横山大観や川端龍子らが描いた花の日本画をたどる

横山大観や川端龍子らが描いた花の日本画をたどる
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 四季折々に咲く花。その一瞬の美しさを日本画で堪能できる企画展が、東京・広尾の山種美術館で5月10日まで開催中です。近代日本画の巨匠たちは、花に何を見つめ、どんな思いを託したのでしょうか。

【画像】大きな屏風に描かれた「八ツ橋」

横山大観 不変の富士と桜

春朝
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 まずは、富士山ばかりじゃない、近代日本画の巨匠・横山大観が静かな春の朝とともに山桜を描いた作品です。

山種美術館 館長 山崎妙子さん
「横山大観が描いた春の景色。金泥という金を使った絵の具で霞を描いていて、そこに朝日に輝いている山桜を描いています」

住田紗里アナウンサー
「すごく淡いピンクの所と太陽に照らされてはっきりとしたピンクの所と、1枚の絵の中でも違いがありますね」

山崎さん
「大観は特に山桜という種類を好んで描いたんです」

住田アナ
「大観さんというと、富士山のイメージも強いんですけど」

山崎さん
「大観は富士山をすごく好んで描いて、生涯に2000点ぐらい描いたとも言われているんですけども、それ以外に山桜や太陽を非常に好んでよく描いています」

横山大観
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 大観は、「富士を描くということは、富士にうつる自分の心を描くことだ」と話し、自然はその形ではなく、その気韻、つまり気品の高さを捉えるものと考え、富士山は日本の精神的象徴、そして不変・永遠の象徴として、桜は日本の自然美を象徴する主題として数多く描きました。

タンポポも描かれている
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山崎さん
「ここにタンポポが描かれているんです」

住田アナ
「黄色い花が春の象徴というか」

山崎さん
「かわいいですよね」

川端龍子が描く迫力牡丹

牡丹
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 続いて夏の花、牡丹(ぼたん)です。画面いっぱいに描かれた写実的な牡丹は、花びらの赤・ピンク・白の色彩の華やかさが美しく、この作品を描いたのはこちらも近代日本画の巨匠・川端龍子です。

住田アナ
「この絵、最初に見た時にすごく優しい絵だなと思ったんですけど、見れば見るほど力強さがすごく感じられる絵だなと思いました」

山崎さん
「そうですね。作者の川端龍子という画家は、実は元々油絵をやっていて。大正の初めごろにアメリカのボストン美術館で日本美術を見て、そこから日本画家に転向した画家なんです。油絵は非常にデッサン力が必要で、非常に龍子はデッサン力があって、そしてこの牡丹の花をスケッチして描いたので、すごくそこに迫力が生まれているんだと思います」

八ツ橋
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 そして、龍子といえば、自ら会場芸術と提唱した、幅が7メートルにも及ぶ巨大な作品を数多く描いたことで有名ですが、この「八ツ橋」も大きな屏風(びょうぶ)に描かれているんです。

 伊勢物語で在原業平とされる人物が東国へ旅をしている途中、三河国で「八ツ橋」という場所を訪れたときの話をモチーフにしている作品です。

住田アナ
「これは金の上に花が描かれていて豪華ですね」

終戦の年の春に描かれた作品
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山崎さん
「この屏風はすごく大きいし、立派だと思うんですけども、実は昭和20年の終戦の年の春に描かれて展覧会に出品した作品なんですね。龍子と弟子たちの家で作品を展示して展覧会をしたんです。すごい人だったと思います。何しろ、自宅の庭に爆弾が落ちたり、息子さんが戦死されたり、大変なことが色々あったんですが、頑張って大作を描き続けた画家なんですね」

光琳から龍子、そして抱一へ

 そんな革新的な画家・龍子が描いた「八ツ橋」には、なんと元になる絵が存在するんです。

尾形光琳が描いた作品
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山崎さん
「この作品を見ていただけますか。似ていますよね」

