
週末、仲介国パキスタンで行われたアメリカとイランによる直接協議について、双方は「合意に至らなかった」と発表している。約14時間に及んだ交渉の舞台裏とは何だったのか。協議終了の翌日、トランプ大統領はSNSに、ホルムズ海峡をアメリカ海軍が封鎖すると投稿した。これはどういうことなのか。
異例の直接協議
今回の協議について、イランのタスニム通信によると、現地時間11日の午後1時に始まったという。まず双方が間接協議を行った。これはイランとパキスタン、アメリカとパキスタンという形で、パキスタンを介して協議を行うものだ。その後、アメリカ、イラン、パキスタンの三者による対面での直接協議に移り、合わせて14時間程度に及んだ。
実はアメリカとイランが直接協議を行うこと自体が異例である。これはイランの前最高指導者ハメネイ師が、アメリカと対面で交渉することを実質的に禁止していたためだからだ。アメリカの副大統領とイラン指導部が直接協議するのは、47年前のイラン革命後、初めてのことだという。
ではなぜ今回、直接協議が実現したのか。協議前に、ある約束が交わされたという。イラン代表団の1人であるガリバフ国会議長は、直接協議の条件としてイスラエルによるレバノンへの攻撃停止などを求めていたが、イランメディアによると、イラン代表団はイスラエルがレバノンへの攻撃を控えることなどの確約を得たことで、直接協議を行うことに合意したという。ただ、協議は難航し、アメリカとイラン双方が「合意に至らなかった」として帰国した。
米国・イラン 双方の主張
では、今回なぜ合意に至れなかったのか。アメリカとイラン双方の主張をみていく。
アメリカ側は核問題で一致できなかったと主張している。バンス副大統領は協議後の会見で、核開発計画の放棄など核問題について「レッドライン(譲れない点)」を伝えたと述べ、今後イランが提案を受け入れるか見極める考えも示した。
トランプ大統領も協議終了の翌日、SNSに「ほとんどの点で合意に至ったが、唯一、本当に重要な点である核については合意に至らなかった」と投稿し、核問題がネックになったことを強調した。
トランプ大統領は8日にもSNSに、イランが保有する高濃縮ウランについて、爆撃で破壊した施設を掘り起こして除去すると投稿するなど、完全排除を軍事作戦の目標に掲げてきた。トランプ大統領が核の完全排除にこだわる理由について、CNNなどは、イランから核を完全に排除できれば、2015年にオバマ政権がイランと結んだ、核開発を制限する合意を上回る成果を得たとアピールできるためだと指摘している。
一方、イランが主張する相違点はホルムズ海峡ではないかと言われている。
イラン外務省のバガイ報道官は協議後、「いくつかの論点で合意に達したが、2、3の重要な点で見解が大きく食い違っていた」と説明している。イランのタスニム通信によると、その食い違いとは核開発についての問題に加え、ホルムズ海峡の開放を巡る問題だったという。
イギリスのフィナンシャル・タイムズなどによると、協議ではアメリカ側がホルムズ海峡の即時開放を求めたのに対し、イラン側は海峡の管理権を主張するとともに、通航料の徴収を認めるよう求めたという。
また、トランプ大統領が一時検討しているとしていた、ホルムズ海峡をアメリカとイランで共同管理する案については、イラン側が拒否したという。
イランが無秩序に機雷設置か
協議終了から一夜明けた日本時間12日夜、トランプ大統領は自身のSNSに「世界一のアメリカ海軍は、ホルムズ海峡への出入りを試みるあらゆる船舶を封鎖する手続きを開始する」と投稿した。その後、日本時間13日6時、アメリカ中央軍はSNSで、日本時間13日午後11時からイランの港を出入りするすべての国の船舶に対して海上封鎖を開始すると発表した。
背景について、ニューヨーク・タイムズはアメリカ当局者の話として、イランはホルムズ海峡に敷設した機雷の行方を特定できず、機雷を除去する能力も持ち合わせていないと報じている。これはイランが無秩序に機雷を敷設したことが原因で、一部は漂流しやすい状態で設置されていたという。
イランの革命防衛隊が公開していた航路図では、機雷が敷設されている可能性がある場所が危険区域に指定されているが、機雷の行方が分からなければ航路の安全が確保できず、通航が滞り続ける恐れがあると指摘されている。
米軍駆逐艦 海峡を通過か
そうした事態を打開するため、アメリカ軍の艦艇がホルムズ海峡を通過したのではないかと言われている。
アメリカ中央軍は11日、イランの革命防衛隊が敷設した機雷を完全に除去する任務の一環として、ミサイル駆逐艦フランク・ピーターセン・ジュニアとマイケル・マーフィーの2隻がホルムズ海峡を通過したとする声明を発表した。声明では、今後、数日のうちに水中ドローンを含む追加部隊が掃海活動に加わる予定だとしている。
東京大学大学院・渡邊英徳教授によると、船舶追跡サイトではアメリカの駆逐艦がホルムズ海峡を通過した形跡があるという。
自衛隊の派遣は?
こうした中、高い機雷除去能力を持つ日本の自衛隊が派遣を求められる可能性もある。
日本は機雷を取り除く技術が世界でもトップクラスだとされていて、1991年には湾岸戦争後、日本の掃海部隊がペルシャ湾に派遣され、188日間にわたって掃海作業に従事し、34個の機雷を処分した。
今回、自衛隊が派遣される可能性について、先月25日、高市早苗総理は将来的な掃海部隊の派遣について「状況を見て、法律にのっとって判断していく」と発言している。
交戦下での機雷除去は戦闘行為にあたるとされていて、政府は集団的自衛権行使が可能となる存立危機事態や、後方支援などができる重要影響事態の認定には否定的である。ただし、戦闘終結後に残された機雷を除去するのであれば、実施できるとみられている。
(2026年4月13日放送分より)
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