“魔法の工場”の正体とは 都市鉱山からレアメタルも 金属を生み出す最前線

“魔法の工場”の正体とは 都市鉱山からレアメタルも 金属を生み出す最前線
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 世界中から集められたスマートフォンなどの基板、いわゆる「都市鉱山」から金・銀・プラチナといった貴金属のほか、何種類ものレアメタルを取り出す世界最先端のリサイクル工場を調査しました。

【画像】近年注目のレアメタル 他の金属と比べて融点が低いのが特徴

青く輝くビスマスとは?

魔法の工場ともいうべき現場
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 前回、リチウムイオンバッテリーから色とりどりの希少な金属、レアメタルを取り出すJX金属の工場を取材しましたが、今回はその本拠地を取材します。

 魔法の工場ともいうべき現場が、茨城・日立市にあるJX金属製錬・日立工場です。

JX金属製錬スタッフ
「金・銀・レアメタルも含まれておりまして、資源価値の高い原料となっています」

Eスクラップ
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 まずは、レアメタルを取り出すラインからです。

 世界中から大量に集められたEスクラップと呼ばれる基板などを1000℃以上にもなる高温の炉で溶かし、数種類の金属を取り出していきます。

紀真耶アナウンサー
「あ!出てきましたね!」

はんだの主原料
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 取り出されたのは錫(すず)です。はんだの主原料で、スマートフォンや人工衛星に至るまで、「電子部品を基板に固定し、電気を通す」ための唯一無二の接着剤です。また、銅と混ぜたブロンズは、10円玉や寺院の鐘などに広く使われています。

 主な産地はインドネシアやミャンマー、中国。レアメタルに準ずる戦略物資として注目度が上がっています。

 原子力施設でも使われている
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 また、続いて取り出される鉛は放射線を遮る性質があるため、原子力施設で使われるほか、注目の次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」に使われます。結晶構造が光を電気に変える効率を高めるのだそうです。

 こちらのラインでは、希少なレアメタルを回収します。

近年注目のレアメタル
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JX金属製錬 日立工場
横田拓也さん

「レアメタルであるビスマスも、インゴットとして製品化しております」

紀アナ
「あ、重いですね!いろんな色が混ざっているような感じですね」

横田さん
「ちょっと特徴的な色をすることがございます。表面に酸化膜という薄い膜がございまして、その膜の厚さの加減で色が変わって見えたりします」

美しい結晶構造をもつ
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 美しい結晶構造をもつ「ビスマス」は観賞用で取引されることもある、近年注目のレアメタルです。

横田さん
「ビスマスは他の金属と比べて毒性が低いという特徴がございまして。ファンデーションなどの化粧品として使われることもございます」

紀アナ
「ファンデーションに入っていたりするんですか!キラキラさせるために?」

横田さん
「そうですね」

他の金属と比べて融点が低いのが特徴
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 ビスマスは他の金属と比べて融点が低いのが特徴です。回路が過剰な電流によって熱を持ちすぎた時、ビスマスが溶けて回路を遮断することで火災を防ぐほか、スプリンクラーの放出口のフタなどにも使われています。

 半導体から薬まで幅広く使われるビスマス。産出量は中国が最も多くなっています。だからこそ、都市鉱山での回収が重要なのです。

テルル
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 続いても、中国が圧倒的なシェアを誇るレアメタルです。

横田さん
「テルルという金属を回収しております。CDやDVDといった光ディスク、あと最近では太陽光パネルに使われることで需要が伸びている金属でございます」

 他にも、テルルを含むガラスは光ファイバーの信号を増幅する能力が高く、インターネット網の高速化に貢献しています。

高純度の銅と副産物から…

 ここまでリサイクル原料から回収した4種類の金属を見てきましたが、ここからはピカピカの銅を作る工程で生まれるリサイクル金属です。

銅の原料
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紀アナ
「大きい、これ何ですか?」

JX金属製錬 日立工場
川嶋潤さん

「こちらは大分県の佐賀関製錬所で生産された純度が99.5%の銅の原料」

 純度99.5%であっても、原料として扱われる理由があります。

 銅は効率よく電気を通す必要があるため、純度99.99%以上でないと電線には使えないのです。

 JX金属は、99.9999999%という世界最高峰の超高純度の銅を作る技術をもっています。

銅の電気分解を行う
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紀アナ
「広いですね」

川嶋さん
「こちらが銅の電気分解を行うための電解槽と呼ばれる設備のある工場です」
「先ほどのアノードを電解槽の中にカソードと呼ばれるステンレスの板と交互に並べて電気を流すことによってアノードから銅が溶け出して、高純度の銅がカソードに電着するという原理で高純度化が行われていきます」

 99.99%の銅をつくる工程は果てしないものです。

 実は、鉱山から採掘される鉱石の銅含有量は1%未満と非常に低く、現地で粉砕・濃縮し銅含有率を高めますが、それでも30%ほどです。

 これを大分県の製錬所で溶解、精製し、ようやく99.5%の銅の原料ができます。その後、電気分解によって純度99.99%まで高めます。

純度99.99%の電気銅
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川嶋さん
「こちらが、先ほど電解槽で生産した純度99.99%の電気銅と呼ばれる製品です。大体1枚あたり80キロあります」

紀アナ
「都市鉱山からとれる銅は、どれくらいの割合?」

川嶋さん
「当社だと大体全体の25%ほどが、都市鉱山から回収したリサイクル原料から作った銅になります」

6年前と比べると…
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 2026年3月の銅の平均取引価格は、1トンあたり約210万円です。6年前と比べると、3倍以上も高騰しています。

金や銀が濃縮した副産物
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 半導体の基板や電線などに使われる銅。しかし、今回調査するのは副産物のほうです。

紀アナ
「これは何ですか?土みたいな」

川嶋さん
「スライムと呼ばれる、金や銀が濃縮した副産物です。処理をすることで金や銀などの地金を回収しています」

紀アナ
「余すことなく!」

銀
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 ここから金、銀、プラチナ(白金)を回収します。

川嶋さん
「銀です」

紀アナ
「銀、きれいですね、キラキラだ!黒い粉から、こんなにきれいな銀が出てくるんですね」

 数多く存在する金属の中で、電気と熱の伝導率が最も高いのが銀です。

 しかし、最近は高騰が続き、4年前と比べても5倍近い価格になっています。今は世界情勢の影響で価格の推移が乱高下してはいますが、半導体などに使う素材として需要が高まっています。

川嶋さん
「原料の産地ですと、メキシコがメインです。当社で作られる銀製品は、主に都市鉱山のリサイクル原料から回収された銀がほとんどです」

プラチナ(白金)
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 さらに、希少なプラチナもあります。

川嶋さん
「白金ですね」

紀アナ
「砂のように見えますけど」

川嶋さん
「金属です」

 プラチナの埋蔵量は金の26分の1です。南アフリカが主な産地であるプラチナは、貴金属としても知られるレアメタルです。

燃料電池内部で電気を取り出す際に欠かせない
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 現在、世界が最もプラチナを必要としているのは、燃料としての水素を作る時です。トヨタの「MIRAI」などに搭載される燃料電池の内部で、電気を取り出す際に欠かすことができません。

川嶋さん
「パラジウムになります」

 同じく希少なパラジウムです。2022年は金やプラチナ以上に高価な貴金属として君臨しました。

 車の排気ガスを無毒化する触媒や、より身近なところでは、歯の詰め物などに使われることもあります。

 さらに、大分の製錬所では、純度99.99%の金も副産物としてリサイクルされ、電子部品などで活用されています。

(2026年4月8日放送分より)

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