住田アナ
「そっくりですね。少し違いはあるんですけど、構図とか登場してくるものとかが」

山崎さん
「この作品は江戸時代の琳派の絵師・尾形光琳が描いた作品です。龍子は琳派の中でも特に尾形光琳をとても好んで意識して、この作品を描いたんだと思います」

尾形光琳
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 尾形光琳は江戸時代中期に活躍した琳派の代表的な絵師です。斬新で大胆な構図や色彩を取り入れた画風で、数多くの作品が国宝や重要文化財に指定されています。

山崎さん
「光琳のほうは非常に華やかで装飾的で、構図が素晴らしい。それを龍子はすごく意識してこの作品に仕上げているのですが、実は光琳のほうはこの燕子花(かきつばた)の花を、同じようなパターンで描いているんですけれども、龍子のほうは実際に燕子花の花をスケッチして、そして一つひとつの花に即して描いている。ただ、模倣して描いたわけでなくて、自分の新しい世界を作り上げているんだと思うんです」

住田アナ
「確かによく見ると、一輪一輪全然違いますね」

それぞれの燕子花
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山崎さん
「そうなんですよ。光琳の作品には白い燕子花はないのですが、龍子は白い燕子花も描いているんです」

 龍子がリスペクトした光琳の琳の字をとった琳派は、桃山時代末期から活躍した絵師・俵屋宗達や本阿弥光悦が始まりとされ、江戸時代の華やかで装飾的な画風が特徴です。

たらしこみ
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 例えば、金箔(きんぱく)や銀箔(ぎんぱく)を背景に用いた装飾的な画面構成と、絵の具を塗り、乾かないうちに別の一色を垂らし、混じり合って自然に生まれる形や濃淡を生かす「たらしこみ」によるにじみ表現、意匠化されたモチーフを大胆に配置するデザイン性が特徴です。

異色の経歴 酒井抱一

菊小禽図
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 続いて紹介するのは秋です。描いたのは、もしかしたら姫路城城主になっていたかもしれない琳派の絵師・酒井抱一です。

住田アナ
「すごく色が鮮やかで華やかですよね」

ルリビタキ
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山崎さん
「9月9日が重陽の節句と言われていて、菊の節句なんですね。これは、重陽の節句のために描かれている作品。この葉っぱの部分がたらしこみで、ちょっとにじませていたり、ルリビタキという鳥がおなかを見せていてかわいいですね。上のほうに亀田綾瀬という漢学者が描いた漢詩があります。菊のいい香りや美しさ、菊の節句を祝う内容が書かれていて、それがまた画面を引き締める効果を生んでいると思います」

酒井抱一
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 抱一は姫路城城主・酒井忠恭の孫で武家の出身です。兄が家督を継ぎ、その長男も生まれたために藩のことばかりか、政治には深く関わらず、文化人として生きた異色の経歴をもった絵師なんです。

夏秋草図屏風と風神雷神図屏風
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 こちらは抱一が描いた「夏秋草図屏風」です。

 実はこの作品、光琳の描いた「風神雷神図屏風」の裏に描いたものなんです。現在は分けられていますが、抱一が100年前の光琳に連なっていることを意識し、継承するという態度の表れだったといわれています。

住田アナ
「酒井抱一は尾形光琳から100年経っていると思うんですけど、なんでこんなに時代の違いがあるんですか」

山崎さん
「実は琳派というのは先生がいて、それをどんどん受け継いでいくというのではなくて、100年前の人の作品にインスパイアされて、それをまた自分で取り込んで花開いていったのが琳派なんですね」

住田アナ
「それぞれ自主的に学んで進化させていくというか」

山崎さん
「まさにそうですね。そういった理解でいいと思います」

御舟の梅に込められたまなざし

紅梅・白梅
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 そして、こちらが冬の作品です。40歳と若くして亡くなった近代日本画の天才画家・速水御舟の、白梅と紅梅をそれぞれ描いた二幅の掛け軸です。

山崎さん
「紅梅のほうは老木で、幹にコケがむしていたり、ゴツゴツしてる老木らしさが出ていて、白梅のほうは若い梅が勢いよく上に伸びていく、若々しい姿を描いていて。どちらもやはり御舟は非常にスケッチに励んだ人だったので、写実的な部分も取り入れながら二つの梅の構図をよく考えて描かれた作品だと思います」

(2026年4月15日放送分より)

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