番的な優先度が上がりそうに思いますから、協議の結果によっては、通れるようになるかもしれないわけですよね」
さらにイラン側は、通過する際の航路図を示しています。オマーン側の海域、つまり平時に使われる航路は、機雷が敷設されている可能性がある『危険区域』に指定。イラン側と連絡を取りながら、通るよう指示しています。
日本船主協会 平尾常務理事
「機雷があるかどうかというこが非常に心配しておりまして、この停戦合意がなされたとして、本当にこの海域を通って出域ができるのかという、そこが非常に心配になります」
ニューヨーク・タイムズは10日、アメリカ当局者の話として、イランがホルムズ海峡に敷設した機雷に関し、一部の行方が特定できていないため、海峡の開放が進んでいないと伝えています。
今も6隻の船がペルシャ湾に閉じこめられているという、世界的な海運会社の担当者も、海峡の安全性に疑問を呈します。
ドイツ最大手の海運会社 「ハパックロイド」ニルス・ハウプト広報部長
「海にまだ機雷があるなら、この地域は絶対に避けなければなりません」
まだ、海峡を通ることは危険だという一方で、ペルシャ湾内に留まることも危険だといいます。
ドイツ最大手の海運会社 「ハパックロイド」ニルス・ハウプト広報部長
「(ドローン)爆弾の破片がエンジンルームに入りました。そこには燃えやすい燃料が入っています。エンジンルームが燃え船は操縦できなくなりました」
2週間ほど前、会社の船の近くで爆発が起き航行不能に陥ったといいます。一刻も早く、ペルシャ湾を脱出したいといいますが。
ドイツ最大手の海運会社 「ハパックロイド」ニルス・ハウプト広報部長
「今最も懸念しているのは、今の状態は、私たち全員が思っているよりももっと長く続く可能性があるということです」
米イラン和平協議のポイントは
高島彩キャスター
「ここからはイラン情勢に詳しい中東調査会研究主幹の斎藤正道さんにお話をお聞きします。現在のところ、直接的な協議は始まっていませんが、イラン側からは『イスラエルのレバノンへの攻撃が止まらない限り、協議には応じない』という話も出ています。米国とイランの直接交渉は始まるんでしょうか?」
中東調査会研究主幹 斎藤正道氏
「イランからは多くの交渉団が、パキスタンを訪問しているということで、実際に直接的な協議が行われるか分からないところはありますが、協議自体は実施される方向に動いていると思います」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「米国もイスラエルに対して、レバノンへの攻撃を自制するよう呼びかけていると伝えられていますし、週明けにワシントンでイスラエルとレバノンとの協議も予定されているということで、直接協議に向けた環境を整えようとしていることは間違いないと思います」
高島彩キャスター
「では、予定されている今回の停戦協議に関してポイントとなる点を見ていきたいと思います」
仁科健吾アナウンサー
「10日、トランプ大統領は、記者団の取材に対して『核兵器を持たせないこと、それが交渉の99%を占める』と話していました。その真意はどこにあるのか?米国の外交安全保障に詳しい明海大学・小谷哲男教授に聞いたところ『トランプ大統領としては、イランのウラン濃縮を認めたオバマ元大統領への反発の表れとして、ウラン濃縮を止めるのが最重要事項』と考えているそうで、『これが止まらなければ、停戦、和平はありえない』とも話しているということでした。さらに今回の代表団には核の専門家も同行しているということです」
高島彩キャスター
「斎藤さんは、『イランに核を持たせない』という発言、どのように見ていますか?」
中東調査会研究主幹 斎藤正道氏
「イランはこれまでもずっと『核兵器は保有する意図はない。開発はしていない』と言ってきた。『ウラン濃縮も民生用に濃縮をしているだけ』なんだと主張している。そして現在は去年6月の爆撃により、実質的にはウランの濃縮活動が行われていないということもありますので、この点に関しては一番合意しやすい条件なのではないかと思っています」
高島彩キャスター
「“米国とイランの落とし所としてちょうどいい”というのもあるかもしれないですね。では、日本経済にも直結するホルムズ海峡に関して、米国はイランの関与を認める可能性はあるのでしょうか?」
仁科健吾アナウンサー
「明海大学の小谷教授によると『イランが核開発中止をのんだ場合、イランがホルムズ海峡を管理することに関して、米国は譲歩する可能性がある』とのことでした」
高島彩キャスター
「斎藤さんは、ホルムズ海峡に関してはどうご覧になっていますか?」
中東調査会研究主幹 斎藤正道氏
「イランは今回の戦争を契機に、ペルシャ湾・ホルムズ海峡の支配権、覇権を握ろうという野心を持っているように思われます。ただ、そうなるとサウジアラビアやアラブ首長国連邦といった湾岸のアラブ諸国との関係悪化は免れないということで、ペルシャ湾・ホルムズ海峡を巡り、今後の紛争の火種になりうるのではないかとも考えています」
高島彩キャスター
「ホルムズ海峡の封鎖に関しては、実際にカードとして使ったのは今回が初めてですよね?」
中東調査会研究主幹 斎藤正道氏
「これまでも“脅し”としては使ってはいたんですが、今回実際に米国とイスラエルの攻撃を受けてこのカードを最終的に切ったということになります。その結果、ホルムズ海峡というカードが非常に有効であるということをイラン側も認識するようになったということで、今後もこのカードを有効に活用していきたいと、抑止力の一部として確保しておきたいとイラン側は考えているように思います」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「個別具体的なテーマもあるが、今回の協議が1日限りなのか、それとも今後も続くのか。停戦が2週間に及んで維持できるのかどうか。そこは大きいポイントだと思うんですが、ざっくりと合意できるような形、大枠の合意だけして、詳細については今後も交渉を継続するという形を探る可能性もあるのではないかという気がします」
高島彩キャスター
「まだ間接的な協議が始まったところですが、これが次につながっていくのかというところ、斎藤さんはイランの本気度をどう見ていますか?」
中東調査会研究主幹 斎藤正道氏
「今回の交渉団を率いているのがガリバフ国会議長という人物です。彼は本来は外交交渉に関わるような人物ではない。しかし、彼がなぜ交渉団を率いるようになったのかと言うと、彼が革命防衛隊の元司令官で、現在も革命防衛隊に非常に近い人物。また2月28日の爆撃で亡くなったハメネイ前最高指導者とも非常に近い関係を持っていたということで、もし今回の交渉で米国とイランの間で何らかの合意が結ばれた時に、軍や最高指導者事務所などに対して停戦合意をのませる、説得することができる、そういった立場だと考えられます。それを考えると、彼は今回の交渉に対して、それなりに本気なのではないかなと感じています」
高島彩キャスター
「そしてどこまでいっても停戦の大きなハードルになるのが、イスラエルのネタニヤフ首相の動きだと思います」
仁科健吾アナウンサー
「明海大学の小谷教授によりますと『イスラエルにはミサイルがほぼ残っていない』ということで、『米国がイスラエルへの軍事協力をやめると言えば、ネタニヤフ首相も従わざるをえないような環境だ』ということです。さらに『イランの核開発が止められるという道筋が見えれば、イランへの軍事協力停止という伝家の宝刀を抜く可能性は十分にある』ということでした」
高島彩キャスター
「伝家の宝刀がなかなか抜けないじゃないかということをずっとお伝えしてますけど、柳澤さんどうですか?」
ジャーナリスト柳澤秀夫氏
「ネタニヤフ首相は汚職事件の被告人であるんですよね。その裁判がまもなくまた再開される。秋には総選挙を控えているということで、今の混乱した状況が続いたほうがネタニヤフ首相にとって、政治生命を維持できるということがありますので、なかなか米国の言う事に首を縦に振るかどうかというのは難しいところもあると思います」
